挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

1318/1535

35-32 間者

「え?」
 仁は、エルザが指差す画面に目をやった、
 南極点から少しずれた場所に、自由魔力素(エーテル)が集中しているのが見て取れる。
「何だ? ここ」
御主人様(マイロード)、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を併用してみます』
「おお、そんな手があったな」

 少しして、魔導投影窓(マジックスクリーン)が明るくなる。
 映し出されたのは氷の塊。南極海に浮かぶ『海氷』だろう。
『巨大な海氷です。差し渡しは2キロ以上』
「それはでかいな。……で、ここに、自由魔力素(エーテル)が集中しているのか?」
『はい。内部を見てみましょう』
 映像が変わる。
「おお!」
「こ、これって」
 仁とエルザが驚きの声を上げた。
 氷の内部は、人工の構造物だったのである。

「これは……『メガフロート』か?」
『そのようです。とはいえ、島ではなく巨大な船舶のようにも見えますが』
 『メガフロート』とは、巨大な人工浮島である。島であるがゆえに船と違って自力航行はできない。
 が、この巨大構造物は自力航行できそうな外見をしていた。
 形状はおおよそ直径2キロの円形。厚みは100メートル程。
「とにかく、こいつに自由魔力素(エーテル)が集中しているのか……」
『アルスの自由魔力素(エーテル)濃度が戻らない原因の一端に間違いなさそうですね』
「だな」
 というのは、外見的に未完成に見えるのだ。つまり未だ建造中ということ。
『建造のため、大量の自由魔力素(エーテル)を必要としているのでしょう』
 こっそり行うため、自由魔力素(エーテル)のほとんどない南極の氷の下に身をひそめて建造している事実。
 そのために、アルスの自由魔力素(エーテル)を半分以上も消費しているのだ。
「いったい何のために?」
『わかりません。これより、内部を調べてみましょう』
 『覗き見望遠鏡(ピーパー)』の視野がさらに内部へと進んでいく。
『このあたりは居住区でしょうか。人間は見あたりませんが』
「建造中というなら、建造している者がいるだろうにな。……まさか?」
『はい、御主人様(マイロード)。働いているのはゴーレムのようです』
 画面に、うごめく小さなものが映った。
「何だこれは……」
 脚が10本生えた芋虫のようなもの。3本脚が生えている球。脚の代わりに車輪が付いている立方体。
 およそ人間とは似ても似つかない形状をしたゴーレムが働いているのである。
「うーん……」
 機能優先というのはわかるのだが、こうまで人間型が見られないと、少々不気味である。
「こいつらを制御しているのはゴーレムか? 魔導頭脳か?」
『はい、おそらく魔導頭脳です』
 老君の回答。
「『メガフロート』の中にあるかな?」
『あると思います。それが一番効率がいいでしょうし、それ以上にあの場所ですから』
「そうだな」
 氷に閉ざされた南極海。自由魔力素(エーテル)もほとんどない地域である。
 統括する魔導頭脳は、自由魔力素(エーテル)を転送されているであろう内部にあると考えるのが妥当だ。
『見つけました。おそらくこれです』
「うん。……え?」
 老君はすぐにそれらしい魔導頭脳を見つけ、画面に映し出した。
 が、仁はそれを見て、違和感が隠せない。
「なんだこれ?」
 その『魔導頭脳』は、奇妙な形をしていたからだ。
 本体、といえばいいのか、おおよその形は球形。頑丈そうな構造物に支えられている。
 が、そこに幾つか、異物がくっついている、という印象を仁は受けたのだ。
「おできみたいだな……」
 球の表面に、半球形のでっぱりが、5つ付着している。
 その箇所は不規則なので、尚更異物感がある。
「規則的にくっついているんなら付属物だと思えるんだがな……」
 その色、というか外見も大きく違う。
 元々の球体は落ちついた銀灰色なのだが、付着している半球は黒色なのだ。
「取り合わせとして悪いとは言わないが……」
 色よりも表面の状態が最も違和感を醸し出している要因かもしれない。
 銀灰色の球体表面は滑らかで凹凸はないのだが、付着している黒い半球は、さらに小さい半球がいくつも飛び出していて、見ようによってはグロテスクでもある。
『後から付与された装置である可能性が高いですね』
 老君も黒い半球をそう評した。
「しかし、目的が分からないというのもすっきりしないな」
 仁は考える。
「やはり『オノゴロ島』に問い質すべきか……」
御主人様(マイロード)、その前に、報告があります』
「うん、どうした? 何かあったのか?」
『はい。『オノゴロ島』の手の者と思われる間者を発見、確保しております』
「何!?」

*   *   *

 時間は前日に遡る。
 クライン王国首都アルバンを担当している第5列(クインタ)、レグルス2通称ライバー。
 その彼が、不審な者を発見した。
 そいつは数日前から、酒場や路地裏の浮浪者、時には犯罪者と思われる者にまで、執拗に『崑崙君』のことを聞いていたのである。
(諜報なら、もう少しうまくやればいいのに)
 とライバーが思ってしまうほど、その者の行動はあからさまだった。
(堂々と聞いて回っていないだけで、すぐに足が付く)
 老君に報告し、その者の正体を探っていたのだが、どうにも掴み所がなく、それなら捕らえてしまえということになったのだ。
 応援に、同じくアルバン担当のスピカ7通称バーゴと、シャルル町担当のデネブ2通称ファウミを呼んだ。

 夕方、シャルル町担当のファウミが到着すると、3体は行動を開始した。
「……あいつだ」
 ターゲットはすぐに発見できた。
 場末の酒場で、酒を奢りながら『崑崙君』に関する噂を聞いていたのだ。
「どうやっておびき出しますか?」
 バーゴが尋ねる。
「老君から聞いたが、奴が『オノゴロ島』の関係なら、荒事はまったくの素人だそうだ。まずは餌を撒いてみよう」
「どうやって?」
「なに、奴が欲しがる情報を持っている、と匂わせれば向こうから出てくるだろうさ」
 ライバーは不敵な笑顔を浮かべた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161012 修正
(旧)「どうやって誘き出しますか?」
(新)「どうやっておびき出しますか?」
(旧)荒事はまったくの素人だそうだ。まずはおびき出してみよう」
(新)荒事はまったくの素人だそうだ。まずは餌を撒いてみよう」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