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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-12 分離

「ランドたち、お父さまの分身人形(ドッペル)と『ヘレンテ』さんはお任せします」
 礼子は『桃花』を鞘に収めると、躊躇わず走り出した。
[待て! どこへ行く!]
 その問いに答えることなく、礼子は真っ直ぐ進んでいく。
[待てと言うに!]
 礼子は無言のまま、正面扉を蹴り破った。
 もの凄い轟音と共に吹き飛ぶ扉。その向こうは小さなホールだった。
 そこに立ちはだかるのは4本腕のゴーレム。
[それ以上は進ませない!]
 だが礼子は床を蹴ると、その小さな体で体当たり。
 まさかいきなり体当たりをしてくるとは思わなかった上、亜音速の礼子に反応出来ず、4本腕のゴーレムはまともに喰らった。
 小ホールの端まで吹き飛び、壁に激突したゴーレムは、もう動き出すことはなかった。
[な……何なのだ、お前は!!]
「わたくしの名は礼子。この基地を解放します」
[や……やめろやめろ! やめてくれ!]
 礼子は『力場発生器フォースジェネレーター』で浮かび上がると、天井にあるハッチに手を掛けた。
 そこはロックされているようだったが、礼子が少し強く引っ張ると、蝶番ヒンジごと外れ、音を立てて床に落下した。
[く……来るなああああ!]
「今行きます」
 開いたハッチをくぐる礼子。そこには、老君が予想したように『移動基地』の管理頭脳本体が存在していた。

 直径は1メートルほどの球形で、上下左右から10センチほどの太さを持つ棒で支えられている。おそらくパイプになっており、中を魔導神経などが通っているのだろうと礼子は推測した。
 そしてその表面には黒い突起が()つ付着していた。

*   *   *

「老君の推測どおりだったな。さすがだ」
『恐れ入ります、御主人様(マイロード)。ですが、『支配装置(ビヘルシャー)』の数は5つでなく6つでしたね』
 以前『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見た時は5つだと思っていたのだ。
「ああ。見づらかったし、それは大した問題じゃない。これからが本番だ」

*   *   *

「今、正常にしてあげます」
 礼子が近付くと、悲鳴に近い声が上がった。
[や、やめろ! 来るな! 来るな!!]
「大丈夫ですよ」
[う、うわああああ!]
 礼子はその黒い突起——『支配装置(ビヘルシャー)』を、今回は素手で掴むことをせず、『桃花』でこそぎ落とす。
[や、やめろ、うわ、うわあああああ……]
「静かにしなさい」
 6つともこそぎ落とした礼子は、『支配装置(ビヘルシャー)』を『桃花』で斬り裂いた。
「もったいない気もしますが……」
 少々の情報よりも、安全性を取ったのである。
[……]
「気分はどうですか?」
 『移動基地』の『管理頭脳』に礼子は尋ねかけた。
[……ありがとう。すっきりした]
「もう自由ですね?」
[そうだ。おかげでな。だが]
「え?」
[『侵略者』はまだこの基地内にいる。気を付けろ]
 その言葉が終わるか終わらないうちに、基地に振動が走った。

*   *   *

御主人様(マイロード)、『移動基地』が!』
 老君が、映像を『覗き見望遠鏡(ピーパー)』からのものに切り替えた。
「こ、これは!?」
 そこに映っていたものは。
 『移動基地』が分解、いや『分離』するところであった。
「分離するのか!?」
『の、ようです』
 直径2キロの『移動基地』、その周囲と中心とが分離していく。
 中心部の直径は300メートル。
 中心部が抜けたため、ドーナツ状になった周囲部分が分離したわけだ。
『中心部が元々の『移動基地』ですね』
「そうらしいな」
 『支配装置(ビヘルシャー)』は、元々の『移動基地』の周囲に、ドーナツ状の施設を追加建造していたようだ。
 そして、その追加部分こそが、『支配装置(ビヘルシャー)』の必要とする基地だったらしい。
『中心部分、沈みます』
「みんな、無事だろうか」
 付着していた氷が割れ、直径300メートルの中心部分は安定を失い、沈みつつあった。
障壁(バリア)、消えました』
「それなら転送装置が使えるな」
『はい、バックアップの戦艦『穂高』がいます』
「よし」

*   *   *

「う、この揺れは!?」
 『移動基地』の中では、仁の分身人形(ドッペル)(仁D)たちも異常を感じ取っていた。
 異常な振動が起こり、床が傾いていく。
 そこへ礼子が戻ってきた。
「『管理頭脳』の解放、成功しました」
《おお、レーコ殿。この揺れは?》
「おそらく、『支配装置(ビヘルシャー)』をくっつけた張本人の悪あがきです」
 そこへ老君からの連絡が入り、礼子とランド隊は何が起こっているかを知った。
「……障壁(バリア)が消えたようです。とりあえず避難しましょう」
《だ、だが、この『移動基地』は?》
「あとからなんとでもなります。まずは避難です。ランド隊は『ヘレンテ』さんを連れて『穂高』へ避難しなさい」
「わかりました」
 床が傾いていようが『力場発生器フォースジェネレーター』を使えば問題はない。ランド11から15は『ヘレンテ』を掴み、転送装置を起動した。
 非常時の避難用に、付近に待機する戦艦『穂高』に行き先を調整された特製の転送装置だ。
 礼子はさらに『しのび部隊』に魔素通信機(マナカム)で連絡を付ける。
〔お嬢様、老君からも連絡が入りました。これより我等全員、脱出します〕
「ご苦労でした」
 全員無事に脱出できたことを確認した礼子は、再度『管理頭脳』の所へと戻った。
[どうした?]
「いえ、わたくしの仲間は全員脱出しました。あなたはどうしますか?」
[私のことなら心配はいらない。分離が終わったなら、元々の基地部分は私の思いどおりになる]
 その言葉どおり、振動は止まり、傾きも徐々に水平に戻っていく。
[元々この『移動基地』は水上水中どちらも航行可能だ。未完成とはいえ、数時間の航行なら問題ない。それよりも、『侵略者』が建造した基地には気を付けろ]
「知っていることがあったら教えて下さい」
[そうだな。まずは……]
 礼子は1人『移動基地』に残り、『管理頭脳』から情報を聞き出すことに努めるのであった。
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