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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-24 閑話69 後処理いろいろ

 700672号と話したあと、仁は『ディスアスター』の改造を急ピッチで行っていた。
 壊れた装甲の修理は簡単だったが、問題は内部だ。
 今のアルスには相応しくないような魔導機器が多かった。その大半は『異形のゴーレム』である。
「やっぱりこのデザインは子供の絵みたいだなあ……」
 職人(スミス)たちの作業を監督しながら、仁はそんなことを思っていた。

 結局、内部は大半を入れ替え、あるいは新規に作ることになった。
 居住区、会議室、医務室、食堂は必要。
 司令室というものがなかったので新たに設定し、基地の隅々までを把握できるように回線を配置。
 船を受け入れられるドック、熱気球を着陸させられる飛行甲板。
 食糧庫、資材庫、格納庫、資料庫などの倉庫。

「ああ、まったく面倒臭いな」
 新規に作る方がよっぽど楽だ、と仁はぼやいた。
 とはいえ、老君がサポートしているので、仁の負担は半分以下である。
 愚痴をこぼしながらも、仁は作業を進めて行った。

*   *   *

「あとはデウス・エクス・マキナの出番だな」
 基地の修理が九割方終了した日、仁は老君と話し合っていた。
『はい、御主人様(マイロード)。あとは設置場所ですが、エリアス王国の西の海あたりでしょうか』
「そうだな……どこへ置くにしても、近い国遠い国ができてしまうのは仕方ないからな」
『そうですね』
 このことは近々各国に知らせることになる。
 仁としては、ある程度アルスがまとまり次第、ヘールへの遠征を計画していた。

「中継基地の方はどう考えている?」
『はい、御主人様(マイロード)。アルスとヘールの軌道上、その中間点に浮遊基地を設置したらと考えております』
「なるほど。それはいいな」
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を以てしても、恒星の向こう側を見ることはできない。
 発生源そのものを自由魔力素(エーテル)波といえども貫くことはできないようだ。
 また、『仮想中継器』を設定しても、さすがに距離が大きいことと、その中継器の位置が不安定なことが原因である、とまではわかってはいる。
『そういう意味でも実体のある中継基地は意味があります』
「だな」
 宇宙空間で座標を固定できれば、『仮想中継器』も安定するはずだ。
 これが完成すれば、アルスに居ながらにしてヘールの様子を観察できるかもしれない。

『準備を整え、カストルとポルックスを送り出そうかと考えています』
「この際だから工作艦を一隻用意したらどうだ? 10メートル級じゃ資材も運べないだろうし」
『工作艦、ですか』
「ああ。直径は100メートルくらいでな」
『許可がいただければすぐにでも準備を始めます。資材は先日『モデヌ』の破片から確保したものがありますし』
「よし、取りかかってくれ」
『わかりました』
 こうして、新たな宇宙船の建造が開始された。

*   *   *

「あ、あの……」
「マリッカ様、貴女は紛れもなく『主人たち』と同じ魔力をお持ちになってらっしゃいます」
 仁は約束どおりマリッカを連れて700672号の下を訪れた。
 そして思ったとおり、700672号もマリッカを『主人たち』の後継として認めたのである。
「長き年月を経て、再びお仕えできるお方に巡り会えるとは思いませんでした」
「は、はい」
 当のマリッカは何とも居心地が悪そうな雰囲気である。
「どうぞ、ご指示を」
 いきなりそう言われても、マリッカには何も思い付けない。
「あ、そうだ」
「はい?」
「……この世界が、いつまでも平穏でありますように。そしてジン様と仲良く協力してください」
「承りました」
 マリッカの願いを聞いた700672号は、これからもこの世界の安定に協力してくれるだろう。

*   *   *

「……我が家っていいですね」
「ああ、そうだな」
 ブルーランドへ戻って来たクズマ伯爵とビーナは、居間で寛いでいた。
「ジンってあんな凄いことやってるんですね」
「そうだな……」
「大変ですね」
「まったくだ。誰に頼まれたわけでもなく、ただそれができるから、というだけの理由でこの世界を守護しようとしている。精神的な負担は相当なものだろう」
「私たちがバックアップしてあげないと」
「そうだな」

*   *   *

「ああ、海だ」
 マルシアは工房正面の海を見つめてしみじみ呟いた。
「あの海の向こうで、あんなことがあったんだな……」
「まったくだ」
 父ロドリゴも、疲れたような声で同意した。
「あたしたちが知らないだけで、世界は驚きに満ちているんだね、父さん」
「うむ。我々は我々に今できることをしっかりやっていくことだ」
「うん」

*   *   *

「ジンさんは、誰も知らないところで、誰にも認められず、あんな敵と戦っていたんですね……」
 トカ村に戻ったリシアは、執務室で書類とにらめっこをしつつ、頭の片隅で先日の宇宙での出来事を反芻していた。
「リシア様、次の書類です」
 秘書官になった元少年兵、フレッドが書類の束を持って来た。
「ありがとう。そこへ置いてちょうだい。処理が済んだものは綴じておいてね」
「わかりました」
 ペンを走らせる手をふと止め、窓の外を見やるリシア。
「私も、頑張らなくっちゃ」
 そしてやる気を新たにするのであった。

*   *   *

「誕生日、おめでとうございます」
 12月5日はロドリゴの誕生日。
 『仁ファミリー』は、忙しい中集まり、祝っていた。
「いやあ、照れるな……この歳で祝ってもらえるとはね」
「誰かが前に言ってた気がするけど、誕生日って、歳を取ったことを祝うんじゃなくて、その人が生まれた記念日だから祝うんだよ」
 そんな仁の言葉に、ロドリゴは照れながらも皆に頭を下げた。
「……ありがとう」 
 因みに、ロドリゴにも仁は『懐中時計』を渡している。律儀な仁であった。

*   *   *

 カイナ村の暮らしは何も変わらない。
「ああ、やっぱり地面の上はいいねえ」
 『アドリアナ』から降りたマーサは事あるごとにそんな呟きを漏らしていた。
「もうすぐ村にも雪が降るね」
 白くなった遠くの山々を眺めながらハンナが言う。
「だねえ。でもジンのおかげで冬も過ごしやすくなったよ」
「うん。温泉もあるし、ゴーレム馬もいるしね!」
 吹く風は冷たいが、カイナ村は今日も暖かさに溢れていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161121 修正
(誤)船を受けいられれるドック、
(正)船を受け入れられるドック、
 orz
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