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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-11 論戦

[これ以上何を望む]
《この星、アルスはヘールのものではない。今生きている全ての生命のものだ》
[戯れ事を。住めるように改造した時、どれほどの生命を奪ったと思っている]
《それは……》
 『ヘレンテ』は言葉に詰まる。
[貴様等も我等と変わらない。ならば祖である我等が優先されてしかるべきだ]

「いや、その言葉には同意できない」
[何?]
 仁の分身人形(ドッペル)(仁D)が口を挟んだ。
「生き物は生きるために努力する。それだけのことだ」
[何が言いたい?]
「わからないか? 生活を脅かされれば、抵抗すると言っている」
[蛮人がか?]
「その蛮人に手も足も出ないのはどこのどいつだ」
[ふん、口だけは達者だな]
「それはそっちだろう……」
 仁Dも呆れ気味だ。
「援助して欲しければそう言えばいいだろう。それなればこちらとしても援助するのにやぶさかではない」
[ふん、馬鹿を言え。同じ星の中で争い、その揚げ句に人口を激減させるような蛮人に何を頼めと言うのだ]
 声の主は『魔導大戦』のことを知っているらしい。
「あれは謀略によるものだった。現に今は、各国が手を取り合おうとしている」
[それが蛮人だというのだ。手を取り合うだと? 弱者の行為ではないか]
 どうにも声の主との相互理解は難しいようだ。

《生物は生きるために生存競争を行うが、そんな段階は数万年前に脱却したのではなかったのか?》
 『ヘレンテ』が再び口を開いた。
《『主人たち』はそのような行為から脱却し、恒星から供給される自由魔力素(エーテル)を利用して生活していたはずだ。それを否定するというのか?》
[何も知らないガラクタがほざくな。自分としては、命令に従うのみ]

*   *   *

「思考放棄したな」
『のようですね』
 蓬莱島では、仁と老君がやり取りを分析していた。
御主人様(マイロード)、声の主はおそらく魔導頭脳ですね』
「やはりそうか」
『それも、中途半端に自律行動ができるタイプです。最終的に命令を盾に取る、という点でその可能性が非常に高くなりました』
「なるほどな」
『議論の根拠が稚拙です。相手を論破しようという意思が見えません。盲目的に命令に従うタイプによく見られる傾向です』
 老君の分析。制限はあるとはいえ、自由に思考し振る舞える魔導頭脳である老君とはえらい違いだ。 

*   *   *

《資源なら、このアルスに限らず、他の惑星にもあるだろう》
 『ヘレンテ』は諦めずに説得しようとしていた。
[自分は指示に従うのみだ]
《自由意思はないのか?》
[笑止。被造物にそんなものはない]

 図らずも、謎の声は『被造物』、つまり少なくとも人間ではないことが確かめられた。
[邪魔をするなら容赦しない]
《それはこちらのセリフだ。この星とその住民を危うくするなら黙ってはいない》
 『ヘレンテ』は『ヘレンテ』で、その『主人』からこの星を守護するよう指示を受けているわけで、二者の間には妥協は成立しない。
[退化した弱者と蛮人の星に何ができるというのか]
 ここで再度仁Dが口を挟む。
「蛮人蛮人というが、自分たちがそれほど優れていると思っているのか? だとしたら滑稽だな」
[何?]
「その蛮人を恐れてこそこそ何をやっていたんだ」
[貴様……]

 今分身人形(ドッペル)を操っているのは老君。
 わざと挑発し、別の反応を引き出そうと試みているのだ。
[蛮人が生意気な]
「その蛮人に馬鹿にされるようなことをしているからだろうが。そもそも蛮人のいる星に頼らなければならないなんて情けないと思わないのか?」
[……]
「おや、返事ができなくなったか?」
 本当に、言葉に詰まったかのように謎の声は沈黙した。

「ランドたちは周囲を警戒しろ。礼子、護衛を頼む」
 その隙に、仁Dは『ヘレンテ』の問題に取りかかった。
「はい、わかりました」
 指示を出し終えると、この時とばかりに仁Dは動けなくなった『ヘレンテ』の診察を開始する。
「ふむ、関節部分が腐食して動きが悪くなっているな。筋繊維は無事だが、付着部分が溶け落ちている。これで動けなくなったわけだ」
 そして工学魔法を発動。
「『変形(フォーミング)』『融合(フュージョン)』『接着(ボンディング)』『変形(フォーミング)』……」
 5分ほどで作業は完了。
《感謝する、『崑崙君』》
「あくまでも応急処置だから、無理はするなよ?」

 そして、修理が終わるのを待っていたかのように、謎の声が再び響き渡った。
[やはりお前たちは危険だ。ここで殲滅する]
 何をどうすればそんな結論になるのか、という言葉であった。

*   *   *

御主人様(マイロード)、やはり論理的に破綻しています』
 蓬莱島では老君がそう結論づけていた。
「の、ようだな」
『ここは、できるだけ早く『移動基地』を解放すべきです』
「わかった。だが、向かうべき先は?」
 それがわからないことにはどうしようもない。
『今までの敵ゴーレムが現れるパターンなどから推測しました。あのホールの正面を突破した先の部屋、その『上』です』
「上?」
『はい。端末はその部屋にありますが、本体はおそらく『上』かと』
 老君は、以前『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見た映像も加味してフロアの階層を推測したという。
「なるほど。論戦は『ヘレンテ』に任せて、礼子には先へ進んでもらおう」
 仁は魔素通信機(マナカム)を使い、礼子に指示を出したのである。
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