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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

34 破片対策篇

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34-08 対策進行中

「……すごい」
 蓬莱島の司令室には、『アドリアナ』から映像が送られてきている。
 今、エルザの目の前には、次々に消えていく破片『中』の様子が映し出されていた。
 皆、偵察用宇宙船の転送砲により、後方へ転移されているのである。
 転移された破片は、どういう原理かはわからないが固有速度を失い、出現した空間、というか、指定した座標に対し『静止』することになる。
 今回は、セラン太陽系の座標なので、事実上軌道上に静止することになる。
 観察によれば、元の速度を失っているのは間違いなく、これなら後にゆっくり対処できるだろうと思われた。

 1個、また1個と順調に処理は進んでいった。
 そしてまず、『中』56個の処置が終わる。

『これから『小』の処置に移ります』
『小』に分類される破片は、今現在確認されたのが187個。
 捕捉、照準、転送、という一連の処理に1個あたり5分とすれば、10隻で行っているからおよそ1時間半くらい掛かる計算になる。
 それだけの時間、エルザは身じろぎもせずに画面を見つめていた。

*   *   *

 仁の身体は蓬莱島の司令室にあるが、意識は『アドリアナ』上の『分身人形(ドッペル)』、仁Dと共にある。
「よし、まずまず順調だな」
 破片『中』と破片『小』は順調に処理されている。ほぼ一箇所に集められており、時間ができたなら資源として活用したいと仁は思っていた。
 そして破片『大』。
『大』にもいろいろあり、最大の物は差し渡し10キロ近く、最小のものは1キロ程度。大きいものには25基、小さいものには大きさに合わせて大型力場発生器フォースジェネレーターを設置していく。
「時間に余裕があってよかったな……」
 こちらは、『大型力場発生器フォースジェネレーター』の設置自体は順調なのだが、その運用で問題が生じている。
 破片は自転していたので、そのままでは進行方向が一定にならないのだ。
 これは、宇宙軍(スペースフォース)ゴーレム『コスモス』を1体ずつ破片に配備し、姿勢制御に大型力場発生器フォースジェネレーターを作動させることで対処中だ。
 若干当初の予定よりも時間が掛かりそうだが、余裕はある。

「実際にやってみて、どうだ?」
 仁Dは『アドリアナ』の頭脳、『大聖』に尋ねた。
『はい、御主人様(マイロード)。自転速度はそれぞれの破片で異なるため、一概に言えませんが、おおよそ20時間ほど掛ければ十分かと推測します』

 つまり、大型力場発生器フォースジェネレーターを使って回転を止めるのに20時間。その後は予定どおりと『大聖』は判断したのであった。

「……それでもなんとか間に合いそうだな。問題は『特大』だな」
 最大長15キロという巨大な破片である。最も細い部分でも9キロある。それがゆっくり回転しながらアルスを目指しているのだ。
御主人様(マイロード)、とにかく回転を止めることが最優先です』
「そうだな、それが結局は早道かもしれないな。急がば回れ、だ」
 今更ここで焦っても仕方ない、と仁は己に言い聞かせた。
『はい。それに、回転が止まれば、この『アドリアナ』も推進力として使えると思います』
「おお、そうだな! 『アドリアナ』の推進力をプラスできれば、少々の遅れは取り戻せるだろうな」
『はい』
 これで、仁も少し気が楽になった。

「破片『大』の処理状況は?」
『はい。現在18個の破片の設置完了です。残り3個は、少々遠く離れているようで、あと1時間ほど掛かりそうです』
「それくらいなら何とかなるな。よし、そのまま続けろ」
『わかりました』

 そして58分後、全ての破片『大』に大型力場発生器フォースジェネレーターが設置完了したのである。
「よし。それぞれの破片にいる『コスモス』はちゃんと大型力場発生器フォースジェネレーターを管理、制御できているな?」
『大丈夫です、御主人様(マイロード)。全員把握しております』
 アルスに向かう軌道から外れれば、まずはよし。できるならば太陽セランに突入する軌道に乗ればなおよし、であった。

「いよいよ破片『特大』の処理だな」
『アドリアナ』は慎重に接近する。
『まず、自転方向を調べ、効果的な設置場所を選定します』
「よし」
 15分ほどの観察により、おおよその回転方向は掴めた。
 それを相殺する方向に推進力を発生させるべく、大型力場発生器フォースジェネレーターを、残る105基のうち、20基を設置することにした。
 回転が止まれば、改めて推進用に使うことになる。
「『コスモス』を500体用意しておいてよかった……」
 仁は内心ほっとしていた。もし100体くらいしか用意していなかったら、300基の大型力場発生器フォースジェネレーターを操作させた場合、『アドリアナ』の要員がいなくなるところであったのだから。
 その作業に取りかかる『コスモス』たち。
 仁Dを操縦する仁も、少し疲れてきた。
「少し仮眠する。『大聖』と『老君』は協力して作業を進めてくれ」
御主人様(マイロード)、わかりました』
御主人様(マイロード)、ゆっくりお休み下さい』
 ということで、仁は蓬莱島の司令室で仮眠を取ることにした。司令室内は空調がなされており、風邪を引くことはない。
「ジン兄、ソファベッドを用意したから」
「お、こりゃいいや、ありがとう」
 折から、仁に何かしてあげられないかと考えていたエルザと礼子が協力し、突貫で作っていたソファベッドが間に合った。

 そして日付が変わる頃。
「ああ、すっきりした」
 3時間ほど仮眠を取った仁は、すっきりと目覚めた。
 見れば、すぐ横にはエルザがソファにもたれて眠っている。
(ありがとう、エルザ)
 仁は、エルザを起こさないよう、礼子の『力場発生器フォースジェネレーター』を使って、今まで自分が寝ていたソファベッドへと運んでもらった。
「これでよし。次は……」
 仁は『分身人形(ドッペル)』の操縦席へと戻った。

御主人様(マイロード)、今のところは全て順調です』
『アドリアナ』の艦橋に戻った仁Dに、『大聖』が報告を始めた。
『ですが、『特大』の破片に『大型力場発生器フォースジェネレーター』を20基据え付け、自転の抑制を始めていますが、まだうまくいっておりません』
「そうか……20基じゃ足りないんだな?」
『はい。重心を正確に特定できないことが一番の理由です』
「そうか……」
 宇宙空間に浮遊する物体を押す場合、重心を通る直線に沿って力を加えない限り、モーメントと呼ばれる力が生じて、物体は回転し始める。
「よし、あと10基、追加で据え付けよう」
『わかりました』
 大型力場発生器フォースジェネレーターの据え付けは、仁の指示がないと出来なかったため、少し後手に回ってしまったようだ。
 とはいうものの、まだ余裕はある。
御主人様(マイロード)、当面の問題として、第2波の問題がありそうです』
「第2波?」
『はい。破片の第2波が後方に確認されました。どういたしますか?』
「そいつらの大きさ、軌道と速度は?」
『大きさは『小』及びそれ以下。速度は秒速30キロ程度。軌道はアルスからかなり離れたところを通過するでしょう』
「それなら様子見……いや、『偵察用宇宙船』に余裕が出来たなら同じように転送砲で対処しよう」
 想像もしていないような不測の事態を引き起こさないとも限らない、と仁は思ったのだ。
『わかりました』
 これで、当面の問題は破片『大』と『特大』である。
 仁の目論見どおりにことが運ぶかどうか。
 それはまだわからなかった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。
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