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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-38 命令者

 パスワードも使わないうちに、いきなり『ヘレンテ』に頭を下げられ、慌てたのはシオンとマリッカである。
「え、え、え!?」
「な、なんなんですか!?」
《……その魔力波は『主人』と同じもの……》
 頭を下げたまま『ヘレンテ』が言う。
 網とロープで絡め捕られたままなので、非常にシュールだ。
「え、ええと」
《お名前を教えていただけますか》
「わ、私ですか!?」
 『ヘレンテ』はマリッカを見つめて言った。
《はい》
「マ、マリッカでしゅ」
《マリッカ様、ですね。ご指示をお待ちしております》
「わ、私の!?」
《はい》
 『ヘレンテ』が敬意を表したのはマリッカであったのだ。
「え、ええと、私が、あなたの、『主人』という人に似てるんですか?」
《はい》
「ど、どういうところが?」
《魔力波に共通項があります。その共通項により、あなたを『命令者』のお1人として認識いたしました》
「『命令者』の1人、ですか」
《はい》

「……」
 横でそのやり取りを聞いていた仁は、この状況を分析していた。
 やはり魔族は始祖(オリジン)の血を色濃く受け継いでいるのだ、と。
 そして、『ヘレンテ』等、従者ゴーレムは、魔力波による個人識別をしている。
 この『ヘレンテ』の場合は、その魔力波から何か特徴を掴んで判断しているということだろう。

 ここで重要なのは『『命令者』の1人』であって『命令者』ではないということ。
 『オノゴロ島』で『ヘレンテ』に命令をしている者あるいはしていた者もその『命令者』の1人なのだろう。
 この『命令者』の1人、という立場は、『ヘレンテ』にどこまでさせることができるのか。
 仁はマリッカを『ヘレンテ』から離れたところまで呼び出した。

「な、なんですか、ジン様」
「『命令者』の1人であるマリッカにしか頼めないことだ」
「はい」
「『ヘレンテ』の制御核(コントロールコア)を見せてもらえるように頼んでほしい」
制御核(コントロールコア)を……ですか?」
 仁は頷き、詳しい説明を始めた。
「記憶領域におかしな部分があって、それを自身が気付かないとすれば、制御核(コントロールコア)を真っ先に疑う必要がある。もしかしたら故障しているのかもしれない」
「あ、なるほどです」
「俺がそれを告げても、『ヘレンテ』が聞くはずはないから、マリッカに頼みたいんだ」
「わ、わかりました。やってみます」
 マリッカが納得したところで、2人はヘレンテのそばへと戻った。
「『ヘレンテ』さん」
《はい》
「あ、あなたの制御核(コントロールコア)の確認をさせてもらえませんか」
《その場合には『パスワード』が必要になります》
「え、ええと、『アブ・オーウォー・ウスクェ・アド・マーラ』。……でいいでしょうか?」
《わかりました》
 思った以上にあっさりとOKが出た。
《しかし、余人に任せるのはお断り致します。マリッカ様ご自身が行われるなら、認めます》
「……」
 マリッカは仁の顔をチラと見る。仁は頷いた。
「わ、わかりました。ええと……」
 マリッカは、工学魔法を覚えたあと、『森羅』氏族に伝わるゴーレムを一通りは調べたことがあった。
 それと同じである前提で作業を進めることにする。
「それでは……開けますが、停止はさせなくていいでしゅ……すか?」
《このままで頼みます》
「わかりました……『開け(オープン)』」
(ほう)
 後ろで見ていた仁は、マリッカの成長ぶりに感心していた。
 魔族領で教え始めた時に比べ、その手際は数段上達している。
 『モヒカン』風の突起が付いた頭頂部が開いた。
(なるほど、あれは頭頂部の保護と強度アップに役立っているんだな。先代が同型のゴーレムを見たとしたら、どう思っただろうか……)
 仁は少し考え込んだ。
「あれ……」
《どうかしましたか?》
「これ……制御核(コントロールコア)ですよね? ジン様」
「ん?」
 怪訝そうな顔で、マリッカが仁を振り返った。
 考えごとをしていた仁は顔を上げ、マリッカが指し示す物を見た。
「あ? 何だ、これ?」
《どうかしたのか?》
制御核(コントロールコア)に変な物がくっついているようなんで……す」
 マリッカが『ヘレンテ』に説明している。
「マリッカ、ほら、これ使いなさい」
 そしてシオンもやはり女の子、ポケットから手鏡を出し、マリッカに渡した。
 マリッカは『ヘレンテ」に見えるようにそれを掲げる。
《な? なんだこれは……!!》
 突然『ヘレンテ』がもがき始めた。
「い、いったいどうしたんでしょう!?」
「マリッカ、離れていろ」
 仁はマリッカを下がらせると、礼子に『魔法無効器(マジックキャンセラー)』を使うよう指示を出した。
「はい、お父さま」
 礼子の腕輪から放たれた『魔法無効器(マジックキャンセラー)』の波動を受け、『ヘレンテ』は動きを止める。
 そうして改めて仁は『ヘレンテ』の制御核(コントロールコア)を見つめた。
「あれ? これ……どこかで?」
「お父さま、これは『覗き見望遠鏡(ピーパー)』で見た『メガフロート』の魔導頭脳にくっついていた奴に似ています」
「ああ、そうか」
 こっちのほうがずっと小さいが、どす黒いできもののような突起が制御核(コントロールコア)にへばりついていた。
「十中八九、こいつのせいだな。取り外してみよう」
「お父さま、わたくしが」
「そうか。礼子、気を付けろよ」
「はい」
 危険があってはいけないと、仁の代わりに礼子が手を伸ばし、その突起を摘んだ。
「……軟らかいです」
「へえ?」
 『触覚』を備えた礼子ならではの反応である。
 『おでき』は、見た目と違い、硬くはなかったようだ。
「外してみます」
 礼子は突起を引き剥がした。
お知らせ
 2016/10/18(火)早朝から夕方まで外出となりますのでその間レスできません。御了承ください。


 いつもお読みいただきありがとうございます。
『アブ・オーウォー・ウスクェ・アド・マーラ』はラテン語で最初から最後まで、という意味らしいです。
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