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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-13 『災害』

「おお、穴の小さなドーナツ……といった形だな」
 蓬莱島では『覗き見望遠鏡(ピーパー)』によって、敵『移動基地』の様子を見ていた。
 そこへ、戦艦『穂高』の転移門(ワープゲート)を使い、『しのび部隊』とランド11から15が戻ってくる。
「みんな、ご苦労だった。欠員はないな」
「はい、全員無事です」
 ランド11が代表して返事を行った。
 因みに『ヘレンテ』は『穂高』から『オノゴロ島』へと転移魔法陣で戻っていた。

 そして敵『移動基地』は氷を振るい落とし、完全にその姿を現していた。
「ドーナツにくっついている球体は何だろう?」
 直径50メートルほどの球体が1つ、ドーナツの端にくっついている。
「あれが前になるという印みたいなものだろうか?」
『いえ、違います』
 老君がその言葉を否定した。
「老君? 違うというのは?」
『はい、御主人様(マイロード)。たった今、礼子さんから情報が送られてきました。あれはその昔『侵略者』がアルスへやって来た時の宇宙船そのもののようです』
「何だって? ……なるほど、そういうことか。で、礼子は?」
『はい。礼子さんは『穂高』の艦橋に待機しています』
「そうか。礼子に繋いでくれ」
『はい』
 仁は、直接礼子を労おうと思ったのである。
 『魔素映像通信機(マナ・テレカム)』に礼子の姿が映った。
『「お父さま、ただいま帰りました」』
「ああ礼子、お帰り。無事で帰ってきてくれたな」
『「はい、おかげさまで」』
「ご苦労だった。貴重な情報も得てくれたようだな。ありがとう」
 短いながらも、仁は礼子を労った。
『「はい。わたくしは、時間の許す限り、『オノゴロ島』側の『移動基地』で『管理頭脳』から情報を聞き出していました。それは先程老君にも転送しました」』
「うん、助かるよ。今は展開が読めそうもない。もう少しそっちで待機していてくれ」
『「はい、わかりました」』

 そして仁は海中にいるマーメイド部隊に連絡を取った。
「元々の『移動基地』の様子はどうだ?」
『はい、ご主人様。今は安定しているようです。危険を避けるためか、海中に留まっています』
 マーメイド1がすぐに返答する。
「わかった。敵『移動基地』が何をしてくるかわからない。今は十分距離を取っておけ」
『わかりました』

 そして仁は『覗き見望遠鏡(ピーパー)』からの映像に注意を戻した。
御主人様(マイロード)、あれでもまだ未完成らしいです』
 老君が礼子経由で仕入れた情報を教えてくれる。
『最終的には宇宙へ出られるものとする予定だったようですが、『オノゴロ島』同様、『管理頭脳』がかなり抵抗したようで、建造の効率が非常に悪く、完成には至らなかったようですね』
「不幸中の幸いだな」
 それでも、敵『移動基地』は直径2キロ。巨大である。
御主人様(マイロード)、敵『移動基地』は『ディスアスター』と言うそうです』
「嫌な名前だな……」
 仁はそれに近い英単語を連想した。
 “disaster”なら『災害』の意味である。仁はそのネーミングに悪意を感じざるを得ない。

 『ディスアスター』は北上を開始したようだ。とはいえ、南極から見れば、どちらへ進んでも北上である。
『進路はおおよそ『オノゴロ島』方向ですね』
「つまり、人類の住む大陸方面と言うことだな」
 そこへ緊急の知らせが入る。
御主人様(マイロード)、何かが飛んできます』
「え?」
 スカイ隊にそんな指示は出してないが……と思った仁であったが、画面を見て納得した。
「円盤か」
 それは『オノゴロ島』の円盤であった。その数2機。小手調べ、もしくは偵察に派遣されたらしい。
「マリッカは知っているのかな?」
『いえ、ご存じないでしょう。今はカイナ村にいますし』
 マリッカは、今回の作戦に直接の関与はしていない。ただ、基本的に仁の指揮下に入ることと、多少は独自の判断で動くように、という指示を出していただけだ。
 後者は、何かあった場合に一々指示を仰いでいたら間に合わなくなる可能性があったために出した指示であったが、『統括頭脳』は本当に独自に判断したらしい。
「『ヘレンテ』からも情報を得たんだろうな」
 『オノゴロ島』の基本スタンスはこの星の守護である。『ディスアスター』の存在は許せないに違いない。
 だが。
「『オノゴロ島』の戦闘力じゃ無理だよなあ」
『ですが、『ディスアスター』がどんな武器を持っているか、その片鱗がわかるかもしれません』
「それもそうか……だけどなあ」
 仁は知っている。円盤機の性能を。
「あれじゃあ瞬殺されて終わるぞ」
 『オノゴロ島』を作った『始祖(オリジン)』の魔法技術は確かに仁を凌いでいたかもしれない。
 が、その方向性は戦闘とは無縁であった。
 見たところ、『ディスアスター』はそんな『始祖(オリジン)』の思想を受け継いではいない。
「やはり『始祖(オリジン)』以外が作ったのかもなあ……」
 その時。
 『ディスアスター』から竜巻が発せられた。
「あれは『旋風(サイクロン)』!?」
 風属性魔法初級の上で、つむじ風を使い、対象(集団)を集合させたり散開させたりする。ゴミ集めにも使われる魔法であるが、威力と規模が桁違いであった。
御主人様(マイロード)、しかも微粒子の粉末を同時に発射しているようです』
「何!?」
 画面内では、竜巻に囚われた円盤機が見る見るうちに削られていく様子が映っていた。
「アダマンタイトの微粒子かもな」

 サンドブラストという工法がある。
 硬い物質の表面に砂などの研磨材を圧縮空気と共に吹き付ける加工法で、錆取りや石の加工(文字入れなど)に使われている。
 それと同じ考え方であろう。
 アダマンタイトの微粒子がヤスリと同じ役割を果たし、円盤機の外装を瞬く間に削り取っていくのが見えた。
 そして竜巻が消えた後にはボロボロの円盤機が残され、墜落したのである。
「ん? もう1機は?」
 墜落したのは1機のみであった。
御主人様(マイロード)、反対側から『ディスアスター』に迫っています』
 もう1機の円盤機は竜巻を逃れ、低空から『ディスアスター』を目指していた。
「低空なら竜巻は使いにくいな」
 海水を一緒に巻き上げてしまえば、風の威力も弱まり、研磨効果は落ちるだろうと思われた。
「お、何か発射した」
御主人様(マイロード)。あれは金属製の槍ですね』
 地球で言うなら徹甲弾に相当するのだろうか、と仁は思った。
 そして槍は『ディスアスター』に命中。が、突き刺さることはなく、跳ね返って海中に落下した。
 が、老君は『ディスアスター』の表面に傷が付いたのを見逃さなかった。
御主人様(マイロード)、『ディスアスター』の材質もニッケルクロムモリブデン鋼か、それと同等の材質らしいですね』
 少なくともアダマンタイトのような強固な金属ではなさそうだ、という。
 それは朗報であったが、『ディスアスター』は別の兵器で円盤機を攻撃したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

20161110 修正
(旧) “disaster”なら『災害』の意味である。
(新) 仁はそれに近い英単語を連想した。
    “disaster”なら『災害』の意味である。
 あくまでも『ディスアスター』は礼子からの伝聞で、音だけしかわかっておりません。
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