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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

35 オノゴロ島篇

1279/1508

35-03 計画の相談

 蓬莱島時間で午後8時過ぎにはマルシアの誕生会は終了した。
 時差の関係で、既知世界では最も時刻が進んでいる蓬莱島なので、『仁ファミリー』のメンバーの地元ではまだ早い時間である。
 それで全員、酔い醒ましを兼ねて食堂で寛いでいた。
 ハンナは子供であり、またビーナは身重なので2人はジュースしか飲んでおらず酔い醒ましの必要がないが、他のメンバーは冷たい水を飲んでいる。
 あまり赤い顔で地元に帰ると立場上まずい者もいるのである。

「なあジン、このあとの計画は?」
 コップをテーブルに置いたラインハルトが仁に尋ねた。
「南極の謎を解くのを続けるのかい?」
「いや、そっちは一時保留だ」
 仁もコップの水を飲み干してから答えた。
「さっきもちょっと話したが、どうにも『ヘレンテ』の態度が納得いかないからどうしようかと思ってる」
「うーん、確かにな。元外交官として言わせてもらうと、その『ヘレンテ』の態度は明らかにおかしいと思う。少なくともこの世界を守っているようには思えない」
 ラインハルトが意見を述べる。
「何か特定の目的を追っている、という気がする。これは僕の勘だけどね」
「特定の目的か……そのために自由魔力素(エーテル)を集めている、というわけか」
「そういうことだな」
 頷き合う仁とラインハルト。
「そもそも、『主人』がもういないわけだから、彼等の存在意義はないはずなのに、未だに固執しているというのが納得いかないかな」
 グースも疑問を呈する。
「とはいえ、情報が少なすぎるから即断は危険だろうけどね」

「その『ヘレンテ』って、なんだか不気味だわね」
 ビーナが嫌悪感を露わにして言い放った。
「結局、今回の破片騒ぎにもなにもしなかったんでしょう?」
「そうだな。聞く限りでは、この世界が滅ぼうとも我関せず、という態度とも取れるな」
 クズマ伯爵も同意した。
自由魔力素(エーテル)を集めるという、その行為に、アルス上の生命は関係ない、ということか」
 グースも嫌悪感剥き出しで吐き捨てる様に言った。
「なら、なぜ人類への影響が少ない南半球で行っているのかな?」
 疑問点を口にしたのはトア。
「単に、彼等が稼働し始めた頃は、北半球に『主人』がいたからじゃないのかな?」
 サキも自分の見解を述べた。
「いや、そうとも限らないぞ。余計なことをして調査に来られたら面倒だから、という理由も考えられる」
 現に今回、ジン君が調査隊を派遣したんだし、とトアは言う。

 他にもいろいろと意見は出たが、やはり情報不足のため結論は出せずにいた。
「いずれにしても、蓬莱島にない技術を持っていることは間違いない。今のところ、『望遠装置』と『自由魔力素(エーテル)転送』、この2つは再現できていないし」
「うーん、ジン君にもできないことってあるのねえ」
 おかしな感心の仕方をするミロウィーナがいた。
「そりゃ、ありますよ」
 苦笑混じりに仁が返す。
「その2つだって、ジン君ならなんとかかんとか実現しそうなものよねえ」
 ステアリーナも乗ってくる、
「そんなこと言ったって……ああ、そうか」
「え? もうできちゃったの?」
「ああ、いや、そうじゃなくて、発想を変えればいいのかなあ、と思って」
「発想を?」
「ええ。見せられた技術を再現することに固執するんじゃなく、俺なりに同じ効果を出せるようにすればいいんじゃないかと」
 その答えにステアリーナは感心したようだ。
「なるほどね、やっぱりジン君だわ」

*   *   *

 皆の酔いもかなり醒めた頃。
「せっかくだから集合写真撮ろう」
 ふと思いついた仁が言い出した。『写実機(カメラ)』があることを失念していたのである。
「あら、いいわね」
 皆、『写実機(カメラ)』の存在は知っていたので(そして忘れていた)、頷いた。

「はい、撮りますよ……」
 礼子が『写実機(カメラ)』を構え、全員が入った集合写真を撮ってくれた。
 焼き増しが苦手なシステムなので、短時間に人数分のシャッターを押して、である。
 目を瞑ってしまう者が出た時用に、余裕を持たせた枚数、である。

「それじゃあジン、今日はありがとう。この時計、大事にするよ」
 仁はファミリーメンバーへの誕生日プレゼントとして、今年は全員に懐中時計を贈っているのだ。
「それじゃあ、ジン殿、また」
 マルシアとロドリゴが帰り、
「ジンさん、それでは帰ります。おやすみなさい」
 リシアが帰り。
「ジン、またね」
「ジン殿、今日は楽しかった」
 ビーナとクズマ伯爵も帰っていった。
「それじゃあ、僕たちも帰るとするか」
「ええ、あなた。ユリアーナもおねむのようですし」
 ラインハルト夫妻も、領地へと戻る。

 残ったのはハンナとマーサ、サキとトア、ステアリーナ、ヴィヴィアン、グース、そしてミロウィーナ。
 いずれも地元に急いで戻る必要のない面々である。
「で、ジン君はどうするつもり?」
 ミロウィーナが仁に尋ねた。何かを期待しているような顔である。
「ええと、まだ決めたわけではないんですが、ヘールに行ってみたいなと」
「なるほどね」
 ミロウィーナは平然と聞いていたが、他の面々は少なからず驚いたようだ。
「人類の祖先が出た惑星だし、未だに何かありそうだし、なんとなく気になるんだ」
「それは、確かに」
 意外なことに、エルザは反対しなかった。
「そのために、今回作った大型力場発生器フォースジェネレーターを使って、100メートル級の宇宙船を2隻用意しようかと」
「え」
 それは予想外だったらしい。
「ヘールに何があるかわからないから、やはり戦力はあった方がいいし」
「……わかる、けど」
「なら、『ユニー』にある資材も使っていいわよ。どうせ使うあてがあるわけじゃないし」
 ミロウィーナの申し出に仁は頭を下げた。
「ありがとうございます。必要になったら、そうさせてもらいます」
 そして仁は、回収された資材の話をした。

「というわけで、おおかたの資材は補充できたし、鉄とニッケルなんかは以前より在庫が増えたくらいだ」
 足りないのはミスリル銀で、それも今海水から抽出できないか試している、と仁は説明したのである。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160903 修正
(旧)ハンナは子供なので、またビーナは身重なのでジュースしか飲んでおらず
(新)ハンナは子供であり、またビーナは身重なので2人はジュースしか飲んでおらず

 20160904 修正
(旧)酔い覚まし
(新)酔い醒まし
 2箇所修正。
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