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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-10 礼子救援

 転移魔法陣を使って『移動基地』にやって来た礼子。
 そのいでたちは、いつもの侍女ルックに加え、白い鉢巻姿だ。

 彼女を出迎えたのはランド14であった。
「お嬢様、ようこそおいでくださいました」
「転移魔法陣の設置ご苦労様。それで、状況は?」
 礼子は早速状況を尋ねた。
「はい、ランド11、12、13、15と『ヘレンテ』、それにご主人様の分身人形(ドッペル)が向かった部屋に『エーテルジャマー』に似た結界が張られたようです」
「わかりました。まずはその発生装置を潰した方がよさそうですね」
「それでしたら場所の幾つかは特定済みです」
 ランド14も、手をこまねいていたわけではない。外側にいて、己のできることをしていたのである。
 そしてそれを礼子に伝えたことで事態は好転する。
「まず1つめはあそこです」
 仁の分身人形(ドッペル)(仁D)たちが入っていったホール入り口上の壁の中に、1つ目の結界発生器が設置されていた。
「……お父さまは興味をお持ちでしょうけれど、今回は仕方ないですね」
 愛刀『桃花』のバイブレーションモードにより、壁の金属はチーズかバターのように斬り裂かれた。
「これですね」
 露わになった魔導機(マギマシン)。礼子は躊躇うことなく『桃花』でそれを両断した。

「次はこちらです」
 手前の壁を指差すランド14。そこには継ぎ目が走っており、メンテナンス用の通路があることがわかった。
「時間がないのでこうしましょうか」
 礼子はその小さな手を継ぎ目に当てた。その指先は次第に継ぎ目に沈んでいく。
 ニッケルクロムモリブデン鋼の壁は礼子の力に屈した。
「えい」
 そのまま通路カバーを毟り取った礼子は、現れたメンテナンス用通路に飛び込んだ。
「お嬢様、20メートルほど奥、右側です」
「わかりました。行ってきます」
「お気をつけて」
 通路は、成人なら身を屈めて歩かなければならない狭さだったが、身長130センチの礼子にはちょうどよかった。
 礼子はランド14に教えられた場所で足を止める。
 メンテナンス用通路なので、擬装はされておらず、すぐにそれとわかった。
 点検用のハッチを開けると結界発生器が見えた。
 それを引っ張り出す礼子。繋がった導線は引きちぎる。参考用にそのまま持ち出し、ランド14に預けた。

「最低でもあと2つあると思われます」
 ホールの四方から照射されているとすれば、とランド14は言った。
「そうでしょうね。では……天井から行きましょう」
 礼子は力場発生器フォースジェネレーターで浮かび上がると、『音響探査(ソナー)』を使う。
「ありました」
 天井にもメンテナンス用の通路があった。
 礼子はここも力ずくでこじ開け、飛び込んだ。
 そして3分。天井伝いに該当箇所へ向かった礼子は、無事結界発生器を破壊。
 そのさらに奥に設置されていたもう1つも破壊する。
「これでランドたちも十全にその力を振るえるでしょうが、わたくしも手伝ってきます」
「行ってらっしゃいませ、お嬢様」
 ランド14はその場を守るために残り、礼子はホールへの出入り口を蹴破った。
 そこでは、大型の敵ゴーレムとランドたちが激闘を繰り広げていた。
 礼子は静かな声で告げる。
「遅くなりましたが、自由魔力素(エーテル)を阻害していた結界発生器は全て破壊しました。ランド隊の皆さん、ご苦労様でした。あとはお任せください」

*   *   *

「礼子、よくやった」
 蓬莱島では、仁が礼子の賛辞を贈っていた。
 分身人形(ドッペル)との接続が回復したことにより、自由魔力素(エーテル)を阻害していた結界が消えたことがわかったのだ。
 その礼子は、敵と思われる、大型ゴーレムを複数相手取っている。
 圧倒するのではなく、少し上回る程度の力で無力化する戦い方。
 それは『桃花』による斬撃がメインである。
 ハイパーアダマンタイト製の『桃花』を最強たらしめているのはその超高速振動である。
 超音波領域で高速振動する刃は、それより軟らかい物質を容易く斬り裂く。
 礼子の膂力と相まって、同質のハイパーアダマンタイトを除き、既知物質は何でも斬り裂くのだ。
 防ぐには物質ではなく、魔法により強固な物理障壁(ソリッドバリア)を展開しなくてはならない。

