挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

1340/1507

36-06 通路と部屋と

 仁の分身人形(ドッペル)(仁D)の目を通じ、仁は『ヘレンテ』の診察を行った。
「うーん、7割から8割、といったところかな」
 おそらく、外装の関節部分のシールが不十分で、内部に塩酸が染み込んだ際にダメージを受けたのだと思われる。
 塩酸の主成分である塩化水素は揮発性のため、もう残留してはいないだろうが、ダメ−ジはそのまま残ってしまったわけだ。
 とはいうものの即停止するようなものではないので、ひとまず様子を見ることにする。
 敵地なので分解して修理する、というわけにはいかないのだ。

*   *   *

《こっちだ》
 迷わずに一行を先導する『ヘレンテ』。
 通路は右に曲がり左に曲がり、時には180度向きを変えて続いている。横への通路も無数にあるため、『ヘレンテ』の先導がなかったら完全に迷ってしまうだろう。
「この迷路も罠のうちか……いや」
 仁Dは、ふと立ち止まり、床に触れてみる。
「……『分析(アナライズ)』……なるほど」
《どうした?》
 先を行く『ヘレンテ』が立ち止まり、振り返った。仁Dは立ち上がると、
「ここの通路は、わざとこうしてあるんだと思ってな」
 と答えた。
《どういう意味だ?》
「この通路がいやに曲がりくねっているのが気になったんだ。調べてみると、床にミスリルと思われる導体が埋め込まれている」
《ということは?》
「一部が巨大な魔力回路になっているんだよ」
《ふむ、なるほど》
 魔力……エーテル波の特定周波帯の波動を増幅する目的に使われている可能性を仁は考えたが、
「だとしても、この形は有り得ないな……」
 魔法陣のように円形なら、循環させて強度を上げる、という手法が想像できるのだが、ここの回路はくねくねと曲がっているのだ。
「だが、この回路を辿ったら、目的地へ辿り着けるかもしれないか」
 しかし『ヘレンテ』はそれを否定した。
《いや、それはないだろう。管理魔導頭脳がそのような危険を冒すはずがない》
「危険?」
《うむ。そのミスリル導体に別の魔力を流せば、管理魔導頭脳は……》
「確かにそうだな」
 場所はすぐ特定できる上、電撃系の魔法を受けやすくなるから、という。
「とりあえず、一応カットしておこう」
 仁Dは、床に手を突き、工学魔法を使う。
「『変形(フォーミング)』『分離(セパレーション)』……よし」
 わかりやすく壊したので、後で簡単に直せる。
「これで少しは安心できるだろう」
《なるほどな》

 一行はまた歩き出した。
 5分も行くと目の前には扉が。
「ここは?」
《おそらく中継点だ》
「中継点?」
《この通路を辿ってくる者をふるい分ける部屋だろう》
「つまり罠ってことか?」
 だが、ヘレンテは否定する。
《罠とは少し違う。幾つかの条件を満たせば通過できるものだ》
「だが、そのままになっているという保証はないぞ」
《それは、確かにある》
「条件を満たせないとどうなる?」
《情報によれば単に先へ進むための扉が開かないだけだが……》
「そのままとは思えないな」
 ここまで何の妨害もなく来られたことを考えても、この部屋に何かある可能性は高い。
「とは言っても行かなきゃ始まらないか」
《うむ》
「ご主人様、まずは私が入ってみます」
 ランド11が名乗り出た。
「ご苦労だが頼む」
「はい」
 仁Dと『ヘレンテ』は5メートルほど下がった。
 次いでランド11が扉を開き、素早く中を確認する。
「何もないようです」
 いきなり攻撃される危険はなかったようだ。
「よし、では入ってみよう。……ランド11は一旦外に出て待機。何かあった場合に備えるんだ」
「わかりました」
 そうした手を打って、仁たちは部屋に足を踏み入れた。
 入ってきた扉が閉まることもなく……それどころか何ごとも起こらない。
 部屋そのものは5メートル四方くらいの四角い部屋だ。
 入ってきた扉の反対側に扉があり、そこが出口だろう。
「うーん、開かないな」
 仁Dが試してみるが、施錠されているようで開くことができない。
 無理に開ければ、何らかの保安処置が作動するだろう。
《目的地まではまだ遠いはず、できれば穏便に通過したいな》
「そうか……ではどうするかだ」

*   *   *

 蓬莱島でも、分身人形(ドッペル)を操縦する仁が頭を捻っていた。
「開ける条件があるはずなんだよな」
御主人様(マイロード)、入口を閉めないと反応しないのかもしれません』
「ああ、その可能性もあるか」
 今はランド11が部屋の外にいて、不慮の事態に備えている。
「なら、ランド11も部屋の中に入れて扉を閉めれば、何か起きるというんだな?」
『はい。その可能性は高いでしょう』
「その結果が罠の起動ということもあり得るな?」
『確かにあり得ます』
 仁はどうするか、少し考えたが、
「行くしかないか」
 と結論を出す。
「何かあったら……転送装置で脱出することもできるしな」
 そして指示を出す。
 分身人形(ドッペル)の目に連動する魔導投影窓(マジックスクリーン)には、部屋に足を踏み入れるランド11と閉まる扉が映っていた。
 その扉が閉まった瞬間。
 出口と思しき扉の表面に紋様か文字らしきものが浮き出る。
 同時に、部屋の壁が、一行を押し潰すかのように動き出したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