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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇(続)

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35-25 追跡

「マーメイド1、マーメイド2、よくやってくれた。礼子、ご苦労さん」
 仁は3体を労う。そして、真っ二つになった結界発生機に目をやった。
「ふうん、やはり魔力貯蔵器(マナボンベ)に似たエネルギー貯蔵部があるな」
 周囲の自由魔力素(エーテル)魔力素(マナ)が利用できなくなるため、こうした貯蔵部を持っているのだろう、と仁は考えた。
 そして、肝心の結界発生原理を調べようとした時。
御主人様(マイロード)、敵襲です』
 老君からの警告が入った。
「何?」
 『コンロン2』の上空には、結界発生機を投下したものと同じ飛行体が3機接近してきていた。
『結界発生機は、おそらく御主人様(マイロード)おびき出すためのエサだったのですね』
 老君の言葉に仁も同意する。
「そのようだな。だが、逆に向こうがのこのこ現れたともいえるぞ」
 唯一不満なのは、今乗っているのが『コンロン3』ではないことだ。

「エドガー、まず南へ全速力だ」
「はい、わかりました」
 ショウロ皇国の上空でバトルを繰り広げるのは避けたいと考えた仁であった。
 まずは飛行船としての最大速度で飛ぶ。弱い北風が吹いているので、おおよそ時速60キロくらいである。『力場発生器フォースジェネレーター』を使えば時速200キロは出せるが、今はまだ抑えている。
 追ってくる3機も大体そのくらいだ。
「もしかすると俺の拠点を見つけようとしているのか?」
『その可能性もありますね。こちらの思う壺ですが』

 トスモ湖から海までは200キロ弱。3時間と少しで『コンロン2』は海上に出た。
 そこで少し速度を落とす。追ってくる3機がはっきりと見えた。
「円盤……だな」
 といっても、UFOのイメージではない。
 浅い皿をひっくり返し、糸尻を上に向けた形と言えばいいか。
 糸尻の部分にいろいろな魔導機器が設置されているようだ。
「『分析(アナライズ)』『追跡(トレース)』……へえ、面白い方式だな」
 仁が調べて見たところ、3機の円盤は、風属性魔法を下から吹かせて本体を浮かせているようだ。
 パラシュートを下からの風で浮かしているというか、まるでフリスビーだ、と仁は思った。
「速度的には『力場発生器フォースジェネレーター』を使った『コンロン2』と同等かもな」
 仁は改めてここからどうするか考える。
「よし、性能比べだ。エドガー、飛行方向は南東。赤道に達したら進路を東に取れ」
「わかりました」
 『コンロン2』は再び時速60キロで飛び始めた。3機の円盤も付かず離れず付いてくる。
「速度アップだ」
「はい」
 まずは風避けの結界を張る。これにより空気抵抗が減り、さらなる速度アップが可能となる。
 『コンロン2』は時速100キロまで増速した。
「……付いて来ているな」
 3機の円盤も時速100キロを出せるようだ。
「よし、高度を上げてみろ」
「はい」
 飛行速度はそのままに、『コンロン2』は高度を上げた。
 今までは高度100メートルくらいだったが、すぐに1000メートルを超え、2000メートル、3000メートルと上昇していく。
「風属性魔法を使っているなら、空気が薄くなれば効率が落ちるはずだ」
 それは仁の『コンロン2』も同じである。
 今や高度は9000メートルを超え、1万メートルに迫っていた。
「『コンロン2』だと1万メートルが限界だな……」
 ヘリウムによる浮力の限界ともいえる。これが『コンロン3』なら、宇宙船仕様になっているので高度の限界はない。
 『コンロン2』の気嚢は低い気圧のためにぱんぱんに膨らんでいた。キャビンは気密構造なので大丈夫だ。
噴射式推進器(ジェットスラスター)の推進力もこの辺が限界だな」
 が、それは円盤も同じだったようで、目に見えて速度と機動性が落ちていた。
「むこうも風属性魔法の限界のようだな」
 原理的には似通った部分があるので、限界も同じ位のところにあるようだ。
「よし、わかった。エドガー、もういい。高度は500メートルに落とせ」
「はい」
「次は……エドガー、南極へ向かえ」
「はい」
 『コンロン2』は、今回の事件に対処するため、魔力貯蔵器(マナボンベ)を積んでいるから、自由魔力素(エーテル)の無い南極でも行動可能だ。
 だが、3機の円盤はどうだろうか? 仁はそこを突くことにした。
 南緯10度、20度……。
 自由魔力素(エーテル)が減っていく。
 『コンロン2』はヘリウムによる浮力で浮かんでいるので、その分の魔力素(マナ)消費はない。これも仁の強みだ。
 南緯30度、40度……。
 アルスの場合、1度はおよそ20キロメートル。10度は200キロとなる。2時間で10度を翔破する計算だ。
 追いかけっこを開始して半日が過ぎようとしており、あたりは夜となり、朝が来た。

「……まだ付いてきているのか」
 10時間以上も付き合う気のない仁は、搭載された転移門(ワープゲート)でとっくに蓬莱島に帰ってきていた。
 今『コンロン2』に乗っているのは操縦士のエドガーと、仁の分身人形(ドッペル)のみ。
 礼子、それにマーメイド1と2も、機体を軽くする意味もあり、一緒に蓬莱島に戻ってきていたのである。
『はい、御主人様(マイロード)。しつこいですね』
「だなあ。……でもまあその時間を利用して、こいつの解析ができたわけだが」
 仁の目の前には2つに断ち割られた『魔法無効化』の結界発生機があった。
「断ち切る際に破壊されたのはごく一部だったし、再構成は可能だったからな」
 これも礼子のおかげ、と仁は呟いた。それを聞いた礼子は笑顔になる。
「ジン兄、説明をお願い」
 解析結果の記録をしていたエルザが仁に頼んできた。
 記録はできても、ところどころで原理が理解できなかったらしい。
「ああ、いいとも。なんといってもまず、この部分だな」
 エルザの手元にある記録を指差す仁。
「ここの魔法制御の流れ(マギシークエンス)は目新しかった。原理としては、想像していたように『魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)』と『魔法無効器(マジックキャンセラー)』、『エーテルジャマー』を併せたものだが、それを一まとめにした魔法制御の流れ(マギシークエンス)で構成されていたんだよ」
 仁は、エルザの記録を指差しながら説明していく。
「ここの魔導式(マギフォーミュラ)だけど、この値を使うことでこっちの処理が早くなるわけだ」
「……あ。その早くなった分をこっちに回して、結果として効率を上げて、いる?」
「そういうことだな」
 仁としても勉強になったので、いい収穫であった。もっとも、使いどころが思いつかないが。

御主人様(マイロード)、ショウロ皇国では混乱が収束したようです。女皇帝陛下が尽力なさったようで』
 老君からも朗報が入った。
「お、そうか。それはよかったな」
 さらに。
『「ジン! おかげで助かったよ。ネオンが止まった時はどうなるかと思った」』
『「ジン、アアルも動き出した。これでご飯の心配しなくて済むよ……」』
 ラインハルトとサキからも連絡が入り、危地は脱したことがわかってジンはほっとした。

『この事態での死傷者はほとんどなかったようです』
「そうか、それは幸いだ」
 仁は改めて『コンロン2』と追いかけっこをしている3機の円盤について注意を戻したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20161005 修正
(旧)『この事態での被害者はほとんどなかったようです』
(新)『この事態での死傷者はほとんどなかったようです』
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