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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

1292/1619

35-16 解析と比較

『どう考えてもあの自動人形(オートマタ)は異常ですね』
 ロイザートの屋敷に謎の自動人形(オートマタ)がやって来る少し前、老君は仁に声を掛けた。
「どうした、老君? 緊急事態か?」
 老君の声に、仁は制御席から身体を起こす。
 仁が操っている分身人形(ドッペル)は、そのまま老君が制御を引き継いだ。
御主人様(マイロード)、お邪魔をして申し訳ございません。ですが、お耳に入れておいた方がいいと判断しました』
 そして老君は謎の自動人形(オートマタ)の話をした。
『その言動から、今の世界の戦力を調べに来たと判断します』
「確かにな」
『その上位存在はまず間違いなく『オノゴロ島』です』
「だろうな」
 仁もそれには同意である。
 何らかの理由で、『オノゴロ島』が、この世界に干渉しようとしているのかもしれない、と仁は身を引き締めた。
 司令室の魔導投影窓(マジックスクリーン)には、第5列(クインタ)、レグルス46通称『デック』の目から送られてきた映像が映し出されている。 

「なら、できるだけこちらを侮ってもらったほうがいいな」
『はい、御主人様(マイロード)。過小評価していてもらうに限ります』
 これまで謎の自動人形(オートマタ)の行動は『デック』が逐一老君に報告していたので、まだ仁の実力には気が付いていないことがわかる。
『ですが、いずれ御主人様(マイロード)の存在に気が付くでしょう』
 別に秘密にしていないのだから、当然の帰結である。
「捕まえるか?」
『はい。ですが、その際にもこちらの実力を計ってくるでしょうから、僅差で勝つか、一瞬で無力化するのがのがよろしいかと』
「わかった。……礼子!」
「はい、お父さま」
 礼子は、仁本人が蓬莱島に残っているため、当然こっちにいる。
「奴の実力がわからないから、こちらとしても最高戦力をぶつけたい。行ってくれるか?」
「もちろんです」
「そして、これもお前にしかできないことだが、特殊な魔法は使わず、力だけであいつをねじ伏せ、隙を見て『魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)』を使え」
 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)は対象物の自由魔力素(エーテル)を奪い取る魔導具である。
 以前『暴食バッタ』を退治した魔導具で、これをゴーレムに使えば行動を停止させることができるのだ。
 仁はそれを1機、礼子に持たせた。

 画面では、謎の自動人形(オートマタ)が門扉を破って屋敷内に侵入するところが映っていた。
『工学魔法かそれに類するもので門扉を変形させましたか』
 ショウロ皇国の古代遺物(アーティファクト)である巨大ゴーレムにも搭載されていた機能である。謎の自動人形(オートマタ)が持っていてもおかしくはない。
『庭に入れなさい。そして礼子さんがそちらに転移したら『魔法障壁(マジックバリア)』を展開するように』
 老君からの指示。できる限りこちらの情報は渡したくない。

『……意志を持つ操り人形(ライブパペット)よ』
 この呼び方により、謎の自動人形(オートマタ)が、『オノゴロ島』から送られてきたという裏付けが取れた。
「間違いない。礼子、行け!」
「はい、お父さま」
 礼子はすぐに転移していった
 そして、聞こえてきたセリフ。

『お嬢様だと? お前が? 人に似せて作られてはいるが、意志を持つ操り人形(ライブパペット)ではないか!』

 そして、戦闘が始まった。
 同時に、屋敷全体に『魔法障壁(マジックバリア)』が張られる。もちろん、庭にも。
 礼子は謎の自動人形(オートマタ)を弾き飛ばすと、指示どおり魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)を起動した。
「ぬ? これは? 力が抜ける………………」
 謎の自動人形(オートマタ)は動きを止めた。

「よし、いいぞ。思惑どおりだ」
 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)が効果を表したので仁はほっとした。
 自由魔力素(エーテル)がなくなったら、という事態は想定されていなかったようだ。
「さて、どうするか」
 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)を止めたら、また動き出す可能性がある。ゆえにこのまま無力化したい。
「よし、礼子、そいつの構造を調べて……は無理か」
 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)が働いている限り、工学魔法を含む魔法全般は使えないということだ。
御主人様(マイロード)、エーテルジャマーに切り替えれば、工学魔法が使えるようになります』
「ああ、そうか」
 魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)自由魔力素(エーテル)を奪い去る効果があるが、エーテルジャマーは一定範囲の自由魔力素(エーテル)を支配下におく働きをする。
 つまり、仁と仁の作ったモノ以外、自由魔力素(エーテル)を利用できなくなるわけだ。
「それでいこう」

