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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-37 ヘレンテ’

「『宝物庫』……ということは」
「ええ、先代『魔法工学師マギクラフト・マイスター』、アドリアナ様もご覧になって、いろいろ直して下さった、あそこよ」
「うーん……」
 仁は考え込む。
「……間違いないのか?」
「間違いないわ。マリッカもそうだと言ってるし」
「断定するには何か理由があるんだろう? 特徴とか」
 仁はシオンとマリッカを交互に見つめた。
「あるわ」
「それは!?」
「あの頭の形状よ」
「え?」
 仁はもう一度、画面内の『ヘレンテ』を見つめた。
 その頭部には、仁のイメージによると『モヒカン』を思わせる突起が付いている。
 が、これは騎士の兜にもみられるデザインであるため、仁としては気にも止めていなかったのだ。
御主人様(マイロード)、お2人の仰るとおりです』
 そこへ老君が、2人の意見を肯定した。
「何?」
『補足いたしますと、まずこの世界のゴーレムで、御主人様(マイロード)がお作りになるような、人間に近いシルエットを持つゴーレムは存在しません』
「そうなのか?」
 仁自身はそういう意識をしていたわけではないが、言われてみるとそんな気がしてきた。

 ゴン、ゲンの元となったゴーレム。
 黒騎士。
 統一党(ユニファイラー)のゴーレム。

「そうかもしれないな……」
 ごつい体格か、鎧を着ているような外観のものばかりである。
 だからこそ、仁が作ったゴーレムは『自動人形(オートマタ)のよう』と評されるのだ。

『そしてお2人が仰っている、あの頭部の飾り。この世界のゴーレムで、あのようなデザインのものはおりません』
「そうなるか……」
『はい。『兜』としてならああいったデザインはありますが』
「なるほど……」
 仁はもう一度、そのつもりで『ヘレンテ』を見た。
「確かに、人間を模したゴーレムにモヒカンは付けないか……」
 仁自身は、割合見慣れたデザインだと思っていたのだが、言われてみれば納得がいく。
「だとすると、どういうことになるんだ?」
『『ヘレンテ』が始祖(オリジン)によって作られたものである、という公算が高くなったということですね』
「まあそうなるな」
「ね、わかった?」
 仁と老君のやり取りを聞いていたシオンが胸を反らした。
「わかった。だからどうということもないと思うけど」
「う、そうなんだけど。でも、あたしたちだって気になっているのよ!」
「それはわかるが……」
 そこに老君から報告が入った。
御主人様(マイロード)、解析結果が出ました』
「シオン、マリッカ、ちょっと待っててくれ。……老君、それで?」
『はい。やはり、『ヘレンテ』の記憶には欠落があり、そのために記憶情報の連続性が途切れています』
「原因は?」
『直接の原因はわかりませんが、受け取った魔結晶(マギクリスタル)には、おかしな情報領域が存在しています』
「どんな?」
『適切な用語がないので、説明は難しいですが、御主人様(マイロード)の知る用語で例えますと、『ヘレンテの記憶フォルダ』の中に、『ヘレンテ’の記憶フォルダ』があるようなものです』
「その『ヘレンテ’の記憶フォルダ』の中身は?」
『読めませんでした。私の知る限りの言語ではないようです。解析にはかなり時間が掛かりそうです』
「そうか……」
 言語体系が異なる上、データ化する上で何らかの処理をしているとすれば、老君の解析能力を以てしても時間が掛かるのは仕方ない、と仁は思考を切り替える。

「ねえジン、その『ヘレンテ』と会って話せないかしら?」
「どうするんだ?」
「ええとね、『森羅』の氏族に伝わるゴーレムと同じだとしたら、少しは役に立てるかもしれないと思って」
「どういうことだ?」
 シオンの言葉に首を傾げる仁。
「ゴーレムへの『パスワード』があるのよ」
「パスワードか……」
 主人を決めたり、命令の優先権をはっきりさせるためにそういうものがあっても不思議ではない。
 が、『ヘレンテ』に対して有効かどうかは定かではない。いや、むしろ効かない可能性が高い。
 それでもシオンがこう言い出したのは、少しでも役に立ちたいという想いと……好奇心からであった。
「そうだなあ、今の状態なら危険もあまりないか」
 加えて『仲間の腕輪』により『障壁(バリア)』も張れる。
 仁も行こうと思っていたので礼子も一緒だ。
「じゃあ行ってみるか」
「うん、ありがとう、ジン」
 仁は準備を整え、シオンとマリッカ、そして礼子を伴い、二堂城へと移動した。

*   *   *

「……老君も心配性だな……いや、それだけ俺のことを思ってくれているんだな」
 驚いたことに、仁が『ヘレンテ』の所へ行くと、そこにはカイナ村守護のランド隊A〜Zのうち、E以下が勢揃いしていたのである。
「はい。A〜Dはカイナ村の警備にあたっています」
「……ご苦労」
 そして仁は、少し離れたところから声をかけた。
「『ヘレンテ』、俺がジン・ニドーだ」
《ほう、貴殿が。会いたかったぞ》
「会ってどうする……と聞きたいところだが、先に伝えておこう。さっき受け取ったあんたの記憶情報だが、やはりおかしな部分があったぞ」
《なんと!》
 仁は手短に……というよりも、説明のしようがないのだが……『ヘレンテ’の記憶フォルダ』のことを話した。
《ううむ、私の中にそんなものが》
「何か心当たりはないのか?」
《ない。そんな非効率的な真似を自ら好んでするはずがない》
「それはそうだがな……」
 仁もそれ以上のことは聞けない。
《だが、『ヘレンテ’』か……》
「概念としては『別人格』ではないかと思うんだが」
《だが、そんな機能は私にはないはずだ》
「そうか……」
 そこで仁は、とりあえず話を変えることにした。
「話は違うが、あんたを見てみたいという者がいるんだがな」
《ほう?》
「あんたが俺を捜していたように、あんたを見てみたいんだろう。呼んでもいいか?」
《別に、私に許可を取る必要はないぞ》
「とはいってもな、また暴れ出したら危険だしな」
《むう……》
「まあ、いい。呼ぶぞ。……シオン、マリッカ」
 仁が呼ぶと、物陰から2人が顔を出した。
「いいの? ジン」
「え、ええと、こんにちは?」
 2人は『ヘレンテ』から3メートルくらいの距離を置いて立ち止まった。
 すると、『ヘレンテ』の様子がおかしくなる。
《……………………》
 が、暴れ出すというのではなく、言うなれば呆然とする、といった雰囲気。
 そして、
《あなたは……》
 いきなり頭を下げたのである。
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