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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

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35-07 試作順調

 翌日、すなわち10月21日。
 サキ、グース、ヴィヴィアンらは、『オノゴロ島』と『始祖(オリジン)』の関係について、より深い検討・考察を始めた。
 仁とエルザ、老君、礼子らは『望遠装置』の検討。
「ね、ジン兄、幻影結界だけど」
 昨日から考えていた、と、唐突にエルザが切り出した。
「あれって、何もないところに何かあるように見せる魔法技術、でいい?」
「ああ。それがどうし…………! そうか!」
 エルザの言わんとするところを悟り、仁は両手を打ち合わせた。
「今のでわかる、ジン兄すごい」
「くふ、以心伝心ってやつだねえ」
 横で『オノゴロ島』と『始祖(オリジン)』の関係について検討していたはずのサキが混ぜっ返した。
 その言葉にエルザは少し頬を染めたが、モノ作りモードに入った仁には無効だったようだ。

 要するに、『ヘレンテ』たちが使っている『望遠装置』は、遠く離れた場所に『中継器』らしきものを魔力で構築することで遠方の映像を見ることができる、というものだろう、と、仁は考えている。
 その技術に近付くための第一歩として、『転移』系の技術をいろいろ考えていた仁だったが、行き詰まってしまっていた。
 だが。
「遠く離れた場所に、魔力……つまり自由魔力素(エーテル)波を搬送波として幻影を描くのが幻影魔法だ」
「ん」
 イメージとしてはレーザーホログラムが若干近いだろうか。
「この幻影の代わりに魔法陣や魔導式(マギフォーミュラ)を書けば……」
「うんうん、何か凄そうだということはわかる」
 サキはよくわからないながら感心している。

「よし、試してみよう」
 サキ、グース、ヴィヴィアンらはそのまま食堂に残り、検討を続けることにし、仁とエルザは工房に移動した。

 さっそく実験を開始する仁。
「範囲はごく狭くていい。実験だしな」
 エルザも少し手伝い、30分ほどで試作は完了した。
「これは、20メートル離れた場所に『光の玉(ライトボール)』を出す効果があるはずだ」
「それって、間に壁があっても?」
 エルザの質問に仁は頷く。
「もちろん。自由魔力素(エーテル)波は惑星だって障害にならないからな。やってみよう」
 試作を研究室の外へ向けて作動させる仁。
 エルザは工房の窓へ走り寄り、外を見つめた。
「ジン兄、成功。光ってる」
「よし」
「さすが、お父さまです」

「さて、ここから発展させてみようと思う。距離を延ばすのと、複雑な魔導式(マギフォーミュラ)や魔法陣を使えるようにする、この2つだな」
「ジン兄、距離を延ばす方、やってみていい?」
 仁はちょっと考えてから頷いた。
「じゃあ、頼む。おそらく自由魔力素(エーテル)波の収束に懸かってくるだろうから、ミニ職人(スミス)に手伝ってもらってもいいかもな」
「ん、わかった。ヒント、ありがとう」

 そして仁は『光の玉(ライトボール)』より複雑な魔導式(マギフォーミュラ)を必要とする魔法を試すことにした。
「うーんと、『燃えろ(ファイア)』じゃああまり難易度変わらないし……」
 成功したことが確認しやすい魔法で何かないかと考える仁。
 で。
「……『魔導監視眼(マジックアイ)』にしよう」
 目的がそれなのだから。
 幻影結界を発生させる元となる魔結晶(マギクリスタル)に『プログラミング』していく仁。
「これも細かいな……試作はいいが、本番はミニ職人(スミス)……いや、ミリ職人(スミス)にやってもらうか」
 微細加工専任のミリ職人(スミス)。身長5ミリの超々小型職人(スミス)である。

 一方、エルザも、有効距離を延ばすべく、いろいろとやっていた。
 10キロくらいまでは問題なくできるようだが、20キロくらいから怪しくなってきたようだ。
 『光の玉(ライトボール)』の確認は『ウォッチャー』がしてくれているのだが、発動したりしなかったりするのだ。
 そしてもう1つ、発動場所がゆらゆらと不安定なのである。
『エルザ様、1つには発生させている魔導具の固定が不十分なのでしょう』
 手元でわずか揺らいでも、20キロ先だともの凄い振れになる、そういうわけだ。
 そこでまず、エルザはしっかりした基盤を用意し、そこに魔導具をセットした。
 これにより、揺らぎはほとんどなくなったが、相変わらず発動したりしなかったり。
「やっぱり、収束……」
「どうだい、エルザ?」
 エルザが考え込んでいるところへ仁がやって来た。
「そっちは終わったの?」
「うん、一区切りして、今はミリ職人(スミス)に加工を頼んでいる」
「ミリ職人(スミス)……」
 どれだけ精密な加工なのかと、エルザは目を見張った。
 そして、途方もない距離を繋ぐためには、誤差0を目指す必要があることを悟る。
「発動位置の安定は、魔導具の固定で解決出来そう。でも、発動が……」
「ああ、やっぱり収束の問題か」
「ん、そう」
「だったら……」
 幻影を投射する『レンズ』の役目をしているのは魔結晶(マギクリスタル)の一部分だ。
 そこの物理的形状をできる限り正確に形成することが肝要だ、と仁は言った。
「確かに、そう思う」
「だからまず、結晶の欠陥もなくそう。……『構造変形(ストランスフォーム)』」
「さすが。形状はミニ職人(スミス)に頼もうと思っていたけど、結晶構造までは思い至らなかった」
「いや、俺は技術者だからさ」
 モノ作りに関しては慣れと勘があるが、発想はエルザに敵わない、と言って仁は笑った。
「ありがとう。お世辞でも、嬉しい」
「いや、お世辞でなくてだな……」
 仁としては、純粋に自分独自の発想ができるエルザに助けられていると思っていたのだ。

「と、とにかく、こっちをやってみよう」
 少し照れたように、仁はエルザの前にある魔導具を見つめた。
「実機はアダマンタイト……いや、ハイパーアダマンタイトを使ってもいいかもしれない」
「え?」
 そこまでするの? と言いたそうなエルザに、仁は続ける。
「ああ。完全な『剛体』があったら、というのは技術者の夢なんだよな。で、あれならかなりいい線いくと思う」
 ほんの僅かな歪み、変形が、数百キロ、数千キロ先では無視できない誤差になる。
 理屈ではわかっていたつもりのエルザだったが、仁に言われ、改めて実感した。

 倍率の高い望遠鏡は、手持ちではぶれてしまうようなものだ。
「固定をしっかり、精度は高く」
 そうしてこちらも試作2号が出来上がった。
「試してみる。老君、確認お願い」
 まずは20キロから。
『OKです。ブレもありません』
「それじゃあ、30キロ」
 こちらもOKだった。
 そして、100キロまでは問題ないことが確認される。

 一方、仁の方も、ミリ職人(スミス)から加工終了の報が入った。
「よし、やってみよう」
 仁は魔導具を起動したのである。
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