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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

36 移動基地篇

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36-01 電撃作戦

 3458年11月17日。
 『蓬莱島』と『オノゴロ島』の連合軍は、南極の氷の下にある『移動基地』の奪還作戦を開始した。
 戦艦『穂高』と巡洋艦『梓』『桂』『淀』が付近でバックアップ。
 海中には『シャチ』と海中軍(マリナー)部隊のマーメイド1から100が展開。

 自由魔力素(エーテル)不足対策をしてあるので南極でも運用に問題はない。
 そして自由魔力素(エーテル)の不足しない成層圏には『アドリアナ』が浮かんでいる。
 また、いつでも転送機で送り込めるよう、空軍(エアフォース)垂直離着陸機(VTOL)、『ファルコン』が10機、蓬莱島で待機していた。

 そして『オノゴロ島』では。
「『ヘレンテ』、準備は?」
 仁が操縦する分身人形(ドッペル)が尋ねた。
《いつでも大丈夫だ》
御主人様(マイロード)、『しのび部隊』の準備も整っております』
 今回、『移動基地』に潜入する第一陣は『しのび部隊』である忍壱から忍拾までの10体。
 蓬莱島から転送機で『移動基地』そばの氷山へ転移。
 内部を確認後、『転移魔法陣』を設置、第二陣を迎える。
 その第二陣は『ヘレンテ』と仁の分身人形(ドッペル)、それにランド隊である。こちらは『オノゴロ島』で待機している。

 そして遊撃として礼子が準備を整えて蓬莱島で待機。こうした布陣である。
 その礼子は、仁によっていろいろと整備され、さらなるパワーアップがなされていた。
 加えて、第一陣を送り出すと同時に、『オノゴロ島』からの自由魔力素(エーテル)供給を止める手筈だ。

 仁本人は蓬莱島の司令室に詰めている。
 その仁に、エルザが質問をした。
「ジン兄、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で確認した『頭脳』の所へ直接転移して、『超小型魔導機(マギマシン)』……『支配機(ドミネイター)』を取り外す、ということはできないの?」
 仁は渋い顔で頷く。
「それは俺も考えたし、できるなら一番いいと思う。だけどできないんだ」
「え?」
 エルザは首を傾げた。
「『オノゴロ島』の『統括頭脳』を解放しただろう? あの直後から、『移動基地』に障壁(バリア)が張られたんだよ」
「……勘付かれた?」
「だろうな。互いに連絡を取り合っていたか、あるいは双方の『支配機(ドミネイター)』を管理している存在がいるのかはわからないけどな」
「……そう」

 そこに、老君から報告が入る。
御主人様(マイロード)、こんな時ですが、先日コピーした『ヘレンテ’』の記憶内容が少し解析できました』
「お、やったか」
 『支配機(ドミネイター)』に支配されていた時の記憶内容は、既知の言語で書かれておらず、解析に手間取っていたのである。
『大半は『ヘレンテ』が『支配機(ドミネイター)』の影響下にあった際の記憶ですが、一部はその指令内容です』
「うん、それで?」
『……この星の征服、が最終目的のようです、理由は資源ですね』
「そうか……待てよ?」
 仁がふと思ったこと。
 それは、言語が違うということは、黒幕は始祖(オリジン)ではないという可能性がある。というかその可能性は高い。
『私もそう思います』
 老君も仁の仮説を支持した。
「それも『移動基地』を解放したならわかるだろうか」
『可能性は十分にあります』

 そして、いよいよ決行の時間が迫ってきた。

 『オノゴロ島』では午前6時、蓬莱島時間午後6時。
『転送します』
 『しのび部隊』10体は、『移動基地』を覆う氷の上へと転移した。

「氷山なんだか海氷なんだかよくわからないな」
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』からの映像を見ながら仁が呟いた。
『おそらく『移動基地』をカムフラージュするために氷で覆ったんでしょうね』
 その氷の上にいる豆粒のような存在。しのび壱から拾の10体である。
〈これより潜入工作を開始します〉
「よし。十分気を付けろよ」
 仁はそう返すと、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』からの映像に集中する。
 まずは氷を削り取るところから始めるのだが、これは『ミニモグラ』を使う。
 岩盤を掘り進むことのできる『ミニモグラ』の前に、氷は何ほどのこともなく、30分も掛からずに氷の層は突破できた。
「さて、『移動基地』の装甲はどうするかだ」
 氷に覆われた部分には物理的な結界はないので、どうとでも料理できる。
「相手に最も警戒されにくい手段だな」
御主人様(マイロード)、やはり『工学魔法』でしょう』
「そうだな」
 工学魔法の効果範囲は狭いので、気取られにくいという理由だ。
 しのび壱は指示に従い、『変形(フォーミング)』を使った。
 さすがに、超小型ゴーレムが行うので時間はそれなりに掛かる。
 およそ1分で彼等が通り抜けられるだけの穴が開いた。
「よし、いいぞ。固定(フィクス)だ」
 『固定(フィクス)』とは、この場合、穴を保持することであるが、同時に結界にも穴を開けたままにする技術である。
 イメージとしては、結界がボールの表面、固定(フィクス)はそこに細いパイプを刺すことにあたる。
 このパイプは結界と同質なので、結界と融合し、あたかも『空気穴』のような作用をするのだ。
 この『穴』があることで、魔法障壁(マジックバリア)を張られたとしても魔素通信機(マナカム)による通信や、転移門(ワープゲート)による移動が可能となる。
 ただし『覗き見望遠鏡(ピーパー)』は使えない。『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の波動は直進性が高いため、『蓬莱島』の本体と直線で結べない箇所は見ることができないのだ。
「よし、『オノゴロ島』に連絡しろ。自由魔力素(エーテル)供給を止めるんだ」
『はい、御主人様(マイロード)

 ここに、『移動基地』奪還の火蓋が切られた。

 しのび壱を先頭に、10体は『移動基地』内に降り立った。
 非常灯のような明かりが灯るだけの薄暗い通路である。
 が、暗いことは大して有利ではない。
 『しのび部隊』は不可視化(インビジブル)を使用しているが、敵に魔力探知装置(マギディテクター)のようなものがあれば一発で見つかるだろう。
 むしろ素早さと小ささ、それに非常用の『転送装置』が頼りだ。
 別々に行動すると見つかる可能性が増し、固まっていると一網打尽になる危険性が上がる。
 『しのび部隊』は、行動を共にすることにした。ただし、各々1メートルほどの距離を置き、危険に備えながら、である。

「外殻はニッケルクロムモリブデン鋼か」
 『変形(フォーミング)』時の調査でわかったことである。
「かなり贅沢な使い方をしているなあ」
 仁は独りごちる。
 今仁が見ている魔導投影窓(マジックスクリーン)の映像は、しのび壱の視覚に連動しているので、移動と共に移り変わっていた。
 しのび壱の目は小さいので、そのままで魔導投影窓(マジックスクリーン)に合わせて拡大すると暗い映像になってしまうので、魔法『光学』的に処理され、明るい映像となっていた。
「ふうむ、ほぼ完成した区画だな。人気ひとけがまったくないが」
御主人様(マイロード)、今のところ『しのび部隊』は順調ですね』
「そうだな。自由魔力素(エーテル)供給を止めたので混乱している可能性もあるだろう」
 これが一番のアドバンテージである。
 『しのび部隊』はさらに奥へと歩を進めていった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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