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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-48 同盟

「手を貸せ……というのか?」
《然り》
「こちら側のメリットは?」
《平穏、だな》
「平穏?」
《そうだ。私の記憶領域に残った情報断片を再結合し補間した結果、『支配装置(ビヘルシャー)』を作った存在の最終目的はこの星の資源だ。そこに、生命体への配慮はない》
「何だって!?」
《私にはわかる。『支配装置(ビヘルシャー)』から出されていた指示は、この星の存在の安否を無視したものばかりだった》
 『統括頭脳』は、可能な限りそれに抵抗し、穏やかな指示に変えていたのだという。
「それが本当なら、由々しき事態だな」
《証明するすべはないが、ここは信じてもらうしかない》
 仁は考え込む。
 いずれにしても南極海の氷の下にある『メガフロート』は調査するつもりだった。
 『統括頭脳』はさらに語る。
《『移動基地』は、この世界の維持管理に使うはずのものだった。それが、どうやら兵器として改造されているようなのだ》
「それはまずいな……」
《だからこそ奪還したい》
「壊すのはまずいのだろうな?」
《まずい。あれだけの基地を作るには100年単位で掛かるだろうからな。とはいえ、完全に無傷で奪還してくれ、とはいわないが》
「仕方ない、か」
 だが仁は内心で、もしも壊れたら直せばいいだろうと思っている。
 人的・ゴーレム的被害が出ないようにする方が優先だ。
「わかった。できる限りの力になろう」
《ありがたい》
「こと攻撃に関しては、そちらはあまりあてにならないようだしな」
《それは否定しない。この施設を設置した主人たちは、争いごとが嫌い、というか苦手だったからな》
「そうか……」
 『始祖(オリジン)』がそういった荒事を好まない種族だったことは薄々想像がついていたので、この情報にも頷けてしまう仁であった。

 それからも、仁の分身人形(ドッペル)は『統括頭脳』と様々な話を交わした。
 その過程で、さらに色々なことがわかってくる。

 『始祖(オリジン)』には、派閥というか、主義主張の違いから来るグループが幾つもあったという。
《大別して『残留派』と『移住派』があり、残留派は『自然回帰派』と『隠遁派』、移住派は『急進派』と『穏健派』に分かれ、それがまた急進派は『侵略派』と『開拓派』、穏健派は『共存派』と『融合派』、『独立派』に分かれていたのだ》
「随分分かれているんだな」
 それだけ、個人主義だったのだろうか、と仁は思った。
《もちろん、重力の調整など、住める環境作りは移住して来た全員が参加したのだがな》
 それはそうだろう、と仁。まずは住める星にすること、それが急務なのだから、派閥間で争っているわけにはいかないだろう。
「まとめると、このアルスに来たのは『移住派』で、原住民と交わったのがその中の『穏健派』ということになるのかな?」
《概ねそういうことになるな》
「それで、穏健派が今の人類の祖になったんだな?」
《それで間違いない》
「……魔ぞ……いや、北部……ゴンドア大陸に住んだのが独立派で、ローレン大陸に住んだのが融合派と共存派になるのだろうか?」
《そのとおりだ》
「共存派はハリハリ沙漠の西、融合派は東、という棲み分けか」
《ほぼそれでよい》
 これで、現魔族領の住民の方が『始祖(オリジン)』の血が濃いことの説明も付く。

「『急進派』はどうしたんだろう?」
《そのうちの『開拓派』はここに住んでいたのだ》
「ああ、なるほど」
 開拓のベースとして、この『オノゴロ島』を選んだという。
 居住区はその時の名残ということだ。
「住んでいたのも開拓派、なんだろうな?」
《そのとおりだ。残念ながら、今では1人もいなくなってしまったが》
 血が濃くなる、という以上に、人数的にも種の維持は難しかったんだろうと仁は想像した。
「……では、侵略派はどうしたんだ?」
《……彼等は北半球にある別大陸に移り住んだ。その後のことはわからないが、僅か13人しかいなかったことを考えても、滅んだのだろうと思う》
「13人!?」
 仁は驚いた声を出す。少ないだろうと思ってはいたが、思った以上に少なかったためだ。
「……じゃあ、『移動基地』を侵略しているのはその急進派とは無関係なんだな?」
 話を聞き、どうしても確認しておきたい点である。
《無関係だ。それは断言できる》
「そうか。それならいい」

 その他にも『始祖(オリジン)』について幾つか判明したことがある。

 『始祖(オリジン)』は、あまり記録を残さない種族だったらしく、過去のことはあまり伝わっていないこと。
 『始祖(オリジン)』は、移住を決意した頃にはかなり退化を始めていて、『使えるが作れない』魔導具や魔導機(マギマシン)も多かったこと。
 最も衝撃的だったのは、『移住派』はここアルス以外にも候補地を選定していたことだ。
《第2惑星ジパートと第4惑星テトロドスがそれだ》
 これは、ヘールとアルス双方を第3惑星と呼ぶ前提でのナンバリングである。

 ここで仁は、ふと思い出したことを質問してみることにした。
「そういえば、以前、数ヵ月だか数年だか掛けて、ヘールからアルスにやって来た、という話を聞いたことがあるんだが、そんなに時間が掛かるものなのか?」
《うん? ……そのようなことが言われているのか? ……もしかするとそれは、全員を移住させるために『天翔る船』が何往復もしたことが間違って伝わったのではないだろうか?》
「ああ、そういうことか」
 移住全体のスパンが長かった、という意味だった可能性も確かにあるだろう、と仁も同意した。

 どうしても知らなければならないわけではないため優先度がやや低めの、こうした疑問の答えが得られることは正直有り難い。
「ありがとう。ためになった」
 仁はそう言って質問を締めくくった。

*   *   *

「礼子、ご苦労さん」
 仁は立役者の礼子を労う。
「いえ、お父さまのお役に立てたら幸いです」
「『支配装置(ビヘルシャー)』を舐めていたよ」
「いえ、お父さまが送ってくださった新しいシールドケースのおかげで何ごともありませんでしたから」
「それでもだ。済まなかったな、礼子」
「いえ、わたくしにはわかっています。お父さまが、わたくしを大事に思ってくださっている一方で、戦力として頼りにしてくださっていることを。ですからお役に立てることがわたくしの喜びなのです。もっともっと強くしてください。そして、もっともっとお役に立ててください」
 仁はそんな礼子を抱きしめた。
「ありがとう、礼子」

*   *   *

 この『同盟』の仕上げの鍵を握っていたのはマリッカだった。
《おお! 『ヘレンテ』の言ったとおり、貴女様は間違いなく『主人』の子孫!》
「は、はあ」
《以後、『オノゴロ島』は全てマリッカ様の指揮下に入ります》
「よ、よろしくお願いしましゅ」

 そして、事態が落ちついたのは11月12日。
 仁は、オノゴロ島の地上部に転移門(ワープゲート)を設置することを、『オノゴロ島総督』マリッカを通じて許可を得た。
 これで、行き来が簡単になったわけだ。
「……次は『移動基地』の奪還か」
 仁は『オノゴロ島』の海岸で、海を見つめながら風に吹かれていた。
 空はどこまでも青く、海は遙かに広がっていた。
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