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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-21 まとめの話

 礼子の無事を信じている仁であったが、突然の爆発には意表を突かれた。
 まさか礼子も……と思いかけた時。
『「お父さま、ただいま帰投中です。全員無事です」』
 『アドリアナ』の艦橋に礼子の声が響いた。
 ほう、という溜め息が全員の口から漏れる。
『「危ないところでした。中央頭脳はわたくしたちと『アドリアナ』を道連れに自爆するつもりだったようです」』
「よく脱出できたな」
『「はい。自爆の兆候を察してから爆発まで5秒もありましたから、脱出の時間は十分でした」』
 バトルスーツの機能の1つ。非常用の転送装置を使い、バックアップの『ラプター1』の下に転移したのである。

「そうか。蓬莱島で会おう」
『「はい」』
 その後、老君が迎えの小型宇宙船を派遣し、礼子たちは全員無事蓬莱島へと向かったのである。

*   *   *

 それから30分後、『仁ファミリー』全員は蓬莱島に帰島。礼子たちもそれと時を同じくして蓬莱島に戻っていた。
 ……と言いたいところであったが、『ペガサス1』の帰島が少し遅れた。
「いったいどうしたんだ?」
 遅れて戻って来たスカイ1に訪ねると、
「はい、ご主人様。実は、お嬢様を見送った後、小さな飛行物体に気が付いたのです」
 との答えが返ってきた。
「飛行物体?」
「はい。直径50センチほどの球形でした。あの宇宙船から飛び出して、ヘール方面へ飛び去ろうとしたのです」
 それを聞いて、仁に思い当たることがあった。
「うーん、情報をヘールに届けるための連絡用宇宙船か?」
 いきなり敵頭脳が『アドリアナ』に向かってきたことが解せなかったのだが、その情報を持った宇宙船を逃がすための陽動だったとしたら頷ける点もある。
「はい。老君もそう推測し、私が『ペガサス1』で追跡しました。その結果、無傷で捕らえるには無理があると判断、撃ち落としました」
 急なことのため報告が遅れました、とスカイ1は謝った。
「そうか。気にするな。むしろよくやってくれた」
「光栄です」

 そして次に仁は礼子を称賛する。
「今回は苦労掛けたな、礼子」
「いえ、お父さまのお役に立てて嬉しかったです」
 その次はランド隊。
「ランドたち、ご苦労だった」
「いえ、新装備のおかげで楽でした」

「それじゃあ、報告を聞こう」
 『魔法障壁(マジックバリア)』内だったので、老君と通信もできず、敵球体の中央頭脳と話した内容は礼子たちしか知らないのである。
「はい、まずは……」
 ゆっくりと礼子は語り始めた。
 同時に『魔素通信機(マナカム)』を使い、老君に情報を転送している。老君はそれを情報記録として残しておき、独自に解析するのだ。
 礼子の説明は、これまでにわかっていた内容はそれを裏付け、未知だった項目を明らかにするものだった。

「なるほどな。これまでわかったことをまとめると……」

始祖(オリジン)は個人主義で、多くの派閥に分かれていた。
・大半はアルスに移住したが、母星ヘールに残った派閥もある。
・1108年前から、この星にやってきて資源を横流しし始めた。
・他の星にも資源確保の手は伸ばしているが思わしくなく、ここアルスが最も効率が良いらしい。
・黒幕は、『主人』と単数形なことから、個人もしくは一家族単位くらいではないかと推測できる。
・本来争いごとを好まない民族らしいが、アルスで観察を続けるうちに、頭脳は初歩的な戦闘を覚えた。
・争いごとを好まないため、戦略・戦術が幼稚。
・『自由魔力素(エーテル)』を封鎖する技術を持っている。
・惑星の環境を改造する技術を有している。

