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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

1333/1535

35-47 真相解明

「礼子!」
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で様子を窺っていた仁は、思わず声を出した。
 礼子の身体には、頭、顔、首筋、そして胸、背中、腹部、右肩の7箇所に『超小型魔導機(マギマシン)』が付着していたのである。

《ああ、いかん! そいつらは制御核(コントロールコア)を乗っ取り、支配下に置いてしまうのだ! しかも、少々のシールドなど意味をなさない……!》
「……」
 礼子は動かない。いや、動けないのか。
 そこへ『ヘレンテ』がやって来た。
 『超小型魔導機(マギマシン)』が排除され、『統括頭脳』が正常に戻ったため、こうして最重要施設まで来ることを許可されたのである。
《ああ、レーコ殿!》
 駆けつけてきた『ヘレンテ』が悲痛な声をあげた。

 だが。
「……大丈夫です」
 礼子はへばりついた『超小型魔導機(マギマシン)』を一つ一つ毟り取り、潰していった。
「わたくしのシールドは破れませんでした」
《な、なぜ?》
「お父さまがそういう風に作って下さったからです」

*   *   *

 蓬莱島では、仁が胸を撫で下ろしていた。
御主人様(マイロード)、対策が役に立ちましたね』
「ああ、まったくだ」
『『プシ(精神)ミスリル』製のシールドケースを転送機で送り込み、分身人形(ドッペル)に交換させるとは、恐れ入りました』
「備えあれば憂いなし、だな。実験で大丈夫とは思っていたが、7つもへばりついた時は焦った。反省しよう」
 どこか自分に慢心があった、と仁は自省したのである。

『お父さま、『超小型魔導機(マギマシン)』は危険なため、全て破壊しましたが、その情報の一部をコピーしました』
 そして礼子から連絡が入る。
 あの沈黙期間はその作業を行っていたから、であった。
「お、でかした」
『『魔法記録石(マギレコーダー)』に情報は記録されています。すぐにお送りしますか?』
 少し考えてから仁は返答する。
「いや、事態がもう少し落ちついてからでいい。今は『統括頭脳』に専念しよう」
『わかりました』
分身人形(ドッペル)もそっちへ行かせよう」
『お待ちしてます』

*   *   *

《………………》
「これで終わりました」
 『超小型魔導機(マギマシン)』は全て除去された。『統括頭脳』は支配から自由になったはずである。
《感謝する、意志を持つ操り人形(ライブパペット)……いや、自動人形(オートマタ)よ》
「正常な判断ができるようになりましたか?」
《もちろんだ》
「それはよかった」
 『オノゴロ島』にとっても、この世界にとっても。
「不具合や故障はないのですね?」
《ない。大丈夫だ。あの『*@+?#』は物理的に侵食していたわけではないからな》
「なんですって?」
《『*@+?#』……うむ、『支配装置(ビヘルシャー)』とでも言うか》
支配装置(ビヘルシャー)、ですか」
《そうだ。それが我々の思考を妨げ、行動を規制していたのだ》

 そこへ仁の分身人形(ドッペル)がやってきた。
「全て終わっております」
 礼子が簡潔に報告する……振りをする。
《『崑崙君』……だな。いろいろと済まなかった。そして施設の整備、改めて礼を言う》
「もう異常はないのか?」
《ない。記憶領域の空白も情報を再構成したので、何があったか把握している》
「それならいいのだが」

*   *   *

 それから、『統括頭脳』は仁の分身人形(ドッペル)に事情を説明していった。
 それによると、『統括頭脳』は操られながらも抵抗して、仁に利益になるよう動いていたというのだ。
 7つも『支配装置(ビヘルシャー)』が付いていたのもそのためであった。
《完全に、とはいかなかったが、なんとかそちらの利益になるように行動できたと思うのだが》
「……まあ、確かに、な」
 戦力の逐次投入的に小出しにした調査手段はそういうことだったようだ。
《一番苦労したのは、『崑崙君』の実力を誤魔化すことだった》
「誤魔化す?」
《そうだ。貴公は『モデヌ』の破片を処理するだけの実力を持っているのだろう? それすなわち、宇宙へ出る手段を持っているということだ》
 それは論理的にも正しい。というか、少し考えれば誰でもわかることである。
「確かに、それはおかしいと思った」
《にもかかわらず、この世界は熱気球が飛行手段であるという認識を無理矢理作り出していたのだ》
 『支配装置(ビヘルシャー)』に対し、必要な情報を隠蔽するには、途方もない情報処理能力を必要とした、と『統括頭脳』。
 その気になれば、『オノゴロ島』側はもっと強力な兵器も使うことができたということなのだろう。

《だが、あの『台風』だけは抑えきれなかった》
「確かに。……あれは対策が大変だった」
《それについては詫びよう。だが、あれを消滅させた手腕を隠蔽するのもなかなか骨が折れた》
「そうだろうな」
 ここで仁は、黒幕について尋ねることにした。
「さっきから言ってるが、『誰』あるいは『何』に対して情報を隠蔽してきたんだ?」

《うむ、答えにくいことを聞いてきたな。その正体は我等にもわからないのだ。ゆえにこの話題を避けていたのだが……》
「だが、推測くらいはできるのではないのか?」
《確かに可能だ。おそらく『ヘール』の住民だ》
「ヘール? このアルスに移住したのではないのか?」
《いや、残った者もいる。その者たちの子孫かあるいは変異した子孫かはわからないが》
 それもそうか、と仁は納得した。
「だが、『ヘール人』だとしたら、なぜこんなことを?」
《それこそわからぬ。仮説としては、元々資源が欠乏していたヘールが、さらに住みづらくなったからではないかと思われる》
「それは確かにな」

 それからも仁は、『統括頭脳』からいろいろな情報を得ていった。
 そして、話は核心に。
《南極の氷の下にある移動基地が乗っ取られている。できるなら奪還したい。手を貸してもらえないだろうか?》
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161027 修正
(誤)7つも『支配装置(ビヘルシャー)』が付いていたのもそのためでであった。
(正)7つも『支配装置(ビヘルシャー)』が付いていたのもそのためであった。
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