 礼子には老君から指示が行く。
「わかりました」
 瞬時も途切れさせることなく、魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)からエーテルジャマーへと切り替える礼子。
 謎の自動人形(オートマタ)は停止したままだが、礼子は問題なく工学魔法を使うことができるようになった。
「『分析(アナライズ)』」
 礼子は、まず構造を調べた。
制御核(コントロールコア)は頭部にあるタイプですか。それに……魔力反応炉(マギリアクター)を持っていますね」

 魔力反応炉(マギリアクター)は、魔素変換器(エーテルコンバーター)魔力炉(マナドライバー)を1つに合わせた働きをする魔導装置(マギデバイス)で、仁と始祖(オリジン)以外は使っていない。
 仁にしても、700672号の指導の元、マスターした技術である。

「とりあえず魔力反応炉(マギリアクター)を切り離してしまいましょう」
 これにより、謎の自動人形(オートマタ)は完全に無力化された。
『礼子さん、念のためあなたの障壁(バリア)でその自動人形(オートマタ)を包み込み、『屋敷』の工房に運んで下さい』
 老君からの指示により、礼子は謎の自動人形(オートマタ)を工房に運び込んだ。これで光学的にも見られることはなくなる。
 そこへ仁がやって来た。
「礼子、よくやってくれた」
 まず仁は、壊された門扉を修復。
「やはり『変形(フォーミング)』で壊されたか……」
 こればかりは今のところ防ぎようがない。
 そして仁は謎の自動人形(オートマタ)の解析に取りかかる。
 一番に行ったことは制御核(コントロールコア)の複製だ。情報は何より貴重である。
 それからは体構造の解析となる。
「ふうん、こいつも人間の身体を真似ているのか」
 少し前に出会った、魔素暴走エーテル・スタンピード前のゴーレムと同じ思想である。
 もちろん、こちらの方がずっと出来はいいが。
「骨格は……驚いたな、64軽銀だ。筋肉は合成物だな。だが性能はよさそうだ」
 おおよその見当で、人間の10倍くらいの力を出せるだろうと思われた。
「『普通なら』脅威なんだろうけどな……」
 蓬莱島のゴーレムたちと比較したら問題にならないので、この点は仁の方が優位である。
 魔導神経の配線も非常に精密であった。
 人間に似せているとはいっても、臓器と魔導装置(マギデバイス)の位置を対比させるような、無駄な拘りはなかった。
「だが、大きな魔力反応炉(マギリアクター)だな。薄い自由魔力素(エーテル)濃度でも動けるようにしているんだろうな」
 仁の手に掛かり、次々に構造が明らかになっていく。
 そしてやはり、通信装置らしき魔導装置(マギデバイス)が見つかる。
 仁は即座にそれを切り離した。
 が、他には特に目立った構成はなく、参考にはならなかった。
 逆にいえば、仁の作るゴーレム・自動人形(オートマタ)はそれだけ完成度が高いのである。

「こうしてみると、我々の技術は『オノゴロ島』に劣っている、とばかりも言い切れないようだな」
 多少なりとも肩を並べられる技術がありそうなのは喜ばしい、と仁は思った。
『平和ボケしているような連中ですから、もしかしたら戦闘技術は発達していないのかもしれませんね』
「ああ、その可能性はあるな。……まずはここまでにしておこう。あとはこの制御核(コントロールコア)から情報を引き出さないと」
 仁は、謎の自動人形(オートマタ)は屋敷内工房に残し、礼子を伴って蓬莱島に戻ったのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160916 修正
(誤)ショウロ皇国の古代遺物(アーティファクト)である巨大ゴーレムにも搭載されていた機能である。、
(正)ショウロ皇国の古代遺物(アーティファクト)である巨大ゴーレムにも搭載されていた機能である。

(誤)魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)が効果を現したので仁はほっとした。
(正)魔力素除去器(エーテルエリミネイタ)が効果を表したので仁はほっとした。
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