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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

1319/1534

35-33 転回点

「……『崑崙君』についての情報を持っているというのは本当ですか?」
 その者は、レグルス2通称ライバーが何気なく口にした一言を聞きつけ、近寄ってきた。
 因みにその言葉とは、
『崑崙君は野心を持っていないんだってよ』
 というものだ。
(どこまで阿呆なんだか……いや、こうした情報戦に疎いだけか? それにしても……少しおかしい)
 とはいえ、確保すべき男をまんまとおびき出せたのであるからよしとする。

『確保』
 老君からの合図により、ライバー・バーゴ・ファウミの3体は一斉に行動を開始した。
 まずはバーゴが、彼女たち3体と確保すべき男を包み込む魔法障壁(マジックバリア)を張る。
 同時にファウミがエーテルジャマーを起動。エーテルジャマーは、仁と同じ魔力波形以外に自由魔力素(エーテル)が反応しなくなるというものなので、第5列(クインタ)たちには影響がないが、確保すべき男が自動人形(オートマタ)であれば、エネルギー供給が絶たれたことになる。
 そしてライバーが男を拘束する。
「な、何をするのですか!?」
 男は慌てた風を装うが、こうして拘束してしまえばもうどうにもならない。
 地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸で作られたロープの強度は鋼鉄の数倍あり、蓬莱島でも礼子を除けば、簡単に切れる者はいないほど丈夫だ。
 そのロープで身体をぐるぐる巻きに縛り上げられた男は身動きもできなくなった。
「やはり自動人形(オートマタ)だな。『オノゴロ島』の手先か」
「何のことでしょう?」
 人間とは違い、カマをかけられても動揺を見せない男。
 動作が止まらないところを見ると、魔力貯蔵器(マナボンベ)のような補助装置を持っているのだろう。
「まあいい。とにかく詳しく調べてみれば何かわかるだろう」
 ライバーたちは男……『オノゴロ島』の自動人形(オートマタ)を抱え上げ、『不可視化(インビジブル)』で姿を隠しつつ、アルバン郊外へと出た。
 そこには『ペリカン10』が着陸している。
「この中で調べよう」
 そのまま蓬莱島に連れて行くのは危険だと判断した老君が派遣したのである。
 中には職人(スミス)701と702もいて、解析の手筈は整っていた。

*   *   *

《派遣していた手先の1体が制御から外れました》
《ふむ、捕まったか?》
《おそらくは》
《無能だな》
《恐縮です》
《もうよい。今度はお前が赴け》
《私がですか?》
《そうだ》
《どこへ行けばよろしいのでしょう?》
《カイナ村、とか言ったか。『崑崙君』の領地とかいう場所がいいだろう》
《わかりました。そこに『崑崙君』がいない場合は?》
《呼び出せ。村の半分ほどを破壊すれば出て来ざるを得ないだろう》
《住民は?》
《ん? そうか、お前たちには制限が掛かっていたのだな》
《はい》
《仕方ない、建物だけでも示威行動にはなるだろう》
《了解しました》
《よし、行け》

*   *   *

「……やっぱり、何の情報も得られなかったのか」
『はい、御主人様(マイロード)。しかし、技術レベルの裏付けにはなりました。それに……』
「それに?」
 珍しく言い淀んだ老君に問い返す仁。
『行動に論理性・一貫性が欠けているのが気になります』
「……なるほど」
 老君の言ったことは、仁にも理解出来た。
 これまでの『オノゴロ島』から派遣されてきたと思われる自動人形(オートマタ)の行動、あるいは魔導頭脳の指示が、あまりにもお粗末なのだ。
 例えば、仁のことを調べるにしてもあからさますぎる。
 わざと仁たちに捕らえさせて何か情報を得ようという罠があるわけでもない。
 単に手持ちを消耗するだけに見える、お粗末なやり口。
 仁を油断させようとしているにしても、あからさますぎる、と老君は言う。
『論理機能が破綻していると考えると、多少理解できます』
 つまり、子供の思い付きレベル、と老君は解説した。
「うーん、なるほど」
 仁も、老君の言っていることはよくわかる。
 稚拙すぎる『オノゴロ島』のやり方。技術力に比べアンバランスな行動。
「矛盾しているな」
『はい。原因もしくは理由まではわかりませんが、論理思考が不十分な気がします』
「原因……か。それがわかれば、もう少し交渉しやすくなるのかな?」
『わかりかねます』
「だよなあ……」
 それ以上の進展もなく、仁は一旦司令室を出、庭へと出てみた。
 そこには、一足先に出ていたシオンとマリッカが、芝生の上に寝転んで空を眺めているところだった。
「何やってるんだ?」
「……空を見ながら考えてるのよ」
 仁の問いに答えたのはシオン。
「『オノゴロ島』のこと……というか、あいつらがおかしくなってる、ってことを、かな」
「それで、何か思い当たることでも?」
 自分たちとは異なる文化で育ってきたシオン。何か気が付いたことがあれば教えてほしい、と仁は言った。
「うん、もちろん。自信ないけど、あれって『操られている』時の反応に似ていると思わない?」
「……うーん、少し似ているといえば似ている、かな?」
「ジンにはわからないかもしれないけど、『操縦針(アグッハ)』での支配、それが弱い時ってあんな感じになるんじゃないかと思って」
 仁はシオンの洞察力に少し驚いた。
 自分の氏族たちのほんの僅かな違和感を覚えていて、それを他の……あろうことか魔導頭脳に当てはめて考えられる。

 確かに、『洗脳』系の魔法の場合は感情の起伏が大きくなるという副作用を持っていた。
 『操縦針(アグッハ)』の場合は、シオンに言わせると、思考力が落ちるという副作用があるようなのだ。
 仁は、『森羅』氏族の名に恥じないシオンの能力、その一端を見た気がした。

「あの、ジン様」
 そして今度はマリッカが。
「ん、どうかしたか?」
「いえ、その……」
「?」
 煮え切らないマリッカを見かねて、シオンが背中を押した。
「ああもう、マリッカ、はっきり言いなさいよ。工学魔法をもっと教わりたいんでしょ?」
「で、でも、ジン様は今、大変な時でしゅし……」
 慌てて噛むマリッカに、仁は頷いた。
「いいとも。朝から晩まで『オノゴロ島』のことを考えているわけじゃないし、仲間もいるし」
 仁はそう言ってマリッカに微笑みかけたのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161013 修正
(誤)「仁にはわからないかもしれないけど、『操縦針(アグッハ)』での支配、
(正)「ジンにはわからないかもしれないけど、『操縦針(アグッハ)』での支配、
+注意+
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