挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

1328/1475

35-42 独りじゃない

 蓬莱島時間で11月9日、『オノゴロ島』では、仁の分身人形(ドッペル)が新たな施設の整備を行っていた。
《見事だな、『崑崙君』》
 監視役という建前の『ヘレンテ』も感心している。
 だが、まだ『エーテル転送機』には至っていない。
《あれは上級施設だからな》
 今任されているのは中級施設とのことだ。
 その中には円盤が5機含まれている。
《この円盤は……いや、もう理解されているな。簡単な任務の時に使うものだ》
 ここで仁は、ふと気が付いたことを聞いてみることにした。
「そういえば、『長周期惑星』……『モデヌ』についてはどんな認識でいるんだ?」
《何者かが何とかしたようだな、くらいだな》
「なんだよ、それ」
《侵食を受けていた際の判断力や価値観は、えらく曖昧というか矛盾だらけになっていたようなのだ》
「ふうん……って、その間の記憶が戻ったのか?」
《戻ったというか、『ヘレンテ’』の記憶も読み取れるようになったということだな》
「そうだったのか」
 記憶を司っている大元の『超小型魔導機(マギマシン)』がなくなったせいか、読み取れるようになったのだろう、と仁は想像した。
《かなり危うい状態だ。というのも、ここの整備がほったらかしなのも、『モデヌ』の脅威に無頓着なのも、全てあの『超小型魔導機(マギマシン)』のせいだ》
 こうなると、『超小型魔導機(マギマシン)』を作った奴は、このアルスが滅ぼうと構わない、むしろ滅んだほうがいい、と思っているとしか考えられない。
「黒幕はいったい誰なんだ……」

 『超小型魔導機(マギマシン)』を分解、解析してみたのだが、そういった情報は一切得られなかったのである。
 単なる子機、という程度だ。
 ただ、その超高精細な技術は、仁のものと同レベル以上であることは間違いない。
「屈することだけはしないぞ」
 仁本人は蓬莱島にいて、『超小型魔導機(マギマシン)』からもっと何か得られないかと解析を続けている。
「こいつからもほんの僅かに『精神触媒』の反応があるな……やはり自由魔力素(エーテル)に働きかけるためか、それとも……」
 そこへエルザがやってくる。
「ジン兄、様子はどう?」
「ああ、エルザか。あまり進展はないな。この『超小型魔導機(マギマシン)』も、特別なことはなかった。『精神触媒』を僅かに使っているくらいで」
「と、いうことは、自由魔力素(エーテル)に働きかけている?」
「うん。あるいは、より『支配』しやすいのかもしれない」
「あ、確かに」
 魔力波は自由魔力素(エーテル)を伝わるがゆえに、『精神触媒』をうまく使えば、より『深く』制御核(コントロールコア)に潜り込めるのではないか、と仁は推測していた。
「だとすると、『隷属書き換え魔法』よりも厄介?」
 仁は少し眉をひそめながら頷いた。
「ああ、その可能性はある」
「ど、どうするの?」
「それをこれから考えようと思っているんだ」
 シールドケースだけでは心許ない。もっと強力なシールド方法が欲しい、と仁は考えていた。
「少なくとも、老君と礼子に施さないと」
 蓬莱島の全戦力を合わせても、おそらく礼子なら何とかしてしまいそうである。
 逆にいえば、礼子が乗っ取られたら止めようがないのだ。
「うーむ……」
 考え込む仁に、エルザが話しかける。
「あ、あのジン兄、考え中悪いけど、話しておくことが、ある」
「……え?」
 仁はエルザの顔を見た。
「ええと、今、シオンさんとマリッカちゃんはカイナ村にいるんだけど、そこでハンナちゃんと一緒になって『エーテル転送』の検討をしてる」
「え?」
「ジン兄が悩んでたことをシオンさんとマリッカちゃんは知ってるから、ハンナちゃんに話した」
「……」
「ジン兄?」
 黙り込んだのを訝しんだエルザが顔を覗き込むと、仁は少し切なげな笑みを浮かべていた。
「ありがたいよな。俺は独りじゃない、って教えてくれる。……マギ・プラスチックだって、サキに相談してもよかったんだよな」
 仁はその生い立ちゆえに、どうしても一人で突っ走る傾向が強い。
 礼子や老君に頼ることは多々あれど、それは『自分』の範疇なのだ。
 他人に頼ることのできなかった半生が、仁の性格を方向付けてしまっていた。
「……そう。だから、ジン兄が忘れかけた時は、私たちが思い出させて、あげる」
 エルザは仁のそばに歩み寄ると、そっとその頭をかき抱いた。
「ありがとう、エルザ」
 仁の耳に伝わるエルザの鼓動が、一人ではないことを教えてくれて、心地よかった。

*   *   *

「目には目を、か」
「何それ?」
 エルザを隣に座らせた仁は、改めて対策を練っていた。
 その過程で、ふと思い浮かんだ言葉。
「ええとな、俺のいた世界での……言葉なんだ」
 いろいろな場面で、いろいろな意味で使われているが、今の仁は、『精神触媒』には『精神触媒』で対抗するしかない、ということを言いたかったのである。
「つまり……」
「『精神触媒』を金属に添加したら、シールド効果は上がるんじゃないのかな?」
「……有り得そう」
御主人様(マイロード)、それはいいアイデアだと思います』
 空気を読んで無言を守っていた老君も賛成した。
巨大百足(ギガントピーダー)由来の『精神触媒』ならまだ沢山ある。実験してみよう」
「レーコちゃんがいないから、私が、手伝う」
「うん、頼むよ」

 こうして仁はエルザと実験を繰り返した。
 その結果、ミスリル銀に0.000001パーセント重量比で添加した配合比が最も効果的であることを突き止めたのは、その日の夜遅くであった。
「1億分の1か」
「『精神触媒』の効果を考えると、そんなもの」
「だなあ」
 以前、エルザの『魔力過多症』を治療した時は、100万分の1グラムの『精神触媒』で済んだのだ。
 体重比で考えると1000億分の1のオーダーだ。その1000倍と考えれば妥当……なのかも、と仁は思った。

「プシ(精神)ミスリル……と名付けるか」
「まず老君のシールドケースをこれで置き換えよう」
『ありがとうございます、御主人様(マイロード)
 礼子は『オノゴロ島』なので、今は交換できない。
「いつでもできるように作っておこう」
 寸法はわかっている。
 仁は『プシミスリル』を使って礼子用のシールドケースを作製したのである。

「ジン兄、いいこと思いついた」
「何だい?」
「あのね……」
「ああ、そうか。それはいいな。早速やってみよう」
 仁とエルザは何やら相談し、笑い合ったのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