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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-46 排除

「わたくしの名は礼子。以後お見知りおきを」
 『統括頭脳』を目にした礼子はそう挨拶をした。
 事ここに至り、礼子が人間でないことを『統括頭脳』はようやく認識したらしい。
 礼子目掛けて電撃が降り注ぐ。
《ここまで来たことは褒めてやろう。だが、これまでだ。黒こげになるがいい》
「嫌です」
《!?》
 平然と電撃を受け止める礼子に、『統括頭脳』は言葉をなくす。
「この程度でわたくしを止められると思わないで下さいね?」
《うぬぬ、それなら、これだ!》
「?」
 礼子の体重が50倍になった。重力魔法だ。
《潰れてしまえ!》
「それも嫌です」
 礼子は重力魔法を使い、50Gを相殺した。
《なんだと!?》
 礼子は早足で『統括頭脳』を目指す。
《ならば!》
 床に魔法陣が輝き、『統括頭脳』と礼子の間に、無骨なゴーレムが姿を現した。
「こんどはそれが相手ですか」
 足を止め、身構える礼子。
《それだけではない!》
 天井から、そして床から、『魔法の腕(マジックハンド)』が数十本生えてきた。
「……なるほど、確かに少し厄介ですね」
 礼子を拘束しようとする『魔法の腕(マジックハンド)』を『桃花』で斬り払う礼子。
 その礼子目掛け、ゴーレムが突っ込んできた。
「!」
 瞬時に体を躱す礼子だったが、床から生えた『魔法の腕(マジックハンド)』に足を取られ、体勢が崩れてしまう。
 そこにゴーレムの蹴りが飛んできた。
「舐めないで下さい!」
 出力を50パーセントまで上げた礼子は、『魔法の腕(マジックハンド)』を瞬時に引きちぎると、ゴーレムの蹴り足を左手で受け止めた。
 同時に、右手の『桃花』を下から切り上げる。
 だが、ゴーレムはその見かけによらず素早く身を躱した。
《何という奴だ……》
 『統括頭脳』の呆れたような声が響く。
 今や、礼子は床と天井の『魔法の腕(マジックハンド)』を全て斬り払ってしまっていた。
「これですっきりしました」
 床に散らばる切り落とされた『魔法の腕(マジックハンド)』を蹴って部屋の片隅に押しやる礼子を、再びゴーレムが襲う。
 礼子は『桃花』でそれを迎え撃つ。
 と、その斬撃が何と防がれたではないか。
「……バックラー、ですか」
 ゴーレムの左腕に取り付けられた小さなバックラーが『桃花』の斬撃を防いだのだ。
「なかなか硬いですね」
 だが、礼子の目は、そのバックラーに傷が付いているのを見逃さなかった。
「お父さまの開発したハイパーアダマンタイトよりは弱いということですね!」
 さらに斬り付けると、その傷が増えていく。
《うぬ、強化したアダマンタイトよりも硬いというのか!》
 そしてついに、そのバックラーが真っ二つになった。
《恐るべし、『崑崙君』。だが、これはどうだ!》
「!!」
 自由魔力素(エーテル)の大波が礼子とゴーレムを襲った。
 ゴーレムはびくんと震え、動きを止めた。そしてゆっくりと床へ倒れ込む。
《どうだ。1000倍の濃度の自由魔力素(エーテル)の味は。魔素変換器(エーテルコンバーター)が耐えられまい?》
「……っ」

 今の攻撃は、礼子にとって、いや仁にとっても予想外であった。
 自由魔力素(エーテル)を減らす攻撃は対策していたが、増やされることまでは想像していなかったのだ。
 通常の1000倍という濃度に曝された魔法素材が軋みをあげ、弱いものは破裂する。
 『統括頭脳』が差し向けたゴーレムも例外ではなく、その魔素変換器(エーテルコンバーター)は砕け散り、2度と起き上がれなくなっている。
 そして、礼子も。

 ……の、はずだった。
 『統括頭脳』の目の前にいる少女型の『何か』は、平然と……少なくとも、見かけ上は平然と動いていた。
「……今の攻撃は危なかったですね」
 厳選した素材で、仁が精魂込めて作り上げた愛娘、礼子の身体は、魔力反応炉(マギリアクター)は、1000倍の自由魔力素(エーテル)濃度にも耐え抜いた。
《お、お前は、いったい何者だ……》
「わたくしの名は礼子。自動人形(オートマタ)です」
 礼子は『桃花』を右手に持ったまま、『統括頭脳』へと歩みを進める。
《く、来るな!》
 あと5メートルほどの距離まで近付いた時、礼子と『統括頭脳』の間の空気が揺らめいた。
障壁(バリア)……ですか」
《そうだ。隕石の直撃にも耐えられる強度がある。これは破れまい!!》
「確かに面倒ですね。でも、方法は幾つかありますよ」
 礼子は腕輪の力を使うことにした。
「『光束(レーザー)』」
 可視光線が透過しているなら使えるはずと、まずはレーザーの試し撃ちだ。
 その光線は『統括頭脳』の半球ドーム横に小さな穴を穿った。
《な……!》
「やはりやりようはありますね」
 この他にも、床下から穴を掘って、という手もあるはずだ。
 物理障壁を物質内に展開できるとは思えないから。

《うぬぬ……これが『崑崙君』の力か……》
「もう、諦めて下さい」
《そうはいかん!》
 部屋の温度が急激に上がり始める。
《鋼鉄が溶ける温度に耐えられるか!》
「ぬるいですね」
《な、なぜだあああああ!》
 礼子の服や髪に使われている地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸は鋼鉄よりも融点が高い。
 そして。
「『超冷却(アブソリュートゼロ)』」
 一瞬に冷却された部屋に、無数のヒビが入る。
《ああああ……》
「もう諦めなさい。『電磁誘導(インダクション)』」
 礼子は、電磁誘導による発熱で『統括頭脳』周辺を過熱させていく。
 そして、数十秒後、発生装置が脱落したとみえ、障壁(バリア)が消えた。
《もう、駄目だ……》
 礼子と『統括頭脳』を隔てるものは何もない。
「では、排除しましょう」
 礼子は、半球状のドームにへばりついた『超小型魔導機(マギマシン)』を、むしり取っていったのである。

 6つを毟り取り、7つ目に手を掛けた時。
《駄目だ! そいつは、貴殿を侵食する!》
 その直後、7つの『超小型魔導機(マギマシン)』は全て礼子の身体にへばりついたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161026 修正
(誤)魔法のマジックハンド
(正)魔法の腕(マジックハンド)
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