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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-41 マギ・プラスチック

「さて、ここまでは順調だったわけだが」
 蓬莱島にて、仁は独りごちた。
『はい、御主人様(マイロード)。『統括頭脳』の反応は『ヘレンテ』が予測したとおりでしたね』
「ああ。問題は明日以降か」
『そうなりますね。できれば『エーテル転送機』などの重要機器のメンテを命じられるといいのですが』
 それは仁も思っていることだ。
 今のところ、重要機器に触れる機会はまだない。
「まずは休んでおくか」
 『オノゴロ島』と『蓬莱島』は正反対の位置にあるため、昼夜が完全に逆転している。
 『ヘレンテ』たちは昼夜の区別無く活動しているとはいっても、一応時刻という観念は持っているようで、仁の分身人形(ドッペル)は『夜』に休憩時間を貰っている。
 ゆえに仁は昼寝をして夜に備えているわけだ。

*   *   *

「さて、そろそろか」
《おお、ジン殿、頼む》
 仁の分身人形(ドッペル)がベッドから身を起こすとほぼ時を同じくして『ヘレンテ』が顔を出した。
《今日整備をしてもらうのはゴーレムたちだ》
「この前の『守護神(ガーディアン)』か?」
《それも含む。戦闘用、警備用、そして保守用だ》
「保守用? 整備要員ということか?」
《そうなるな》
「そうか……」
 仁は少し残念に思った。整備要員が復活すれば、頭脳の整備はそちらが任されることになる可能性が高い。
 それでも、今の仁に断る選択肢はないし、ゴーレムの解析ができるというメリットもあった。
《こちらだ》
 ヘレンテに案内され、仁の分身人形(ドッペル)はゴーレムの格納庫へと足を踏み入れた。
「おお……」
 思わず声が出る。そこに並んでいたのは、見覚えのある『守護神(ガーディアン)』をはじめ、100体ほどのゴーレム。
《できるだけ早く済ませてほしい。資材倉庫は隣の部屋だ。足りないものはないと思う》
「わかった」
 最も気になっているのは、ここのゴーレムが『超小型魔導機(マギマシン)』による侵食を受けているか否か、である。
 それについては整備していけばわかるだろう。
 仁の分身人形(ドッペル)は、礼子と共に整備を開始した。
《おお、早いな》
 仁の2割程度の実力を出せば十分。
 ゴーレムの大半は『錆び』ているだけであった。
「『還元ディオキシダイゼイション』」
 酸化膜の除去には還元の工学魔法で対応。摺動部には、
「『表面処理(サフ・トリートメント)』」
 と表面処理により摩擦抵抗を減らしたりもした。

「筋肉組織は合成物質か」
 仁が知らない材質である。『ヘレンテ』とも異なるようだ。
 そのことを『監視』している『ヘレンテ』に言うと、
《『守護神(ガーディアン)』は私よりも強力だからな》
 という言葉が返ってきた。
「以前、ショウロ皇国に派遣された自動人形(オートマタ)はどうなんだ?」
 これに関しては、
《それなら、1つ置いた隣の部屋にある。このあと整備を頼む予定だ》
 との答えが返ってきた。
「わかった」
 一通り整備を行い、解析してしまうまで、余計な質問はするまい、と仁の分身人形(ドッペル)は作業に専念することにしたのである。

 その結果、100体のゴーレムの整備は半日かかり、残る半日で自動人形(オートマタ)の整備を行うことになった。
 本体である仁が分身人形(ドッペル)を操縦したのはその5分の1くらいで、残りは老君が操縦して行ったのであるが。
 それでも、得るものは多かった。
 第一に、ここのゴーレム・自動人形(オートマタ)は侵食されてはいなかったのである。

「まずはほっとしたな」
『そうですね、御主人様(マイロード)。残るは『統括頭脳』だけということになります』

 第二に、保守ゴーレムに、こっそりとモニタ装置一式、つまり『魔素通信機(マナカム)』と『魔導監視眼(マジックアイ)』を取り付けておいたのである。
 これで、仁が重要機器の整備を任せられなかった場合でもその内容を知ることができる。
 第三は、『オノゴロ島』方式のゴーレム技術を知ることができたこと。
 この点に関しては、仁の方が進んでいるようだったが、合成物質から筋肉や自動人形(オートマタ)の皮膚を作っていたこと、その材質を特定することができたことは収穫であった。

*   *   *

「マギ・プラスチック、とでも名付けるか」
 名称がなかったので仁は自分で名付けた。
『それはいいですね、御主人様(マイロード)
 マギ・プラスチックは、地球でいうプラスチック同様、高分子である。ただ、それに含まれる原子が魔力同位元素(マギアイソトープ)であるだけだ。
 仁もさすがにプラスチック類の化学構造式は知らなかったのである。
 ただ、エチレン C2H4 と、それから作られるポリエチレンくらいは高校化学で習い憶えており、『マギ・ポリエチレン』だけは仁も理解することができたのである。

 だが問題もある。
「しかし魔力同位元素(マギアイソトープ)の炭素Cと水素Hをどこから持ってくるんだろうな」
 原料の調達が謎であった。
 『オノゴロ島』での作業は分身人形(ドッペル)に任せ、仁は蓬莱島でこの問題に取り組んでいた。
御主人様(マイロード)、天然の魔導樹脂(マギレジン)ではないでしょうか』
 老君からの助言。
「ああ、それだ!」
 魔導樹脂(マギレジン)は、言うなれば魔力を帯びた松ヤニである。化学構造もほぼ同じ。
 とはいえ、仁は松ヤニの化学構造式までは知らないため、『分析(アナライズ)』をしても、含まれる炭素C、酸素O、水素Hの比率までしかわからなかったのだ。

 だが、そこまでわかれば、魔力同位元素(マギアイソトープ)である炭素Cや水素Hを『抽出(エクストラクション)』することはできる。
 抽出と同時に『化合(コンバイン)』させることでエチレンガスを作ることまではできるようになった。
 この『化合(コンバイン)』は仁オリジナルの工学魔法で、『結晶化(クリスタリゼーション)』と『構造変形(ストランスフォーム)』の応用であった。

「あと少しでエチレンからポリエチレンが作れそうなんだがな……」
御主人様(マイロード)、今は無理をなさらず、『オノゴロ島』の問題に集中なさって下さい』
 ムキになる仁を、珍しく老君がたしなめた。
「それもそうだな。今日のところは休んでおこう」
『はい、そうなさってください』

*   *   *

 『オノゴロ島』では。
《ふむ。『崑崙君』の能力は高いな》
《はい。ゴーレム、意志を持つ操り人形(ライブパペット)、それに低級施設の整備は問題なく行えます》
《中級施設の整備をさせるかどうか、だな》
《私は任せてよいと思います》
《そうだな。こちらの機密を少々知られたとしても、ここから帰さなければよいのだから》
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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