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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-18 脱出

魔力炉(マナドライバー)を全部切り離したわけだが、『ディスアスター』の様子はどうだ?」
『はい、御主人様(マイロード)。ほとんどの施設は停止している様ですが、主要な施設はまだ動いています。おそらく独立した魔力炉(マナドライバー)があるのでしょう』
「なるほどな」
 老君にも似たような保安措置を施してあるので、仁は納得したように頷いた。
「じゃあ、次は動いている施設を潰していこう」
 万が一にも、『中央頭脳』がおかしな真似をすることができないように。

『では、手始めに魔法攻撃を放った施設から』
 老君はそう判断すると、これまでと同じように礼子とランド隊を送り込んだ。

 礼子たちが転移したのは『魔法転写砲(マギトランスカノン)』もどきの据え付けられた場所。
「これが主砲なんでしょうね」
 巨大な砲を見上げ、礼子が呟いた。
 そっと手を伸ばすと、結界に阻まれる。
「やはり物理的な結界がありますか」
「お嬢様、来ました」
 ランド22の声に礼子が振り向くと、『魔法転写砲(マギトランスカノン)』を守る異形のゴーレムが5体、襲いかかってきたのである。
「任せましたよ」
 礼子はまず物理結界を解除することに専念する。
「ここの結界も独立した発生機を持っているようですね」
 魔力炉(マナドライバー)を全部切り離した今、動いている施設は全て独立したエネルギー供給をされていると判断してよい。
「こういう場合は結界の中にあると決まっています」
 結界の外に発生機があったら、そちらを壊されて終わりとなってしまうので論理的に明らかな帰結である。
「ならば、魔法で見つけ出し、魔法で破壊するだけ」
 礼子の新装備の1つ、ヘルメット内には超小型の『魔力素走査機(エーテルスキャナー)』が内蔵されており、スキャン結果は直接礼子が読み取ることができる。
 超小型なので効果範囲は半径20メートルと狭いが、この場合は十分だ。
「床かと思いましたが天井でしたか」
 自由魔力素(エーテル)の流れを辿っていくことですぐにわかった。
「『光束(レーザー)』」
 バトルスーツに装備されている拳銃型の『魔法転写銃(マギトランスガン)』を使い、小手調べ。
 光学系の兵器を防ぐ力はなかったとみえ、天井に穴が空いた。
 礼子がそのまま光束(レーザー)を放ち続けていると、目の前にあった結界が揺らぎ、消えた。
「これで『魔法転写砲(マギトランスカノン)』を使えなくできますね」
 礼子はまず外被を無造作にめくりあげた。
「お父さまがお作りになった『魔法転写砲(マギトランスカノン)』と似ていますが……こっちの方が効率悪そうですね」
 やはりというべきか、兵器開発に関しての熱意が感じられない造りであった。
 礼子は内部の魔導回路(マギサーキット)を一部切断することで無力化を終了する。

 そしてランド隊も、警備用と思われる異形のゴーレムを全て無力化していた。

「終わりましたね。次へ行きましょう」

 疲れを知らない礼子とランド隊は、老君の主導で次々と施設を無力化していった。

*   *   *

[むむむ……どうにもならないのか!]
 中央頭脳は各施設を把握しようとするが、魔力素(マナ)の供給が断たれており、反応が返ってこない。
[崇高な使命の行使を蛮人などに邪魔されるとは……!]
 だが、いくら歯噛みしてもどうしようもない。
 残っていた数少ない施設も、次々に切り離されていく。
[無念だ……]
 中央頭脳はここに及べば、認めざるを得ないと諦めた。
[蛮人とはいえ、侮れないものだな]
 そして、これからどうすべきかを思考する。
[このままでは破壊され、使命を全うできなくなる]
 それを避けるにはどうすればいいかを考える。
[戦略的撤退]
 どう考えても、それ以外に道はなかった。
 そして中央頭脳は、それに必要な処置を実行する。

*   *   *

『そこで終わりです。『ディスアスター』は完全に無力化しました』
 老君は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』により、『ディスアスター』内の確認を行った後に告げた。
『残るは中央頭脳ですね。『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見ることができない区画が存在していますので、おそらくそこでしょう』
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見ることのできない区画は、ドーナツ状をした『ディスアスター』が一部出っ張った箇所そのもの。
『これで中央頭脳は手も足も出ない状態のはずです。制圧しま……?』
 老君の言葉が珍しく途中で途切れた。

「あ、あれは!?」
 『ディスアスター』の突起部分が、ゆっくりと外れていく。
「まさか……まだ飛べるのか?」
 その部分が、かつてアルスまでやって来た宇宙船であったことは『管理頭脳』から聞いていた。
 だが、まだ飛べるとは老君も予想していなかったのである。

『面目次第もございません、御主人様(マイロード)。完全に予測を外してしまいました』
「いや、仕方ないさ。『管理頭脳』は『もう飛べないはず』と言っていたんだろう?」
『はい。ですがまだ飛べる可能性を考慮すべきでした。おそらく、魔力素(マナ)の関係、もしくは『生物』を乗せては飛べない、という意味ではなかったかと今更ながら愚考する次第です』
「なるほどな」
 そう言っているうちに、50メートルほどの球体は『ディスアスター』を離れ、浮かび上がった。そしてゆっくりと上昇していく。

「どこへ行くつもりだろう?」
 ラインハルトが首を傾げた。
「ヘールへ逃げ帰るのかもな。どうやら、こっちの出番のようだ。『大聖』、警戒しろ」
『はい、御主人様(マイロード)。警戒態勢を取ります』
 『大聖』は仁の指示に従い、『アドリアナ』を警戒態勢においた。

 球体は次第に速度を増し、『アドリアナ』から見て遙か下方を斜めに横切っていった。
『向かっているのは太陽セラン方面、おそらくヘールですね』
「さて、どうするか」
 そのままヘールに帰して、いろいろな情報を持ち帰られるのはまずい。
 かといって、本当に向かっているのがヘールなのか、それともそばにある別の場所なのかを確認したくもある。
「どうしたらいいだろう?」
 決めかねて、仁は『ファミリー』の面々に相談した。
 その間、『アドリアナ』は球体を見失わないよう、ゆっくりと後を付けていくことになる。

「僕はあれを捕まえて情報を聞き出すのがいいと思うがね」
「そうだな、ラインハルトに賛成だ」
 これまでの戦闘で、圧倒できると知ったラインハルトとクズマ伯爵が言った。
「マーカーだけくっつけて逃がすというのは?」
 やや消極的な意見はエルザ。
「難しい問題だね」
 サキも悩んでいる。
「どうするのがいいのか、ちょっとわかりません……」
 リシアは困り顔だ。

 が、そんな彼等の決断を促す様な出来事が起きる。
御主人様(マイロード)、球体がこちらへ向かってきます』
 『大聖』の声が『アドリアナ』艦橋に響いた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161115 修正
(誤)「どうしたらいだろう?」
(正)「どうしたらいいだろう?」
+注意+
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