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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

34 破片対策篇

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34-13 バリアとコヒーレンサー

 更新が遅くなり失礼致しました。
「そうか、障壁(バリア)だ!」
 30分ほど考え続けていた仁は、ようやくその顔を上げた。
 そして目の前にあったお茶を飲む。
「ん?」
 お茶は飲み頃の温度を保っていた。
 ふと正面を見ると、エルザが微笑んでいる。それで仁は悟った。
「エルザ、お茶が冷めないように『加熱(ヒート)』を掛けてくれていたのか」
 エルザは答えず、ただ柔らかな微笑みを浮かべただけ。その隣では礼子も同じような笑顔を浮かべていた。
「ありがとう」
 そう一言言ってお茶を飲み干した仁は、老君に計算を依頼する。
「老君、破片『特大』がアルスに影響を及ぼすと思われる時間はどのくらいだと思う?」
『はい、御主人様(マイロード)。およそ秒速300キロメートルとして、1000秒間くらいと推測します』
「うん、30万キロ、ユニーの軌道内側に入り、また出ていくまで、ということだな」
『そうです』
 1000秒間、つまり17分弱。
「余裕を見て、30分だけ強力な『障壁(バリア)』を張れれば、影響を少なくできるかもな」
「ジン兄は、どんな影響があると思っているの?」
 今まで黙っていたエルザから質問が出た。
「重力に若干の影響があるかもしれない。それから、剥離した小片がアルスに降り注ぐかもしれない。あるいは、アルスの大気が、破片に奪い取られる可能性も……」
「どれも、好ましくない」
 顔を顰めてエルザが言った。
「ああ。そうならないよう、破片との間に『障壁(バリア)』を張れないかと思ってさ」
「でも、相当大きくないと意味がないんじゃ?」
「そうなんだ。最低でも直径100キロは欲しい。できれば1000キロくらいは」
 1000キロ、と聞いてその途方もない大きさに、エルザは呆気に取られた顔になった。
「確かユニーが直径1700キロだから……!」
「ああ、かなり大きい」
「かなりなんてものじゃないと、思う」
 エルザは、それだけの『障壁(バリア)』に供給される魔力量を想像しようとしたが、見当が付かなかった。
「そうだな、アルスで100年間に消費される自由魔力素(エーテル)くらいかな」
「そんなに!?」
「ああ、大きさを増やすというのはそういうものだ」
 仁は何でもないような顔をしていたが、その内心、消費量の大きさに頭を抱えていたのである。
 直径10メートルの『障壁(バリア)』と直径1000キロメートルの『障壁(バリア)』では、必要な魔力量の差は1×10の10乗もあるのだ。
 これは途轍もない差である。
「それをなんとかするのが『ユニバシウム』なんだよ」
「どういうこと?」
『ユニバシウム』の魔力圧縮効果を使う、と仁は説明した。
「あまり注目されていないが、圧縮効果というのは魔力の位相を揃えて効率を上げることも含むんだ。今回必要なのはそこさ」
 エルザは少し考えてから頷いた。
「レーザー光線と同じ考え」
「そのとおりさ。太陽光は不揃い(インコヒーレンス)な光、レーザー光は揃った(コヒーレンス)光。つまり効率が段違いなのさ」
「なんとなく、理解した」
「おそらく、3桁から4桁、消費量が減るはずだ」
「そんなに!?」
「ああ。だが、制御が難しい。またしてもゴーレムに頼む必要がありそうだ」
 それでも何とかなりそうな希望が見えてきた。
「4桁は、大きい」
 1×10の10乗=100億と、1×10の6乗=100万。
「これくらいなら何とか出来そうな気がするよ」
「ん、同感」
 仁は早速、小指の先程の『ユニバシウム』を使って『整波器(コヒーレンサー)』を作ってみた。
「どんなもんだろうか?」
 早速、『整波器(コヒーレンサー)』付きの障壁発生器(バリアプロジェクター)を起動してみる仁。
「おっ?」
 『分析(アナライズ)』で調べてみると、最低出力だというのに、最高出力以上の強度がでているようだ。
「成功だ!」
「さすが、お父さま!」
「ジン兄、すごい」

 『整波器(コヒーレンサー)』は、発動する前の魔力を通し、その後に魔法を発動させる。
 この時に整列、すなわち『コヒーレント』された魔力は、レーザー光同様に、格段の効果を発揮するのだ。
 その効果はおおよそ20倍。しくも、『エルラドライト』の標準増幅率と同じであった。
「でも、まだ足りないな……」
 10の6乗はまだまだ遠い。
「……難しい」
「まったくな」
 仁もさすがに考え倦ねてきたようだ。
「こういう時は、発想を変えてみるといい、と思う」
 エルザの呟きを聞いて仁も思い出したことがある。
「逆立ちするといい考えが浮かぶとか誰かが言ってたっけな」
 そして。
「逆立ちか……逆立ち……逆……そうか!」
 仁の顔が上がった。
「ジン兄、何か思いついたの?」
「ああ。逆転の発想だ。『障壁(バリア)』をアルスにではなくて、『アドリアナ』に乗せて間を飛ばすんだ」
「え?」
 要は、より破片に近ければ、『障壁(バリア)』の大きさは小さくてもいいはずだから、と仁は説明する。
「中間なら500キロくらいで済むだろう」
「それに、移動しながら、という利点もある」
 エルザの発言に仁は頷いた。
「そうだな! 要は『盾』だ。影響の大きいところを守れば何とかなりそうだぞ」
 アルスに近付く頃には、大型力場発生器フォースジェネレーターの追加も十分で、『アドリアナ』の補助はいらないだろうと思われる。
 そうすれば、この『防御盾』でアルスを『アドリアナ』が守ることができる。
「そのあたりで何とか対策、だな」
 ギリギリ光明が見えてきたようだ。

「よし、製作に入ろう」
 時刻は午後6時過ぎ。
「ジン兄、夕飯食べてから」
「え、ああ、そうか」
 一刻を争う事態ではないので、エルザは仁の身体を優先する。礼子も同じ。
 ちゃんとした夕飯を食べてから、仁は工房へに入った。

「お父さま、お手伝いします」
「私も」
「ああ、頼むよ。礼子は素材を。エルザはこっちのフレームを頼む」
 こうして、蓬莱島では、最後の最後まで手を止めず、できることをやっていくのであった。

 破片がアルス近傍を通過するまで、あと5日である。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160823
(誤)「『ユニバシウム』の魔力圧縮効果を使う、と仁は説明した。
(正)『ユニバシウム』の魔力圧縮効果を使う、と仁は説明した。

(旧)太陽光は揃っていない(インコヒーレンス)な光
(新)太陽光は不揃い(インコヒーレンス)な光

(誤)レーザー光同様に、各段の効果を発揮するのだ。
(正)レーザー光同様に、格段の効果を発揮するのだ。

(誤)「逆立ちすると言い考えが浮かぶとか誰かが言ってたっけな」
(正)「逆立ちするといい考えが浮かぶとか誰かが言ってたっけな」
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