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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-02 準備着々

「先日の円盤を追いかけて南へ行ったら、偶然これを見つけたんですよ」
「そうだったの……」
 仁はショウロ皇国首都ロイザートにある宮城(きゅうじょう)で、女皇帝に詳しい説明をしていた。

 ロイザートは先日、『魔導無効化』の結界により被害を受けていたため、仁としても説明の機会を窺っていたのである。
「そうしたらあの遺跡に行き着いたわけね」
「そうなんです。そしてマキナと協力……いえ、というよりマキナが無力化したというわけです」
「もう危険はないの?」
 当然の疑問である。
「はい。それは自分とマキナとが保証します」
「それを聞いて安心したわ」
 仁は、そもそも機能不全であったため、今回のような『誤動作』を起こしたらしい、と説明。
 そしてそれを正すために元々の設備を一部破壊せざるを得なかった、とも。
「ですので、もう何も起きるはずがないんです。逆に、あの『アヴァロン』をまともに運用するためには100人くらいの人員が必要になるわけですが」
 誤動作を起こした管理機構をごっそり破壊してしまったため、と説明。
「うちのメイドゴーレムやマキナのゴーレムであそこまで移動させることはできましたけどね。本来の機能を発揮させるにはまだまだです」
 そういったことを含めて、これから『世界警備隊』を育成していけばいいのでは、と仁は言った。
「そうね。その考えは前向きだわ」
 女皇帝も頷いた。
「自分としては、『世界会議』『世界警備隊』に加えて、『世界学校』も作れたらいいなあ、と思っているんです」
「世界学校、ね。いいわねえ。国籍に関係なく、最高の学問を学ぶことができるわけね」
 女皇帝はすぐに仁の意向を酌み取ってくれた。

 それからも、世間話を交え、仁と女皇帝との会談は15分ほど続いたが、
「今日はありがとう。これ以上執務を止めると宰相に怒られてしまうわ」
 と女皇帝が名残惜しそうに言い出してその日はそれで終わりとなったのである。

*   *   *

「さて、これで後顧の憂いもなくなったかな」
「お疲れ様、ジン兄」
 蓬莱島に戻った仁は、『家』で寛いでいた。
「いつ、ヘールへ向かうの?」
「うーん、向かうのは俺じゃなくて宇宙船だけどな。12月14日過ぎくらいには」
「母さまの、誕生日が終わってから……?」
「そのつもりだ」
 ミーネの誕生日は12月13日。『仁ファミリー』では一番遅い日付である。
「……ありがとう」
「何を言ってるんだ、義母さんの誕生日をないがしろにするはずないだろう」
 ハンナの誕生日を忘れてしまったのは苦い思い出である。
「年が明けたら1月28日はマーサさん、2月8日はハンナの誕生日だ」
 忘れないよう、自分に念を押すように仁は言った。
「もう、時計は作ってあるの?」
「もちろん」
 『仁ファミリー』の全員に渡すべく、懐中時計を用意してある、と仁は言った。
「腕輪とお揃いの色でな」
「ジン兄はマメ」
 仁のそういう気質は、やはり施設時代に培われたものだろう。小さい子供は仲間はずれをとても嫌がるものだから。

 寛いだ後、仁はエルザと礼子を伴って、工作艦の進捗状況を確認すべくまずは老君に尋ねた。
『はい、御主人様(マイロード)。現在70パーセントといったところです』
「おお、すごいな」
『ありがとうございます。この建造速度は、ユニーの工廠ならではです』
 そう、今回は最初からユニーで建造しているのだ。
 部材の重量が軽くなるため、足場の強度も低くて済む。
 無重量状態にまでなってしまうと、今度はかえって部材が安定しないので、ユニーくらいがちょうどいいと老君は言った。
『資材を運ぶのも楽ですし』
 質量は変化しないので慣性はそのままだが、やはり『軽い』というのは作業効率をアップさせる。
 元々十分な膂力を持つ職人(スミス)であるが、ユニーでは、作業効率が3割から5割向上していた。
『最終的な調整は蓬莱島で行いますが』
 1Gで不具合が出てしまってはまずいためである。
『4日後には完成すると思われます』
「そうか、よろしく頼む」
 これでヘールに向かうためのステップをまた一段階進めることができる、と仁は安心した。

「ジン兄、工作艦が完成したら、どうするわけ?」
 もう一度『家』に戻った仁は、エルザが作ってくれた昼食を食べつつ、話をしている。
 今日の昼は天ぷらそばだ。タツミ湾で採れた車海老もどきの天ぷらが載った温かいそば。
 つゆはかつお出汁の利いた醤油仕立てでやや薄味。
 そのつゆを飲みながら、仁は答えた。
「まずは工作艦を送り出す。で、アルスの軌道、ヘールとの中間に簡易基地を建造する予定だ」
「簡易基地って、どんなの?」
「まだ説明していなかったっけか。……基本は直径1キロくらいの円板で、軌道修正のための力場発生器フォースジェネレーターや物資運搬用の大型転移門(ワープゲート)、それに小規模な宿泊施設を持つ……と考えている」
「……補給基地?」
「そうとも言えるし、安全のためのバックアップでもあるんだ。少しは戦闘力もあるし、障壁(バリア)も持たせるしな」
 何があるかわからない、未知の領域である。
 最終的にヘールへ実際に行くのは仁の分身人形(ドッペル)であるが、それでもできる限りの手は打っておきたかった。
ユニーでも、探査用の宇宙船を造っているとも言っていたな」
「それも心強い」
「だな」
 ユニーの頭脳、『ジャック』がどんな宇宙船を造っているのか、仁としてもちょっと気になる。
 覗いてみようかとも思ったが、考え直して完成時のお披露目まで待つことにした仁である。

「さて、お昼も食べ終わったし」
「……何か予定でも?」
「カイナ村へ行ってくる。エルザも行くか?」
「あ、ハンナちゃんが何か実験してみせる、って言ってた、あれ?」
「そうそう」
「ん、行く」
 ということで、仁、エルザ、礼子は転移門(ワープゲート)を通ってカイナ村へ移動した。
 因みに、領主としての公式の訪問の場合は二堂城のもの、私的な訪問は仁の工房地下のもの、と使い分けている。
 もちろん緊急の場合はその限りではない。

*   *   *

「あ、おにーちゃん、いらっしゃい!」
 時差の関係でカイナ村は午前11時少し前。ハンナはお昼ご飯の仕度を始めたところだった。
「ハンナちゃん、手伝う」
「エルザおねーちゃん、ありがとう!」
「わたくしもお手伝いしますね」
「うん、レーコおねーちゃん!」
 出る幕のない仁は、工房で待つことにしたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161123 修正
(誤)ハンナはお昼ご飯の仕度を初めたところだった。
(正)ハンナはお昼ご飯の仕度を始めたところだった。
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