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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

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35-09 一旦まとめ

 サキ、グース、ヴィヴィアンらもやって来た。
「仁、『望遠装置』ができたんだって?」
 グースが話し掛けてくる。
「ああ。『望遠装置』じゃなく『覗き見望遠鏡(ピーパー)』って名前にしたけどな」
「へえ? なんでだい?」
 サキも疑問に思ったようだ。
「実は……」
 仁が説明すると、
「と、透視機能……」
「なんというか、それは……」
 と、サキもヴィヴィアンも少し引き気味である。
「だから、気軽に使わないようにしよう、とジン兄と話してた」
「そうだな。人間は疑り深いから、『ファミリー』以外にはそのことを話さない方がいいな」
 グースも要注意と言う。
「でも、うまく使えば身体の中の不具合を見つけることができると思う」
 そう、レントゲン、CTスキャン、MRI、超音波などの代わりになるはずなのだ。
「ああ、医療用ね。うん、それはいいんじゃないかな」
 この点については、サキも賛成なようだ。

「じゃあ、医療用の方はエルザに任せよう」
 近距離用なので、精度的・構造的な問題はない。
 主に使い勝手の問題なので、仁は使い手になるであろうエルザに任せることにした。
「ん、了解」
「俺は長距離用の開発に専念する」
「くふ、ジンたちは順調だね」
「サキたちはどうなんだ?」
 『オノゴロ島』と『始祖(オリジン)』の関係についていろいろと推測していたはずである。
「うん、あくまでも仮説だけどね、老君の推測も含めて、一旦まとめて見た」
 グースが代表して語り出した。

「『始祖(オリジン)』は資源が枯渇したヘールからこのアルスへやって来た。それは間違いない。だが、聞くところによれば、個人主義の『始祖(オリジン)』は、家族単位、せいぜいご近所単位くらいの集団で生活していた」
「ほう」
 面白い仮説であった。
「もちろん、移住する際には、そんな『集団』がいくつも集まり、『町』を作ったことだろう。『町』が集まって『領』くらいになったかもしれない」
 この場合の『領』は、領地ではなく、町の集合体、くらいの意味である。
「『国』にはならなかったのだろうな。そういう『組織』は『始祖(オリジン)』は嫌うだろうから」
 なかなか鋭い洞察だ、と仁は感心しながら耳を傾けていた。
「そして、『オノゴロ島』に、先遣隊とでもいうべき者が降り立った」
 そしてこのアルスを改造し、自分たちが棲みやすい環境へと変えていったのだろうとグースは結んだ。

「ここまでが『成り立ち』だな」
「次は私から話すわ」
 グースに代わってヴィヴィアンが口を開いた。
「そして、『魔族領』にも、先遣隊は降り立った。『始祖(オリジン)』は個人主義なので『魔族領』に降り立った人たちは『オノゴロ島』のことなど気にも留めていなかったのではないかしら」
 それはあり得る、と仁も内心で同意した。
「一方『オノゴロ島』は、棲みやすくするための自由魔力素(エーテル)を今も集め続けている……そして」
 ここから先は、さらに飛躍した推測になる、とヴィヴィアンは言い置いて話を続けた。
自由魔力素(エーテル)と……資源をヘールに送っている」
「老君の推測だな」
「そう。そしてこの先は私たちの推測よ」
 ヴィヴィアンが頷いた。
「資源が枯渇したヘールから『天翔る船』を作って移住するためには資材が必要。そのための資源、特にミスリル銀を採掘して送っていた。だからこの星にはミスリル銀が少ない」
「ははあ、なるほど」
 思い切った推論であることは間違いない。だが、辻褄は合う。
「そして、移住を拒否した『始祖(オリジン)』のためにもその送り出した資材は有効だった。そして今でも自由魔力素(エーテル)がヘールに送られて、いる」
 以上よ、とヴィヴィアンは言った。