「こんなものかな」
 仁はメンバーの顔を見回しながら言う。
 そこにグースから発言が。
「ジン、君が『オノゴロ島』を調べてわかったことも教えてくれよ」
「ああ、そうだな。彼等は『合成素材』を使っているな」
「生物素材は使わないのかい?」
 この話題に食い付いたのはサキ。
「そうなんだよ。サキなら興味持つと思ったが、『魔導合成樹脂』を作り出していたな」
 仁は開発中の『マギ・プラスチック』について簡単に説明した。
「へえ、面白そうだね。よし、開発は任せてよ」
「そういうだろうと思った。頼むよ、サキ」
「うん、任された」

 ちょっと寄り道したものの、この件はサキに任すことに決まる。
「それから、今のところ『自由魔力素(エーテル)転送』については不明だな。『オノゴロ島』も明かす気はないらしい」
「ふうん……でも現状は特に必要ではなくなったな」
 ラインハルトが言う。確かに、『オノゴロ島』や『移動基地』を正常化した今、緊急に解決すべき問題ではなくなったわけだ。
「うーん、でも、もしかしたらなんとかなるかも、おにーちゃん」
「え!?」
「今、何て!?」
 唐突なハンナの物言いに、皆一斉にハンナを見つめた。
「ええとね、『自由魔力素(エーテル)転送』でしょ?」
「そ、そうだが」
「あのね、『転移門(ワープゲート)』での移動って、基本的に転送する物体の『重心』を引っ張って、付いてきたものが転送されるみたいなの」
「……」
 ハンナの説明に納得してしまう仁。
「確かにそうだ……」
「ハンナちゃん、すごい」
 エルザも感心して声を上げた。
「だから『自由魔力素(エーテル)転送』の場合も、きっと、自由魔力素(エーテル)が粒子だとしたら『1個』は転移していると思うよ?」
「……」
 その場にいた他の者は声も出せず、ハンナの説明に聞き入っていた。
「別の例で言うと、水を転送したいなら、転移門(ワープゲート)ごと水中に沈めてしまえば、受け入れ側の転移門(ワープゲート)の中には水がいつも溜まっているんじゃないかと思うの」
「それは試したことがなかったな……」
 パイプを通せるかは試したことがあったが、仁はハンナの発想に驚いた。
「もう一つ。何を認識して転移させているか、っていうことに着目したらと思うの」
「わかった、ありがとう」
 仁は、ハンナの言葉により、新たな方法を思いついていた。
「おにーちゃんの役に立てたなら嬉しいな」
 ハンナは満面の笑顔で頷いたのである。

*   *   *

「ええと、あと細かい疑問点があったら老君に尋ねてくれ」
『皆様、私が情報を管理しておりますのでいつでもどうぞ』

「で、それ以上に気になるのは、『黒幕』のことなんだ」
 仁が改めて口を開いた。
「黒幕か……」
 ラインハルトも腕を組み、難しい顔になる。
「これまでのやり口から色々仮説を立ててみても、幼稚さが見え隠れしている。子供っぽいっんだよな」
 施設時代、子供の相手をしていた仁だからこそわかることもあるが、今回の事件では、誰が見ても子供っぽいと言わざるを得ないだろう。
「あるいは、肉体的には大人でも精神的には子供、っていう可能性もあるんだけどな」
「それはいえるわね」
 意外なことにヴィヴィアンが同意を口にした。
「精神的な年齢は環境に左右されるようだからね」
 娘を持つ親として、トアも同意した。
「いずれにしても、いずれヘールに出向かないとケリは付かないと思うんだ」
「それは確かにそうね」
「うむ、それは必要だろうな」
「心配だけどね」
 ヘールへの遠征という点においては、皆渋々ながらも必要性を認めたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161118 修正
(誤)実は、お嬢様を見送って後、小さな飛行物体に気が付いたのです」
(正)実は、お嬢様を見送った後、小さな飛行物体に気が付いたのです」

(誤)何を認識して転移させているか、っていうことの着目したらと思うの」
(正)何を認識して転移させているか、っていうことに着目したらと思うの」

(誤)バップアップの『ラプター1』の下に転移したのである。
(正)バックアップの『ラプター1』の下に転移したのである。
 orz
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