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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

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35-08 タンジェント

 仁の試作も成功であった。
 20メートル先に魔導監視眼(マジックアイ)をおいたのと同じような映像が得られている。
 しかも、間に壁があろうが岩があろうが関係なく、だ。
「思わぬ効果だ」
 考えてみれば、光波でなく自由魔力素(エーテル)波を使っているのだからあたり前である。
「本当の意味での透視だなあ」
 礼子にも『透視』と称する機能は付いている。が、それは赤外線などを使い、『ある程度』という但し書きがつく。
 ここまで鮮明な映像を得ることはできない。
 また、これを使えば、遠方から透視もできるだろう。
「すごいものができたなあ」
 仁はちょっと考える。
「もしかすると、『ヘレンテ』もこちらに対して同じことができるのではないかなあ」
 その場合の防止策を考えてみる。
「やっぱり障壁(バリア)、か」
 蓬莱島全体とまではせずとも、研究所、家、老君などを個別に覆える障壁(バリア)があってもいい、と仁は考えた。
『『魔法障壁(マジックバリア)』ですね』
 老君が言う。
「そうなるな。『物理障壁(ソリッドバリア)』も別枠で張れるといいだろう」
『わかりました。早速手配します』

 ちょっと寄り道をしたが、懸念事項が1つ減った仁はほっとしていた。
「エルザの試作と組合わせてみよう」
「ん」
 少しの加工でそれは完了した。
「よし、起動」
 向ける方向は崑崙島。およそ300キロの距離である。
「うーん、あとちょっとかな」
 意外と難しいのが方向の調整であった。
 0.1度変えただけでも、300キロ先では大きな誤差になるのだから。
「ジン兄、どのくらいになるんだっけ?」
「え? 三角関数でわかるだろう?」
「ええと……」
 エルザは知識として知ってはいても使ったことがなかったようだ。
「tanθ=b/a だよ」
「あ、だったらaが300キロで、θが0.1度、求める誤差がb、でいい?」
「そうそう」
 三角関数は、使う人・使わない人が分かれるなあ、と仁は口に出さずに頭の中でだけ考えていた。

「だとすると……b=300×tan0.1度」
「そうなるな」
 三角関数表は老君に計算させる手もあったが、『賢者(マグス)』シュウキ・ツェツィが持ち込んだ本の末尾に附録として載っていたので仁は助かっていた。
『約523メートルですね』
 式を示せば老君が計算してくれた。
「0.1度で500メートル強の誤差……」
 エルザが難しい顔になった。
「ジン兄が誤差を0にしたいというのがよくわかった」
「だろう?」
 これを宇宙規模の距離に伸ばした場合、人間では操作しきれない可能性もある、と仁は思った。
「専用のゴーレムか、半自動にするか、だな」

「ジン兄、とりあえず、崑崙島らしい島が見えた」
「おお、すごい」
 仁がちょっと考えに耽っていたら、エルザが調整を終えてくれていた。
 少し映像が震えるが、確認には十分だった。
「うーん、ちゃんと作れば十分実用になるな」
 近〜中距離用は問題がなさそうである。
「しかも透視機能付き、か……」
 仁は、この装置を『覗き見望遠鏡(ピーパー)』と名付けた。
 本当は『ピーピング・トム(出歯亀)』としたかったのだが、少しだけ自重したのである。
 この装置があれば、壁越しに部屋の中を調べることもできるのだ。
「やたらと使わないようにしないと」
「ん、同感」
 モラルの問題もあり、軽々に使用することは慎もうと誓い合った仁とエルザである。

 さて、本番は宇宙観測用、つまり長距離〜超長距離用である。
「長距離用より上は、もっと大型でもっと剛性の高い構造にしないといけないな」
 原理は同じなので、作ること自体に問題はない。
「老君、強度と大きさ、到達距離を検討してみてくれ」
『わかりました。お任せください』
 そちらの設計は老君に任せ、仁とエルザは休憩を取った。
「お父さま、飲み物は何になさいますか?」
「そうだな、シトランジュース」
「わかりました。エルザ様は?」
「私も同じので」
 礼子が2人に冷えたシトランジュースを持ってきてくれた。

「でも、なんとかなった」
「ああ、だな」
「お父さま、さすがです!」
 エルザと仁はグラスを軽く触れ合わせて乾杯をした。
 礼子も賛辞を送ってくれる。
「あとは『エネルギー転送』だけど……正直、重要度は低いな」
 『ヘレンテ』に負けたくない、という思いがかなりウェイトを占めていることは否めない仁であった。
「それよりも、『覗き見望遠鏡(ピーパー)』を応用して、強力な武器も作れるな」
「……確かに」
「あまり使う気はないけど、何かあったときのために作っておくか」
 『光の玉(ライトボール)』の代わりに攻撃魔法を使えばいいわけだ。
 通常の魔法が届かないような遠距離や、壁越しの相手にも有効である。
「こちら側で好きな魔法を選定できるといいな」
「それなら、治癒魔法も」
「うん、そうだな」
 エルザが言うように、遠距離で治癒魔法が使えるなら非常に有効だろう、と仁は思った。
「治癒魔法のこともあるから、この装置は蓬莱島勢全員に付加しよう」
 まずは礼子、老子、ソレイユ、ルーナ、5色ゴーレムメイド、陸海空軍、職人(スミス)、海中軍、宇宙軍……。
 さらに大型のものを航空機や船舶に。
「大変だろうが、頼む」
 職人(スミス)大忙しである。

 こうしてさらに蓬莱島の戦力は増強されたのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160908 修正
(誤)『約532メートルですね』
(正)『約523メートルですね』
 orz
(誤)「0.1度で500メートル強の語差……」
(正)「0.1度で500メートル強の誤差……」
 orz
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