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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-08 第1ラウンド

 扉の向こうは広いホールであった。
 ホールの直径は50メートルほど。天井までは10メートルほどもあろうか。
 壁も床も天井も金属製。
《ここがそうなのか?》
[そうだ。ここがお前たちの墓場だ]
《何!?》
 入ってきた扉が閉じたかと思うと、戦闘用と思われるごつい体躯をしたゴーレムが多数姿を現した。
「やはり罠だったな」
 仁の分身人形(ドッペル)(仁D)とランド4体は落ちついていた。

*   *   *

「やはり罠だったな」
『半ば予想どおりですね』
 蓬莱島では仁と老君が頷き合っていた。
「お父さま、いよいよわたくしが行きますか?」
 礼子もフル装備で待機している。
「そうだな、頼む」
「はい、お任せください」
『礼子さん、ランド14が転移魔法陣を刻んでいますので、まずそこへ転移してください』
「礼子、最初から魔力貯蔵器(マナボンベ)モードでいけ」
「わかりました」
『転移魔法陣の同期終了まであと3分ください』
「わかった。慎重に頼む」
 一旦同期すれば後は転移門(ワープゲート)と同様の運用が可能になるのだが、任意の場所に刻み込む転移魔法陣は、その魔力波(エーテル波)周波数の同期に時間が掛かるのが欠点である。
 この場合、ランド14が刻んだ転移魔法陣に蓬莱島側を同調させる方が容易なため、この作業時間で済んでいるのだ。

*   *   *

「……」
「これは!?」
 いきなり仁Dの動きが止まった。
 すかさずランド12がフォローするが、反応は鈍い。
「エーテルジャマーか、それに類する攻撃か!」
 ランドたちは元から魔力貯蔵器(マナボンベ)モードで動いているので影響は受けない。
 仁Dも動作は問題ないはずだが、エーテル波を攪乱されてしまい、操縦出来なくなってしまったのだ。
 仁Dの自律性は低いため、戦闘は不可能。よってランド12とランド13がフォローに入った。
 そこへ襲いかかる敵ゴーレム。『ヘレンテ』よりも戦闘に向いた外観をしている。
 その数20体。
 それが一斉に殴りかかってきた。

《ぐあっ!》
 『ヘレンテ』も似たような補助機能を持っているが、戦闘用ではない上、腐食により動作が鈍っており、敵ゴーレムの蹴りを受け、壁まで吹き飛ばされてしまった。
《ぐ、む……動作不良率が50パーセントを超えた、か……》
 蹴られ、壁に叩き付けられた衝撃で、魔導神経が断線したらしく、立ち上がれなくなってしまっていた。
 が、幸いといえばいいか、敵ゴーレムはそんな『ヘレンテ』には見向きもせず、ランドたちに群がっていた。

《魔法を使わない……なるほど、自由魔力素(エーテル)を攪乱しているので向こうも魔法は使えないわけか》
 ゴーレムたちは体術だけで襲ってきていた。
 迎え撃っているのはランド11と15。12と13は仁Dを庇っている。
「『ヘレンテ』、ここは任せておいてくれ」
 ランド11は壁際で蹲っている『ヘレンテ』に一言告げた。
 徒手空拳での攻防が繰り広げられる。
 ランド隊は陸戦用。こういう場面には強い。
「来い!」
 行動不能に陥った仁Dを庇うように、ランド11と15は迫り来るゴーレムを相手にしている。
 それぞれ1対10の戦いだ。
 敵ゴーレムはそれなりに強力だが鈍重であり、ランドの速度には付いて来られない。
 そしてパワーも、仁が作り上げたランドの方が上だ。
 加えて敵ゴーレムの攻撃手段は単純な打撃と蹴り。技らしい技は使ってこなかった。
「技もなく、ただ闇雲に殴りかかって来るだけか」
 数で劣るといえども、ランドには技があった。

《凄いものだな……》
 『ヘレンテ』は2体の戦い振りを見つめ、驚愕を覚えていた。
 速度とパワー、そして大きさは、通常では相反するが、仁はそれら全てを高い次元で実現していたからだ。
《これが『崑崙君』の実力か……》
 今まで『オノゴロ島』勢の前で見せていたのは実力の半分にも満たないものだったことを改めて『ヘレンテ』は感じ取った。

 ランド11と15は拳、肘、蹴り、投げなどあらゆる技を用いて敵ゴーレムを相手取っていた。
 だが、相手取る敵の数が多すぎるため、総じて互角といったところ。
 優位に進めるにはあと一歩足りなかった。
 仁Dを庇いながら、ランド12と13はこのままでは膠着状態が続くと独自に判断する。
 ここで1体が参戦すれば、この均衡を崩せる、とも。
 そして、そのとおりに行動を開始した。
「ランド13、一時任せます」
「了解」

 ランド12はまず、ランド11の背後から襲いかかっていた敵ゴーレムに強烈な蹴りを浴びせた。
 まったく予期しない方向からの攻撃を受け、そのゴーレムは吹き飛ぶ。
 続けてランド12はランド15を攻撃している敵ゴーレムの1体を捕まえ、『腕投げ』で投げ飛ばし、床に叩き付けた。
 その衝撃で床が僅かに凹み、敵ゴーレムは動作を停止した。

 1対10が1対9になっただけで、均衡は簡単に崩れた。
 1割増えた余裕は、敵ゴーレム1体を遠ざける時間を1割増やした。
 その時間は攻撃時間を増やすこととイコールであり、それによってさらに敵ゴーレムへのダメージが増すことになる。
 この正のスパイラルにより、ランドの優位は刻一刻と増していった。
 そして、1対9が1対8になり、1対8は1対7に。そして1対6、1対5……。
 こうなると最早敵ゴーレムに勝機はなかった。
 戦闘が開始されて2分足らず、ランドたちは敵ゴーレム20体を戦闘不能に追い込んだのである。

《ううむ、強い。『崑崙君』のゴーレムはこれほどまでに強いのか》
 『ヘレンテ』はランド隊の強さに瞠目していた。だがランド11はまだ警戒を解いていない。
「……補助ゴーレム066号の姿がない。注意を怠るな」
 そして、その予想どおり。
[原住民が作ったにしては、恐るべき強さだな。だが、これならどうだ]
 補助ゴーレム066号の声が響いたかと思うと、新たな敵ゴーレムが8体現れた。
 数は減ったが、その体躯は先程の20体より大きくなっており、さらに武器を手にしていた。
 左手には大きな盾、タワーシールド。
 右手には、剣あるいは棍。
[貴様等を侮るのはやめだ。全力でほふってやる]
 第2ラウンドの鐘が今、鳴らされた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161105 修正
(誤)その衝撃で床が僅か凹み、敵ゴーレムは動作を停止した。
(正)その衝撃で床が僅かに凹み、敵ゴーレムは動作を停止した。
+注意+
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