 敵ゴーレムの重装甲も、手にしたメイスも、『桃花』の前には葦の穂と変わらなかった。
 腕を斬り落とし、メイスを斬り飛ばし、胴体を斬り裂いて、礼子は獅子奮迅の働きを見せる。
 ほどなく、敵ゴーレム5体は沈黙した。

[蛮人の製作物にしてはなかなかやるな]
 ホールに声が響いた。
[この移動基地を取り返しに来たか]
「お前は?」
 仁Dが問いかける。
[この基地の支配者だ]
《何が支配者か。簒奪者ではないか》
 『ヘレンテ』が言い返した。
[お前は……おお、弱虫どもが作った意志を持つ操り人形(ライブパペット)か]
《弱虫どもだと?》
[そうだ。母星に暮らせなくなって逃げ出した弱虫だ]

 この問答で、事件の黒幕はヘールにいる者たちであるということがほぼ確定した。
 彼等は移民した者たちを『弱虫』と蔑んでいるようだ。
《お前はヘールに残った者たちの手先なのか?》
[手先とは少し違うが……まあその認識でよい]
《なぜこんなことをする?》
[なぜ、だと? それが必要だからだ]
《それがこの星に不利益をもたらしてもか?》
[植民星のことなど知ったことではない]
 この言葉に『ヘレンテ』は少々憤った。
《植民星ではない! 移住したのだ。移住した『主人たち』にとっては第2の故郷なのだ》
[それはお前たちの理屈だ。我々から見れば勝手に逃げ出した弱虫の理屈に過ぎぬ]
《……!》

 この会話の方向性は不毛だと感じた仁は、分身人形(ドッペル)の口を借りて質問を投げ掛けてみた。
「この『移動基地』を占領して何をするつもりだったんだ?」
[愚問だな。当然、この星の資源を母星へ持ち帰るのだ。なぜか、なかなか捗らないが]

*   *   *

「うーむ、傲慢というかなんというか」
御主人様(マイロード)、向こうの言葉からは協調性の欠片も感じられませんね』
「だな」
 『ヘール』側の目的は、やはりアルスの資源であった。
 捗らないのは『統括頭脳』をはじめとする、『アルス』側の面々が精一杯の抵抗をしているからだろう、と仁は考える。
「それにしても……」
 時間の感覚はないのか、という疑問が湧いた仁であったが、老君がそれに答えて曰く、
御主人様(マイロード)、私ども魔導頭脳は、時間というものについて、測定はできても『感じる』ことはできないのです』
 という。
「どういうことだ?」
『はい。例えば『1日』はアルスが1回自転をする時間であることはわかります。1日より2日の方が倍の時間を含むこともわかります。ですが、それが長いか短いか、と『感じる』ことはできないのです』
「よくわからないな」
『それは御主人様(マイロード)が生きてらっしゃるからですね』
「うーん……」
 仁は考え込んでしまう。
「体感時間、というようなことかな?」
 夢中で何かをやっている時は時間の経過が早く感じ、つまらない演説などを聞いている時は遅く感じる。
 老君たちはそのようなことはなく、1分は1分、ということだ。
『はい、それも一つの例ですね』
 老君が仁の言葉を肯定する。
『比較対象があれば『長い』『短い』と評することはできます。ですが、単に『1年』を取り出した時、長いか短いか、という評価はできません』
「うーん、なんとなくわかったような気もする」

 一方、魔導投影窓(マジックスクリーン)の向こうでは、まだ問答が続いていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161107 修正
(誤)「これですな」
(正)「これですね」
 orz

 20161108 修正
(旧)そして3分。天井伝いに該当箇所へ向かった礼子は、無事結界発生器を破壊する。
(新)そして3分。天井伝いに該当箇所へ向かった礼子は、無事結界発生器を破壊。
 そのさらに奥に設置されていたもう1つも破壊する。
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