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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

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35-06 大胆な仮説

 残ったのはサキとトア、ステアリーナ、ヴィヴィアン、グースといった面々。
「ジン、いつ頃魔族領に行くんだい?」
 サキが聞いてくる。
「行くんならボクも行きたいなあ」
「あ、俺も」
「私も」
 サキ、グース、ヴィヴィアンが立候補した。
「いいけどな。一両日中には行こうかと思う。冬になる前がいいよな」
 魔族領は北の地、雪が降る前に訪れるのが望ましい。

 トアとステアリーナは今回は見送るそうで、2人ともショウロ皇国へと帰っていった。

「さて、それじゃあもう1つの方を回収してくるか」
「もう1つの方って?」
 仁の言葉にサキが質問した。
「ほら、海に仕掛けた『魔導式物質抽出装置マテリアルエクストラクター』さ」
「ああ、先代が開発した、あれかい」
 仁は担当のゴーレムメイドに命じ、一旦回収してくるように指示を出した。
 そしてそれはすぐに実行され、5分後には仁の手元に魔導式物質抽出装置マテリアルエクストラクターと素材が届いたのである。
「ふうん、結構溜まっているな」
 ミスリル銀は250グラムほど、アダマンタイトは90グラムほどが海水から抽出されていた。
「丸二日でこれはかなり有望だな」
「大量に、とはいかないけど、少量なら何でも手に入りそうだね、ジン」
「先代は大したもんだな」
 サキとグースも感心していた。

御主人様(マイロード)、サキさんがそこにおられるなら、私の仮説を聞いていただけますでしょうか』
 そんな時、老君が話し掛けてきた。
「どうした、老君?」
「ボクにも、って何かな?」
『はい。資源のことです』
「聞かせてくれ」
『はい。……『モデヌ』及び『破片』と、このアルスを比較してみますと、アルスの地下資源は少ないようなのです』
 破片というのはつまるところ第5惑星の内部衛星、という扱いになる。
ユニーに蓄えられている鉱石とも比較してみましたが、同じです』
 サンプルが少ないので断定はできないが、アルスの金属資源は少ないという。
『特に、ミスリル銀が』
「……なるほど」
『そこから、なんとなく、想像できることが1つあります』
「『オノゴロ島』だね?」
 サキが言葉を被せる。
『そのとおりです』
 オノゴロ島に拠点を持つ何者かは、自由魔力素(エーテル)だけでなく、この星の資源も横流ししているのではないか、と老君は結論した。
『仮に、『ヘレンテ』の主人がヘールに残っていたなら、十分な理由になり得ます』
「そうか……なるほど」
 『始祖(オリジン)』が母星であるヘールを捨てた理由の1つに、資源の枯渇があった。それをこういう形で補っているとしたら。
『大半が移住するためにいなくなったヘールなら、必要とする資材も少なくて済むでしょう。とはいえ、同胞が移住した星ですから、採り尽くすわけにもいかないでしょうしね』
 そのため、節度を持って資源を採掘し、ヘールへ送った、というのだ。
『中でもミスリル銀は魔法工学に不可欠な資源ですので優先して採掘し、送ったのではと推測しました』
 補足として、南半球では自由魔力素(エーテル)の不足により、開発は進んでいないはずという。
 もし、どこかで試掘してみて、資源が豊富であったなら仮説を裏付けることになるだろう。
「……すごいな、老君」
 仁は、老君の能力に感心した。
『いえ、これも御主人様(マイロード)が改良を重ねてくださったおかげです』
「いやいやいや、すごいよ、老君!」
 仁の横でサキも感心していた。
「うむ。確かにありそうな話だ。結局、『オノゴロ島』は、この星における『始祖(オリジン)』の……少なくともその一派の拠点だったんだろうな」
 グースも自分なりに情報をまとめていた。
「移住した『始祖(オリジン)』と、ヘールに残った『始祖(オリジン)』、双方に仕えていたのかしらね?」
 ヴィヴィアンが疑問を挟んだ。
「おそらくそうだろうな。だが、優先は滅びに向かっていたヘールだろう」
 先日の破片騒動以来、なんとなくそう感じている仁であった。

「くふ、ますますヘールを調査しないわけにはいかなくなったね」
「ああ、そうだな」
 今はまだいいが、このままいけば、いずれはアルスとヘールの間で、資源を巡っての争いが起きるかもしれない。
 それだけは避けたいと思う仁である。
 そして、もし争いが起きたなら……。
(俺はアルスを守る)
 それは間違いない、だが、惑星間戦争、なんてSF小説に出てきそうな大ごとに発展して欲しくはなかった。
「まあ、それはヘールを調査してからの話だ」
 その調査のためにも、望遠装置は欲しいと仁は思った。

「ジン兄、要は遠くを観察することが目的、なんでしょう?」
「そうだな」
「なら、超小型の魔導監視眼(マジックアイ)を作って、遠隔操作する方向は?」
「……確かにな」
 目的と手段をはき違えてはいけない、という典型だ。
「まずそっちを作るべきだな」
 そして、そちらなら、間違いなく作れる。現存する技術の延長線上だからだ。
 そう考えて、仁ははっと思い当たった。『望遠装置』が作れないでいるのは、延長線ではなく、途切れた技術、存在しない技術だからだ。
「一足飛びに目指しすぎたかもな」
 一つ一つ実現へ向かって問題点をクリアしていく。そんな基本的なことを忘れ、一気に高すぎる目標を掲げてしまっていた。
 ちょっと反省する仁であった。

 ということでまず、遠隔操作カメラ、名付けて『観察眼(ピーカー)』。
 最終的には『ミニ職人(スミス)』による加工・組み立てを行うことで、直径1センチの球形となった。
 超小型力場発生器フォースジェネレーターで短距離飛行、姿勢制御ができ、視界はズーミング可能。
 元となった『魔導監視眼(マジックアイ)』同様、映像は対になる『魔導投影窓(マジックスクリーン)』へと送られる。
 映像を送って来られる距離は理論上は無限大だが、実際には数万キロメートルくらいだろう。
 まずは十分な性能である。
「回収はまず不可能と考えていいだろうな」
「ん、ちょっともったいないけど」
 エルザらしい意見が出た。
「これをベースに、より性能のいいモノを考えていきたい」
「同感」

 この日はこれで終了。
 続きは翌日に、ということになったのである。
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