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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

00 プロローグ

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00-03 プロローグ3 旅立ち

「……腹減った」

*   *   *

 魔法工学師マギクラフト・マイスター、アドリアナ・バルボラ・ツェツィの知識、技術を受け継いだ仁であったが、その中には食べ物を無から作り出す魔法は無かった。
 辛うじて、水魔法で水を作り出すことは出来たので、渇き死にすることはなかったが、食べ物がないというのは致命的である。
 服は自分で作った。裁縫スキルを磨いたのは伊達ではない。生地は適当に棚にあったものを使った。
 とりあえず、仁は研究所の中を一通り見て回っていた。知識として知ってはいるのだが、なんというか、参考書か辞書を見ながらという感じで、生きた記憶とはどこか違っている。
 魔法に関しても同じで、一度でも使えば、それ以後は呼吸をするように使えるのだが、使ったことのない魔法は脳内検索に多少時間が掛かるようだ。

 で、話は戻るが、この研究所内に食料の備蓄は無いようなのである。というか、あったとしても1000年前の食料なんて食べたくない。いや、食べられないだろう。
「んー、これをこうして、と」
 その仁が何をやっているかというと、自動人形(オートマタ)の修理、というか再生である。
 役目を果たしてばらばらになった姿は哀れを誘う。元々、孤児の子供たちに人形を作ってやったりしていた仁であるし、壊れた道具や機械を見ると直せるものなら直してやりたいと思う性格をしていた。
「先代はすごいな。ほとんど人間と同じ骨格だ」
 この自動人形(オートマタ)は内部に人間と同じように骨格を持ち、筋肉には魔法繊維(マジカルファイバー)を使い、皮膚は魔法で合成した魔法外皮(マジカルスキン)
 内臓の代わりには魔素変換器(エーテルコンバーター)魔力炉(マナドライバー)を持ち、思考は精巧な制御核(コントロールコア)が受け持っていた。
「骨格はもうばらばらで直しようがないな……新しく作った方が早そうだ」
 というわけで、地下の倉庫にあった軽い金属を使って骨格を作り直す。作ると言っても、魔法で加工するから簡単だし、寸法は元の通りにするから楽だ。
 後から、使ったのは稀少な『軽銀(ライトシルバー)』だと知ったが、山のようにあったのでその価値は理解していない。本当なら軽銀(ライトシルバー)1キロで豪邸が一軒建つくらいなのだが、単に魔法との相性がいいとの理由で気軽に使っている。
魔素変換器(エーテルコンバーター)もこうした方が効率いいよな……それに魔力炉(マナドライバー)もこうすれば小型化できるし」
 模型を作る要領で改良を加えて作り直していく。魔導具には力ある文言、すなわち言霊を魔法語(マギランゲージ)で刻み込むのだが、なぜか日本語、それも漢字を使うと効率が跳ね上がる事に気がついて、全部日本語で書き直すことにした。
「筋肉の魔法繊維(マジカルファイバー)魔法外皮(マジカルスキン)はそのままの仕様で単に新しくすればいいかな? いや、魔法繊維(マジカルファイバー)の方は改良の余地があるぞ……。魔法外皮(マジカルスキン)か、これを変えると見た目も変わっちまうな。あ、でも、恒久的な強化(リインフォース)をかけておこう」
 次第に夢中になる仁、そのため、先代が造った時既に異常だったスペックが更に異常なことになっているのに気が付いていない。
「最後に制御核(コントロールコア)、か。劣化して今にも壊れそうだよな……これも倉庫に無かったっけか」
 研究所の地下には坑道があり、ゴーレムに分類される魔法人形が多数、ゆっくりと、だが休まずに、有用な資源を掘り出し続けていた。それが1000年、である。その量は考えられないほどになっているのだが、仁はそんなこととは知らない。元より比較対象が無いためだ。因みにゴーレムは単純な構造ゆえに魔力がある限り劣化しないで動作し続ける。
「あったあった、こんなにいっぱいあるじゃないか。それならこの綺麗なやつを使ってみよう」
 元々の制御核(コントロールコア)に使われていた魔結晶(マギクリスタル)は赤かったが、仁が取り出したのはオパールのように虹色に輝いていた。
「古いほうの制御核(コントロールコア)の情報を移動して、と。うん、成功。こっちの方が大きいからまだまだ余裕ありそうだな。俺の知識もコピーしてみるか」
 空腹も忘れ、制作に夢中になるのはマニアのさがらしい。
「……知識転写(トランスインフォ)……うおっ、けっこう頭にこたえるなあ。やっぱり全部の知識は無理か、まあこんなもんでいいか」
 さすがに仁の知識を全部転写するのは時間が掛かるので、主に言語に関する知識を転写しておく。具体的には日本語や漢字、仮名、アルファベットなどだ。
 そんなこんなで丸一日、自動人形(オートマタ)の再組み立てに費やした仁であった。
「あとは服、だな」
 着ていた服は、魔力が切れた途端に埃になって飛び散ってしまったので、今の自動人形(オートマタ)は裸であり、いろいろと非常に目の毒である。
「ここまで来たら最後まで面倒見るか」
 自分の服を作ってしまったので、見つけた生地はもう残っていなかった。
 仕方がないのでやはり倉庫を探す。地底蜘蛛(グランドスパイダー)の糸が大量にあったので、これを使って生地を作る。先代は織機も作っていた。
 細い糸で織った布を下着に、太い糸で織った布を上着に。レースまで織れてしまうのは、流石の先代である。
「元の服と同じ構造にするとして、色はどうやって染めようか」
 探せば染料もちゃんとあった。透明感のある青を選ぶ。これも実は魔物避けの効果のある魔法染料だった。
 靴は倉庫にあった焦茶色の革。実はドラゴン種の革であるが気にしていない仁。
 あれやこれやでメイド服というよりアリスといったほうが相応しい服が出来上がった。孤児院の女の子達に作ってやった人形の服と同じデザインなので当然と言えば当然である。
「うん、まあ、子供体型だし、これでいいか」
 仕上がりに満足する仁。
「じゃあ最後の仕上げ、『起動』」
 魔力炉(マナドライバー)を起動させるための魔力を注ぎ込むが、目の前に横たわる自動人形(オートマタ)は動かない。
「あれ? どこか間違えたかな?」
 調べてみるが、魔力回路の出来具合に不備は無い。
「うーん、わからん」
 その時、思い出したように腹の虫が鳴いた。
 で、冒頭のセリフに戻るわけである。