「なるほど、興味深い仮説だな」
「くふ、怪しい部分も多々あるんだけどね。なにぶんにも情報が少ないから、後の方になればなるほど創作というか推測に頼らざるを得なくてね」
「そうだろうな」
 仁にもそれは理解できる。だが、これだけの背景を描いてもらえると、行動の指針になるというもの。

「理由や動機まではわからないけどな。たとえば、なぜ自由魔力素(エーテル)がヘールに送られているのか。しかも、自由魔力素(エーテル)を送るならこの星からである必要もないだろうし」
「そういった謎が居ながらにして解けるなら調べに行こうなんて思わないさ」
「それはそうだな。その辺は、これから仁が明らかにしてくれるんだろう?」
「できるなら、な」

「そして『ヘレンテ』だが」
 最後はグースが口を開いた。
「『始祖(オリジン)』がここアルスに築いた拠点の1つである『オノゴロ島』の管理者だな。だが、その忠誠は『始祖(オリジン)』のごく一部に向けられている」
「えっ?」
「今回の『モデヌ』騒動に何もしなかったのがその証拠だ。おそらくその『主人』は、このアルスにいないんだ。聞こうとしたら態度が硬化した、というからまず間違いない」
「いるとすればヘールか……」
「そういうことだな。ゆえに、アルスの味方とは限らない。最悪、中立でさえないかもしれない」
 つまり、ヘールにいる主人のためなら、アルスの不利益になることもするだろうということだ。

「わかった。みんな、ありがとう」
 仁は時計を見る。
「もうこんな時間か。夕食にしよう」
 蓬莱島時刻では午後6時であった。

「おお、美味い」
 夕食の献立は、白米、油揚げの味噌汁、冷や奴、おひたし、野菜と白身魚の天ぷら、そして玉子焼き。
 いずれも仁の好物であり、サキたちもまた好きなメニューであった。 
「うーん、ボクも料理覚えた方がいいのかな」
 味噌汁を飲みながらサキが呟く。
「アアルが有能だからなあ……」
 仁は苦笑し、エルザはアドバイスを一言。
「サキ姉、その気があるなら、欲張らないで一つ一つ覚えていくのが結局は、近道」
「くふ、なるほどね。エルザの口から聞くと重みがあるね」
 お嬢様育ちで何一つできなかったエルザが、今では立派な主婦である。
「愛のなせる業、かね」
「……ん、そう」
「ああ、エルザ。貫禄出てきたねえ」
 からかったつもりが真顔で頷かれてしまい、サキは苦笑せざるを得なかった。

「ところで」
 一足先に食べ終えたグースが、ほうじ茶をすすりながら口を開いた。
「ん?」
 同じく食べ終えていた仁が顔を上げる。
「魔族領に行く話はどうなったんだ?」
「そうだな。明日、『コンロン3』で魔族領へ行こう。研究の方はこれで終わり、ということはないだろうし、特に『自由魔力素(エーテル)転送』の方は時間が掛かりそうだからな」
「わかった」
 何度も訪れているので向こうの様子も心得ているので、こういう点は気易い。
「特に準備する必要はないかな。まあ、気軽に行こう」
「くふ、そんなこと言えるのはジンくらいだよね」
 サキが苦笑混じりに言う。
「今更口にすることじゃないけどさ」
「ひどいな」
 本気ではないことを知っている仁は、陽気に笑ったのである。
 こうした気のおけない会話ができることをこの上なく幸せに思う仁であった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160909 修正
(誤)『オノゴロ島』のことなど気にも留めていなかったではないかしら」
(正)『オノゴロ島』のことなど気にも留めていなかったのではないかしら」

(誤)野菜と白煮魚の天ぷら、そして玉子焼き。
(正)野菜と白身魚の天ぷら、そして玉子焼き。

 20160910 修正
(誤)「特に準備する必要はないかな。、まあ、気軽に行こう」
(正)「特に準備する必要はないかな。まあ、気軽に行こう」
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