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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

34 破片対策篇

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34-12 できることを

「駄目だったか……」
 正直、要望が全て叶えられなかったということで、仁は少なからず失望した。
 が、落ち込んでいる暇はない。
「『塵も積もれば山となる』の精神だ」
 仁は、今できることを考えてみた。

 1.『モグラ』を使って少しでも破片を削り、転移させる
 2.少しずつでもプラズマ化する
 3.追加で大型力場発生器フォースジェネレーターを作る

「プラズマ化の場合、素粒子……っていうんだっけ? とにかく、消えてなくなるわけじゃないからなあ……」
 弊害が予想付かないという理由で、2はやめておこうと考えた仁であった。
「と、なると1と3だな」
 仁はまず老君に、大型力場発生器フォースジェネレーターを追加で作るよう指示を出した。
 そして次に、『モグラ』を投入することにした。

 『モグラ』は直径2メートル、長さ3メートルの円筒状。現代地球でトンネル掘りなどに使われるシールドマシンに似ている。
 掘削方法は『掘削(ディグ)』の魔導具と、ハイパーアダマンタイト製のチップを使った掘削の2通り。
 掘った土砂は転送機で地上へと排出されることになる。

 この排出された土砂を、『アドリアナ』へと運び込み、転移門(ワープゲート)でどこかへ送り出す。
 どこかといってもあてはあまりないので、とりあえず一旦蓬莱島へ運び込んでしまおうというのだ。
「少しでも軽くできれば」
 これも早速実行された。5機の『モグラ』が転移門(ワープゲート)経由で『アドリアナ』に送り出され、『特大』の破片を削り取るべく動き出したのである。
「老君、『モグラ』の効果はどのくらい見込める?」
『はい、御主人様(マイロード)。『特大』の破片は石質で、安山岩系のようですので、掘削速度は高いです。あと数分お待ちいただければ、平均的な値を出せると思います』
「頼む」
 そして3分が過ぎ、老君が報告する。
御主人様(マイロード)、5機の『モグラ』ですと、1分間に200トンと少しの岩を掘削できます』
「そうすると、1日では……」
『28万8000トンですね。およそ30万トンとして、3×10の5乗トン。これは、3×10の12乗トンという破片の質量から見て誤差範囲です』
「ああ……確かにな」
 1年かかっても1割削れないというのは残念すぎる値であった。
「とりあえず、何か有効な資源が採れるかもしれないから、そのままやらせておいてくれ」
 やはり、大型力場発生器フォースジェネレーターの追加が一番有効そうだ。
 半日あれば、100基の大型力場発生器フォースジェネレーターを追加できる。
 そうすれば、『アドリアナ』の補助と合わせ、大雑把に計算して、アルスを通過する距離を10万キロくらいにすることができるだろう。
 ユニーよりは近いとはいえ、ずっと小さい、つまり質量も小さい天体であるから、これで何とかなるのではないかと思われた。
「だけどなあ……『思われた』で安心していいのか、ってことだよなあ」
 他に打てる手はないかと考える仁。
「アルスの守りも……だな」
 思いついたのは、おそらく到達するであろう『極小』の破片対策。
 夜空に、いや、昼間でも見える流星雨が降り注ぐであろうし、中には地表に達するものもあるかもしれない。
 それらをできるだけ事前に排除する手段。

 1.航空部隊に転送砲装備
 2.コンロン3に転送砲装備

 これらを行い、大気圏内に入ってきた危険な破片を転送してしまうことだろう。
 仁は早速、小口径の転送砲を開発することにした。
 ポイントは、転送範囲の可変、だ。
 広い範囲に効果が出るようにすると、魔力を喰うので転送距離が短くなるが、魔力貯蔵器(マナボンベ)をカートリッジ式に使うことで対処する。
 転送先はとりあえず蓬莱島にしておく。
 選別後、石材として使うのか、廃棄するのかはその時のことである。

 こうして『スカイラーク』500機、『ラプター』500機にも転送砲が順次搭載されていくのだった。

*   *   *

「……さて、10日はマルシアの誕生日なわけだが」
 破片接近は15日と計算で出ている。なので問題ない、わけだが。
「問題なくないよ!」
 本人に打診したら、大慌てで断られてしまった。
「あと5日でアルスが大変なことになるっていうのにさ! それを何とかできるのがジンだけだっていうのに!! あたしの誕生日どころじゃないだろう!?」
 ものすごい勢いで断られてしまう。
「そりゃあ、あたしのこと考えてくれていたのは有り難いけどさ……」
 マルシアはちょっと照れながら、
「だから、今回の騒動が全部済んだら、開いてくれないかな?」
 と、仁に向かって言った。
「そうだな、わかったよ、マルシア。気を使わせてごめん」
 このことは、『仁ファミリー』全員に伝えられたのである。

*   *   *

「さて、あとできることは……」
 仁はエルザと共に、礼子が淹れてくれたお茶を飲みながら考える。
「ジン兄、結局、『ジャック』も慣性をなくす方法は知らなかった、でいいの?」
 質問というか確認である。
「ああ、そうなんだ。以前も『『主人たち』が見つけて中をえぐり、この施設をお作りになりました。その後、今の位置に運ばれたと聞いております』と言っていたからな。手段については知らされてはいなかった」
「残念」
「だな」
 『始祖(オリジン)』は、その技術を遺そうとは思わなかったらしい、と仁は思った。残念なことである。
「もしかしたら、『ヘール』には」
 エルザが言う。
 ヘールには、『始祖(オリジン)』の技術が残っているのかもしれない、と。
「いつか行ってみることができたらいいな」
 そう、この騒動が終わったら、と仁は改めて考えていた。
 でもそれはまだ先のことだ、と、仁は現状を見つめ直す。
「老君、今のところ状況は?」
『はい、御主人様(マイロード)。順調です。大型力場発生器フォースジェネレーターは47基完成』
「わかった。50基できあがったら、第1弾として『アドリアナ』経由で送り込め」
『わかりました』
 少しでも早くから推進力を増やしておきたい仁であった。
「あと、できることは……」
『お待ち下さい、御主人様(マイロード)。たった今入った報告ですが、『モグラ』が掘削した破片からエルラドライト……いえ、『ユニバシウム』の結晶が複数発見されました』
 朗報であった。
「お、そうか。何かに利用できないものか……」
 一時『エルラドライト』と呼ばれた結晶は100年ほど前に発見され、魔力を増幅する効果を持つことで有名だ。増幅率は標準で20倍。
 700672号は『ミティアナイト』と呼んでおり、その後の情報交換で物質名が『ユニバシウム』、鉱物名が『ミティアナイト』であることが判明した。
 太陽の下では水色、人工光の下では緑色に光るのが特徴である。あまりに稀少なので技術利用はほとんどされずに宝石として流通していた。
 増幅とはいっても、トランジスタによる増幅のような意味合いであり、パワーソースがなければ意味はない。
 だが仁なら。
「何かいい使い途は……」
 考え始めた仁であった。
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