*   *   *

「あ、ああ、腹が減った……」
 へたりこむ仁。
「このままこの研究所にいたら餓死しちまうかな……」
 というわけでとりあえず外へ出てみることにした。
「えーと、確か転移門(ワープゲート)を使えば楽に移動できるんだったな」
 受け継いだ知識はそんな技術があることを教えてくれている。
「外に出る転移門(ワープゲート)は確か1階にあったっけ」
 記憶、というより知識を探るようにしてやってきたのは外界への門である転移門(ワープゲート)の間。幾つもの転移門(ワープゲート)が並んでいる。
「まあ、どれでもいいけど、5番目のにするか」
 知識によると、大きな町のそばに出る転移門(ワープゲート)
 お金に換えるために倉庫から宝石を5つほど持ち出す。小さなルビー(に見える宝石)。あまり大きくても換金しづらいだろうとの判断だ。
「よし、と。それでは出発」
 転移門(ワープゲート)の魔法陣に乗り、魔力を込める。すぐに魔法陣が作動し……
「……なんだかおかしいぞ」
 仁が忘れていたことがある。その転移門(ワープゲート)は1000年以上前に設置された物だということを。1000年は町が滅び、地勢が変わることもある年月だ。
 仁の使った転移門(ワープゲート)に対応する転移門(ワープゲート)は最早存在していなかった。
「ま、さ、か、ぼ、う、そ、う、?」
 魔法陣が激しく明滅する。転移に必要な魔力量は大きい。それが行く先を失って暴走を始めた。
「ま…ず…い…」
 降りるに降りられず、暴走する魔法陣のままに、仁の姿は研究所から消えた。

*   *   *

「……おとう、さ、ま?」
 自動人形(オートマタ)が目を開いた。暴走する魔法陣の真下の部屋にいたためか、仁の危機を感じ取ったようだ。
 起動が遅かったのは、その体の魔力容量が途方もない物になっていたからで、魔力炉(マナドライバー)起動後、空気中の自由魔力素(エーテル)を、動くのに必要な量の活性魔力素(マナ)へと変換するのに時間が掛かっていたからだった。
「おとうさまが……いません」
 自分の創造主が消えた、それは自動人形(オートマタ)にとって一大事である。
「おとうさまを……さがさなくては」
 自動人形(オートマタ)は、自己の存在意義(レーゾンデートル)である仁を探しに向かう。帰還用に新しい転移門(ワープゲート)を用意するなどの事前準備をし、
「行きます」
 これもまた研究所から消えた。
 あとに残ったのは、ひたすら資源を掘り出すゴーレム達だけであった。
 説明ばかりで読みづらくて済みません。こういうの描くのが(読むのも)好きなんです。
 どう魔法を使うかは次の章でもう少し具体的に描写します。
 これでプロローグは終わりです。次回からは仁の活躍が……始まるといいなあ。
 お読みいただきありがとうございます。

 20130715 19時51分 誤字修正
(誤)そんなこんなで丸一日、自動人形(オートマタ)の最組み立てに費やした仁
(正)そんなこんなで丸一日、自動人形(オートマタ)の再組み立てに費やした仁
+注意+
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