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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

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35-04 2つの転移手段

「ふうん、ミスリル銀だけが補充できないのかい」
 サキが難しい顔で言う。
「そもそもミスリル銀って、銀の魔力同位元素(マギアイソトープ)だったよね?」
 魔力同位元素(マギアイソトープ)とは、原子核の中性子が魔力子に置き換わった元素で、自由魔力素(エーテル)との相性が非常によいのだ。
 特にミスリル銀は、全金属、いや全素材を通じて、最も魔力をよく通す物質なのである。
 この特性を生かし、魔導神経や魔力素(マナ)伝導線などに使われている。
 また、他の金属に少量添加して合金とすることで、魔力への反応性を高めることが出来るのだ。
 マギ・アダマンタイトはその代表例で、アダマンタイトにミスリル銀を体積比で1.5パーセント添加した合金である。魔力で強化するとアダマンタイトの5倍の強度を得られるという優れ物だ。

「資金はあるから、少しは購入してもいいんだがな。やり過ぎると価格高騰を招くだろう」
「それはそうだね」
「1キロ程度じゃ、数体のゴーレムを作ったら無くなってしまうし」
 仁が作るゴーレムや自動人形(オートマタ)が高性能なのは、1つにはそうしたレア素材をふんだんに使っているということもある。
 もちろん、使いこなす技量あってのことだが。
「今、遠ざかっていく『長周期惑星』……『モデヌ』にないか、『アドリアナ』を派遣しているんだけどな」
「ああ、なるほど」
 そこなら、採掘しても誰にも迷惑は掛からない。もし、見つかれば、だが。
「で、準備が整ったら『ヘール』へ向かおうかと」
 もちろん、近付くまでは無人で航行し、着いたら分身人形(ドッペル)で探索し、危険がないとわかったら転移門(ワープゲート)で行ってみる、というステップを踏むことまで説明する仁。
「それだったら是非行ってみたいな」
「あたしも」
「ボクも」
「あたしもー!」
 グース、ヴィヴィアン、サキ、ハンナである。
「危険がないとわかったら、な」

 アルスとヘールは恒星セランを挟んで正反対の位置にあるため、2惑星間の距離は、アルスの公転半径の倍。つまり約3億キロメートル。
 実際には恒星セランを迂回して行くことになるため、もう少し道のりとしては長くなる。
「秒速300キロでも12日くらい掛かるからな」
 乗っているよりも着いてから移動した方がずっと効率がいい。
「くふ、そんな移動方法取れるのは仁くらいだね」
 笑いながらサキが言った。

「まあ、護衛艦が完成してからの出発となるだろうからまだ大分先だな」
「……その間に、『望遠装置』と『エネルギー転送』、完成させたいわけ?」
 今まで黙っていたエルザが口を開く。仁は頷いた。
「そうだな。できたらいいな」
「その『望遠装置』って、遠くを見るものでしょう?」
 ステアリーナが口を開いた。
「しかも、とんでもなく遠くを見ることができる……『魔眼』みたいね」
「『魔眼』か……」
 『魔眼』と聞いて思い出すのはリースヒェン王女のことだ。
「リースは確か『遠見の魔眼』持ちだったっけな」
 とはいえ、通常の望遠鏡くらいの拡大率らしいので、参考にはならないが。

「どっちも『空間』に関する技術なのよね」
 ヴィヴィアンがそんなことを言い出した。
「そうだな。空間というと、俺は『転移門(ワープゲート)』系しか知らない」
「えっ?」
 仁の言葉に疑問を覚えた声が上がった。ミロウィーナである。
「ジン君、転移魔法陣も知ってるでしょう?」
「ええ、知ってます。でもあれって、起動が遅いのと、意外と魔力喰うんですよ」
「あら、そうなの? 起動が遅いのは知ってるけど」

 転移魔法陣は、魔力を流して起動させると、その円形の魔導回路(マギサーキット)を魔力が循環する。
 循環する間に周囲の自由魔力素(エーテル)を吸収して魔力は増幅されていき、必要値を超えると転移が行われるのだ。
 起動時に魔力を流すだけでいいので、魔力消費が少ないと思われがちだが、仁が調べたところそれは間違いだとわかったのだ。
転移門(ワープゲート)は、その運用上常時起動させているからそれなりに魔力を喰っているんだけど、転移魔法陣はそうじゃないんだよな」
 仁が説明する。
 つまり、転移門(ワープゲート)は繋ぎっぱなしなので魔力消費が多いが反応が速く、転移魔法陣は使うときだけ繋ぐので魔力消費は少ないが反応が鈍い、となる。
 だが、転移そのものだけを取り出すと、転移門(ワープゲート)も転移魔法陣も、消費魔力はあまり変わらないのだと仁は説明した。

転移門(ワープゲート)はこちらが自由魔力素(エーテル)を与えているけれど、魔法陣は自分で自由魔力素(エーテル)を取り込んでいるんだ。手間でいえば転移魔法陣の方が簡単かもしれない」
「ああ、そういうことなのね」
 ミロウィーナも納得してくれたようだ。
「結局、転移時に消費する魔力は、転移門(ワープゲート)も転移魔法陣もあまり変わらないようなんだ」
 仁の結論に、一同は沈黙で答えた。

「でも、転移門(ワープゲート)と転移魔法陣では違う効果もあるかもしれないよ?」
 と、サキ。仁はそれを肯定した。
「ああ、それは言える。俺も、完全に比較したわけじゃないから」
「なら、やってみる? 手伝うわよ」
 ステアリーナが手を上げた。
「くふ、面白そうだね」
 サキも乗り気である。こうした比較実験には慣れているサキである。色々助言がもらえそうだと仁は思った。
「おにーちゃん、楽しそうだね」
 ハンナがちょっと羨ましそうに言った。
「あたしは魔法使えないし、おねーちゃんたち、いいなあ」
 そんなハンナを、マーサが宥める。
「ハンナ、無い物ねだりしちゃいけないよ。それよりも自分が出来ることを役立たせることを考えることさね」
「うん、おばあちゃん!」
 そんなマーサは仁に告げる。
「ジン、家が気になるからあたしは帰るけど、ハンナのことよろしく頼むね」
「はい、もちろん」
「ハンナ、ジンの邪魔しないようにね」
「うん、おばあちゃん」
 そうしてマーサは帰っていった。

「さて、この蓬莱島はもう大分夜も更けたから、そういった実験は明日だな」
 気が付けば午後11時を回っている。
 カイナ村でも午後9時半くらいだから、ハンナも眠そうだ。
「ミーネおばちゃん、一緒に寝てもいい?」
「ええ、いいわよ」
 ハンナはミーネと一緒に寝ることになった。

 仁とエルザは『家』で、2人以外は研究所の客室で休むことになる。
「それじゃあ、お休み、ハンナ」
「おにーちゃん、お休みなさい」
 蓬莱島の上には相変わらず丸いユニーが懸かっていた。
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