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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

37 ヘール篇

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37-01 『アヴァロン』

 3458年12月8日、仁が奪取した『移動基地』で臨時の『世界会議』が行われた。
 デウス・エクス・マキナが各国首脳陣を招いたのだ。
 仁もそれに協力した、という建前である。

 今回の立役者はマキナ。
 これからのことも考え、マキナ専用の魔導頭脳『導師』を作り、操作を委ねている。
 『導師』は独立した魔導頭脳ではあるが、蓬莱島の頭脳『老君』の配下扱いとなっている。

「凄いものを見つけたものねえ……」
 ショウロ皇国女皇帝ゲルハルト・ヒルデ・フォン・ルビースが賛嘆の声を上げた。
「いや、まったく。これほどのものが南にあったとは……」
 とはセルロア王国国王セザール・ヴァロア・ド・セルロア。
「ううむ、まことにこれは凄い」
 エゲレア王国ハロルド・ルアン・オートクレース国王も感嘆している。
「これはまた、何と言えばいいか……」
 絶句しているのはクライン国国王、アロイス三世。
「皆様方と同じく、絶句せざるを得ません」
 とはエリアス王国王太子、アルフォンスだ。
「このようなものがこの世界に存在するとは」
 フランツ王国国王、ロターロ・ド・ラファイエットも目を見張っていた。
 ようやく木造大型船が造られ始めたこの世界で、全金属製の巨大構造体は想像を遙かに超えていたのである。

「皆様、ようこそおいでくださいました」
 デウス・エクス・マキナの声が響き渡った。
 全員、そちらの方を向く。
「これより、説明を始めさせていただきます」
 仁が連れてきた五色ゴーレムメイドが椅子を用意し、全員それに腰掛けたことを確認してから、マキナは言葉を続けた。
自由魔力素(エーテル)が希薄な南方を探検していまして、このような古代遺物(アーティファクト)を見つけました。損傷が酷かったのですが、ジン殿の協力により、こうして修理をすることができ、ここまで移動してくることができたのです」
 『ここ』とは、西経50度、北緯10度付近。エリアス半島の西の海上である。
 そのあたりは水深が100メートル前後で、アンカーで基地を固定するのに向いていたのだ。

「この人工島は直径2キロメートル。時速10キロで航行することもできます」
 おお、という声が上がった。
「内部はかなり傷んでいましたので、修復が追いついていませんが、逆にこれから開発していけばいいのでは、と考えます」
 必要に応じて設備を整えていけばいい、と説明するマキナ。
「幸い、修理した際に出た廃材は山ほどあり、工学魔法を使えばリサイクルできますから資材不足の心配はないですね。周りが海なので魚系の食糧は心配いりません」
 ふむ、と頷きあう首脳陣。
「この甲板上に工学魔法で建築物を建てるもよし、内部の空いた部屋を使うもよし。この人工島を人類のために役立てたいと思います」
 マキナはもう一度首脳陣を見渡す。皆、異議はないようだ。
「世界会議を行う『議事堂』を設け、『世界警備隊』の本部もここにすればよい、と思う次第であります」
 この発言に異議はまったく出ることはなかった。
 少し間をおいてマキナは続ける。
「今は、この島を固定しやすい、という理由でこの海域に置きましたが、もっとよい場所があると思った方はご意見をお出し下さい」
 が、誰も発言しない。
 それはそうだろう。『固定しやすい』場所と前置きされたら、海中の様子を熟知していない限り意見など出せないであろうから。

「賛同下さってありがとうございます。それでは、簡単にこの人工島内部をご案内致しましょう」
 マキナがそう言うと、各国首脳は立ち上がり、護衛と共にマキナのあとに続いた。
 残ったのは仁と礼子のみ。

「ここまでは順調だな」
「はい、お父さま。『導師』はうまくやっていますね」
「うん。これでこちらの思惑どおりに動いてもらえるとありがたいんだが」
「それは大丈夫でしょう。老君も保証していましたし」
「そうだな」
 各国にデメリットはほとんどない話である。
 加えて、この申し出を受けないとすると、この強大な人工島がデウス・エクス・マキナの手に残ることにもなりかねない。
 それはさすがに各国首脳陣が黙っているはずがない、というのが老君の見立てであった。

「認めてもらえれば、こっちからの贈り物もあるしな」
「そうですね」

*   *   *

 そしておよそ3時間後、人工島の見学を終えた首脳陣が戻って来た。
「お疲れ様です」
 仁は彼等を労い、五色ゴーレムメイドに命じてお茶の準備をさせた。

「ああ、疲れたけれど有意義な時間だったわ」
「うむ。これからが楽しみだ」
「この基地が特定勢力のものにならないというだけでも、ここで世界会議を行う意味はあるな」
 皆、自由に会話しており、内容を聞く限り、掴みは上々である。
 ここで仁は駄目押しの発表をすることにした。

「皆さん、自分からも一つ提案があります」
 その発言に、皆会話を辞め、仁の方を向いた。
「ここに『世界会議』と『世界警備隊』の本部を置くに当たって問題になるのは行き来だと思います」
 皆、うんうんと無言で頷いている。
「そこで、自分としましては、もし『世界会議』の本部をここに置くことになるなら、『コンロン2』と同型の飛行船を各国にお譲りする予定があります。もちろん操縦士付きで」
 この発言に全員がざわめいた。
 『コンロン2』の最高速度は時速200キロ、各国から1日以内にここへ到着できることになる。
「ジ、ジン殿、それはまことかね?」
 ショウロ皇国宰相が急き込んで尋ねた。
「はい。この人工島にも資材はありましたので、手間だけ、ということになりますから」
 これは実は正しくない。幾つかの稀少な素材は蓬莱島からの持ち出しである。
 が、それを言えば出所を詮索されるので、今回は誤魔化すことにした。
 それでも、長周期惑星の破片を手に入れた仁は、使い切れないほどの資材を持っていることになる。
 こういう時に使わなくてどうするんだ、という意図もあった。

 クライン王国、エゲレア王国、エリアス王国、フランツ王国、セルロア王国、そしてショウロ皇国用として6機の『飛行船』は『人工島』の端に係留してあった。
 最近すっかり操縦士として熟達したエドガーと同型の自動人形(オートマタ)が操縦士、職人(スミス)と同型のゴーレムが整備士として贈られる。
 もちろんデチューンしてあるのでオリジナルよりもやや性能は劣る。
 それでも一般の自動人形(オートマタ)・ゴーレムなど問題にならない性能を持つが。

*   *   *

「それでは仮に、となりますが、ここに『世界会議』及び『世界警備隊』本部、『アヴァロン』の設立を宣言させていただきます!」
 デウス・エクス・マキナが各国首脳陣の前で宣言した。
 因みに『アヴァロン』とは、アーサー王伝説に登場する島である。

 これで、人類が一つにまとまるためへ、大きく前進した、と仁は思った。
「後顧の憂いなく、ヘールに目を向けられるな」
 空はいつしか暮れかかり、一番星が輝いていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161122 修正
(誤)ふむ、と頷き会う首脳陣。
(正)ふむ、と頷きあう首脳陣。

(誤)『移動基地』の見学を追えた首脳陣が戻って来た。
(正)『移動基地』の見学を終えた首脳陣が戻って来た。

(旧) 1行目の地の文以外の『移動基地』を
(新) 人工島に置き換えました。

(旧)ここに『世界会議』及び『世界警備隊』本部、『アヴァロン』の設定を宣言させていただきます!
(新)ここに『世界会議』及び『世界警備隊』本部、『アヴァロン』の設立を宣言させていただきます!
+注意+
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