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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-44 計画進行

《まずはこれだ》
 『ヘレンテ』は、仁を上級施設へと連れて行った。
「これは……結界の発生器か?」
《そのとおりだ》
「ふんふん、原理は変わっていないか。だけど、魔力を同期させる方法が……ああ、なるほど」
 過去の超技術を整備しつつ、それを己のものにしていく仁。
 やり方こそ違えど、先代魔法工学師マギクラフト・マイスター、アドリアナ・バルボラ・ツェツィが、魔族領で技術を底上げした時のようでもある。
《次はこれだ》
 仁が彼等の技術を会得することをどう思っているのか、『ヘレンテ』は淡々とその業務——仁に上級施設の整備をさせること——をこなしている。

「ふんふん、ここの魔法制御の流れ(マギシークエンス)は参考になるな……」
 これぞ魔法工学師マギクラフト・マイスターの本領発揮、といわんばかりの作業風景である。
「この魔導式(マギフォーミュラ)は知らなかったな……」
「ああ、ここは先代が使っていたやり方の方がよさそうだ」
「お、これはいいな」
「ふむふむ、魔導回路(マギサーキット)をこう使うのか。発想は面白いな」
 独り言を呟きながら、次から次へと整備を進めて行く姿は、はっきり言って少々不気味だが、『ヘレンテ』は何も気にせず、その様子を見つめている。
 当然、この場面は仁自らが分身人形(ドッペル)を操っている。
「これでよし、と。終わったぞ」
《うむ、驚いたな。2時間で終わらせてしまうとは》
「次は?」
《こっちだ》
 『ヘレンテ』は隣の部屋へと仁をいざなった。

*   *   *

「うんうん、有り難いな。奴らの技術を学ぶチャンスだ」
『『ヘレンテ』も気を利かせてくれているようですね』
 老君も、仁の分身人形(ドッペル)が送ってくる視覚情報を記録している。
 後で編集し、ドキュメンタリーにでもするつもりのようだ。
「……俺の独り言はカットしてくれよ」
『善処します』

*   *   *

 そして11月10日。
《『崑崙君』、これから行く施設で終わりだ》
「わかった」
 そして開けられた扉、その中にあったものを見て仁は驚愕する。
 それは巨大な金属製の半球だった。
「な、これは!?」
《ここの施設全体を維持管理する魔導頭脳、『管理頭脳』だ》
「『統括頭脳』とは違うのか?」
《違う。この魔導頭脳には意志がない》
「なるほど」
 仁は少し警戒しつつ、『管理頭脳』に近付いていく。
「『分析(アナライズ)』」
 少し離れた場所から工学魔法を使う、
「……『超小型魔導機(マギマシン)』は付いていないか」
 施設内の環境を管理する魔導頭脳なら、『侵食』する価値はあると思った仁である。
(あるいは、『超小型魔導機(マギマシン)』は数が限られているのか)
 そこまではわからない。
「では、これを整備すればいいのか?」
《そうだ》
 早速、仁の分身人形(ドッペル)は作業を開始した。
「ふうん、温度、湿度、それに空気中の硫化物も管理できるのか」
 そのわりに、今まで見てきたゴーレムや魔導具の保存状態はよくなかった、と仁は思う。
 だが、その理由も整備が進むにつれ明らかになる。
「ああ、ここがいかれているのか」
 幾つかある空気を吸い込む部分の1つが詰まっていた。
「ここは……空気中の不要要素をモニタする部分か」
 これでは、空気中の硫化物や粉塵が増えても、それを減らそうとは働かないわけだ。
 仁の分身人形(ドッペル)も礼子も呼吸を必要としないから平気だが、ここの空気はかなり澱んでいるのだ。
 こんな重要な設備を、どうして1系統しか作らなかったのか、理解に苦しむところではある。
 が、こんな地下施設に住む者はいないか、いても少ないだろうし、アルスの大気は元々澄んでいたから、あまり気を使わなかったのかもしれない、と思い直す。
「空気清浄機能を強化しておくとするか」
 いずれ仁本人が訪れることも想定し、ここの環境を整える機能は入念に整備し、強化しておく。
「これで、よし」
 1時間ほどで作業は終了した。
《ご苦労だった、『崑崙君』。これで仕事は終わりだ》
 『ヘレンテ』がそんなことを言いだした。
「何?」
 まだ、少なくとも『統括頭脳』は別にしても、『エーテル転送装置』と『エーテル凝縮器』が残っているはず、と仁は思った。
《何が言いたいかはわかる。だが、『統括頭脳』はこれでいいと言っているのだ》
「そうか……」
 警戒されているのか、それとも最重要機機はさすがに専用の整備要員がいるのか。
 ここへ来て、最終段階でつまずいてしまった。

「さて、どうするか」
 一旦仁の分身人形(ドッペル)は与えられた部屋へと戻った。
 礼子は戻って来ていないが、魔素通信機(マナカム)で連絡は取り合っているので問題はない。
 まだ礼子がその力を行使する時ではないのだ。
 そこへ『ヘレンテ』がやって来た。
《『崑崙君』、すまぬな》
自由魔力素(エーテル)関連の施設はともかくとして、『統括頭脳』の整備はできないものか?」
 『統括頭脳』に『超小型魔導機(マギマシン)』が付着していたなら、それを排除しないとならない、と考える仁であった。
《うむ。それは確かに気になっているし、間違いなく邪悪なものであるから、可能なら排除したいのだが……》
 『ヘレンテ』は、その設定上、『統括頭脳』に逆らうことはできないとのことであった。
《ただし、その利益になることは行うことができるので、こうした会話は問題ないのだ。だが、実際に行動することは無理だ》
 なかなか難しい立場であるようだ。
「そうすると……」
 ここで仁の分身人形(ドッペル)は、その制御を仁本人から老君へと変更した。
「そうすると、『ヘレンテ』の力を借りずに、『統括頭脳』を害することなく確認し、『超小型魔導機(マギマシン)』が付着していたならそれを除去し、正常な機能に戻さなければならないということか」
《そのとおりだ》
 老君が使った言い回しであれば、『ヘレンテ』は問題なく聞き流してくれる。
 これが、
『『統括頭脳』の不意を突いて襲い、『超小型魔導機(マギマシン)』を除去する』
 などという言い方をしたら、『ヘレンテ』がどんな反応をしたことか。
「『統括頭脳』を正常に戻すためだ。直接とは言わない。間接的でいいから協力してくれ」
《わかった。できる範囲でなら協力する》
「それではまず、『統括頭脳』の所へ行くにはどうすればいいか、教えてくれ」
《それには……》
 こうして、老君操る仁の分身人形(ドッペル)は、必要な情報を『ヘレンテ』から聞き出していったのである。
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