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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

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35-15 傍若無人と慇懃無礼

「ゴ、ゴーレム『起動』!」
 剣を受け止められ、腕を折られた兵士が叫ぶと、詰め所の奥から、一般警備用のゴーレムが姿を現した。
「その男を拘束しろ! 傷付けても構わん!」
 無言で謎の旅人に向かっていくゴーレム。
 旅人は兵士の腕を放し、ゴーレムに相対した。
「その力、見せてもらおう」
 そして両腕を伸ばした。
「な、何!?」
 兵士は折られた腕を押さえながら目を見張った。
 謎の男とゴーレムは、手と手を互いに握り合い、力比べをしている。
 そう、『力比べ』をだ。ゴーレムと、人間が。
 いやこの時点で、男が人間ではないことがわかる。
 ゴーレムが競り負けているのだ。
「ふん、この程度か。材質も単なる炭素鋼のようだしな」
 男はそう言うと、ゴーレムの腕をねじ切ってしまった。同時に前蹴りを放ち、ゴーレムを吹き飛ばす。
 蹴られたゴーレムは詰め所まで吹き飛び、詰め所を破壊して止まった。
「つまらぬ。この程度で国を守っているというのか。……ぬ?」
 謎の男の視線が空に向けられた。
「あれは……熱気球? この程度の文明が持っているというのか?」
 ロイザートの町を上空から警邏する2機の熱気球だった。
「ふむ、やはり少しちぐはぐだが……出来損ないの文明など、そんなものですか」
 口調が元に戻ると共に、謎の男は身を翻した。
「ま……待て……」
 腕を折られた兵士が、痛みに顔を引き攣らせながらも呼び止める。
 だが、謎の旅人は振り返りもせずに歩いていく。その向かう先は貴族街。
「貴族なら、まだ何か情報を得られるかもしれませんね」
「ま……て……」
 兵士は痛みに耐えかね、気を失った。

*   *   *

『あの旅人は人間ではないですね。おそらく『オノゴロ島』の自動人形(オートマタ)
 蓬莱島では、謎の旅人の後を付けてきた第5列(クインタ)、レグルス46通称『デック』の目を通して、老君がその一挙手一投足を観察していた。
『詰め所の警備兵を放っておくわけにもいきませんね。付近にいる第5列(クインタ)に救助させましょう』
 ちょうどロイザート担当の第5列(クインタ)、カペラ7通称『テラル』がいたので、回復薬と、骨折も治せる中級治癒魔法『快復(ハイルング)』で治療を施させたのである。

*   *   *

「ふむ、歩いている者がいませんね。建物も変わり映えしませんし……んん!?」
 時刻は午後3時。とある屋敷の前で立ち止まる謎の旅人、いや自動人形(オートマタ)
「この屋敷は……ちょっと見には他の屋敷と変わりませんが、塀に施されている強化魔法は他とレベルが違いますね」
 その屋敷の所有者は仁であった。

「門から入るか、塀を乗り越えるか」
 少し逡巡したあと、男は徐に塀を殴りつけた。だが塀はびくともしない。
「やはり。これでは、私が全力を出しても壊すには骨が折れそうですね」
 そう呟いた男……謎の自動人形(オートマタ)は、門から入ることにしたようだ。だが門扉は閉じられている。
「ふむ、門扉は炭素鋼ではないですね。ニッケルクロム鋼ですか。しかも念入りに強化されています」
 そこへ、庭の手入れをしていた5色ゴーレムメイド、アメズ102がやって来た。
「何か御用でしょうか?」
 格子状の門扉越しに応答する。
「……主人に会いたい」
 傲慢な口調になっている。
「お約束はございますか?」
「そんなものはない」
「困りましたね。ただいま主人は留守にしておりまして……」
「なら、中で待たせてもらおう」
「お断り致します」
「何故だ?」
「貴方の意図が見えません。そんな方をお通ししては従者として失格ですから」
 この『従者として失格』の部分に、謎の自動人形(オートマタ)はにやりと笑った。
「ふむ、やはりここの屋敷は周りとは一線を画すな。ますます興味が出てきた。この門扉を開けろ」
「できません。不法侵入になりますよ?」
「それは貴様等の法だ。私には適用されない」
「いえ、この国にいる時点で適用対象となります」
 だが、謎の自動人形(オートマタ)は鼻で笑う。
「ふん、この『国』だと? 劣化した末裔が偉そうに」
 そして門扉に手を掛けると、強引にこじ開けようとした。
「……うっ?」
 だが、謎の自動人形(オートマタ)がいくら力を入れても門扉はびくともしなかった。
「な、なんと」
「その門扉は、私たちではどうにもできません。破壊できるのはお嬢さまくらいです」
 アメズ102は若干誇らしげに告げた。
「ふむう、やはり貴様等の主人は侮れない存在のようだ。ますます会ってみたくなった」
 その言葉が終わらないうちに、謎の自動人形(オートマタ)は一瞬で門扉をひしゃげさせ、庭に侵入したのである。
「我に掛かればこんなものだ」
「不法侵入ですよ?」
「ふん、この国の法に縛られる私ではないと言っただろう。意志を持つ操り人形(ライブパペット)よ」
「傲慢な方ですね。どうしてそこまで……」
 その時、屋敷から小さな影が現れた。
「アメズ102,ご苦労様。あとはお任せなさい」
「お嬢様」
 その言葉を聞いた謎の自動人形(オートマタ)は目を見張る。
「お嬢様だと? お前が? 人に似せて作られてはいるが、貴様とて意志を持つ操り人形(ライブパペット)ではないか!」
 どうやら、礼子が自動人形(オートマタ)であることを一目で見抜いたようだ。
「それがどうかしましたか?」
 礼子の声は冷たい。
「お父さまがわたくしのことを娘と呼んで下さいました。ただそれだけのことです」
「笑止。被造物が主人を親と呼ぶなどあってはならぬ」
「それはあなたの理屈です。わたくしとお父さまをあなたごときと一緒にしないでください」
「ふむ。……それは置いておくとして、お前の言う『お父さま』はどこにいる?」
「教えると思いますか?」
 さらに冷たくなった礼子の言葉。
「思わぬが、一応念のため、な」
 その言葉と同時に、謎の自動人形(オートマタ)は礼子をがっしりと両手で捕まえたのである。
「なんの真似ですか?」
「ふふ、お前なら、『お父さま』とやらのことはよく知っているだろう。さらにお前がいれば、『お父さま』とやらも出て来ざるを得ないだろうと思ってな」
「その推測が間違っているとは言いませんが……」
 礼子は身体を捻ると、謎の自動人形(オートマタ)の束縛から逃れた。
「なにっ!?」
「思い通りにはいきませんよ」
「ぐっ?」
 自由になった礼子は謎の自動人形(オートマタ)を突き飛ばした。
 突き飛ばされた自動人形(オートマタ)は門柱に激突して止まった。
「やはりあなた方とは相容れませんね。お父さまの仰ったとおりです」
 変わらず冷ややかな声で礼子は言い放った。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 お知らせ:所用で早朝から夜まで留守になります。
      その間レスできませんので御了承ください。

 20160915 修正
(誤)兵士は折られた腕を抑えながら目を見張った。
(正)兵士は折られた腕を押さえながら目を見張った。
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