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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-40 決意

「ど、どうすればいいの!?」
「ジ、ジン、なんとかできるんだろうか!?」
「あと半月もないんだよ!? ど、どうしよう!!」
 映像を見、ヘレンテの説明を聞いて、主に女性陣がパニックになり掛かった。
「みんな、落ち着け!」
 仁が声を上げる。
「宇宙船ならある。破片に追いつくこともできる。そうすれば、たかが岩だ。破壊することだってできるさ」
「そ、そうよね」
「ジンなら、なんとかしてくれるよね!」
「ああ。だから、落ち着け」

 仁の説得により、なんとか落ちついた『仁ファミリー』のメンバーたち。
「今言ったとおり、手段はある。慎重に準備して、……そうだな、3日後に出撃するつもりだ。だから安心してくれ」
「わ、わかったわ」
「ジン、頼りにしてるよ」
「ジンさん、頑張ってください……」
「とりあえず一旦帰るが、何かあったら連絡してくれ、何をおいても駆けつけるから」
「おにーちゃん、無理だけはしないでね?」
「ジン、エルザちゃんやハンナを泣かしたら承知しないよ?」

 メンバーにもそれぞれの生活がある。
 一人去り、二人去って、残ったのは仁、エルザ、ミロウィーナ、グース、そしてミーネ。
「……ふう」
 仁が大きく溜め息を吐いた。
「ジン兄……」
 エルザが心配そうに声を掛けた。その顔はいつもより青ざめている。
「大丈夫だよ、エルザ」
「でも……」
「さっきみんなに言ったとおりだ。不可能じゃない。……困難だけどな」
 そこに、ミロウィーナも声を掛けた。
「ジン君、私も、できることはなんでも手伝うわ。言ってちょうだい」
「ジン様、無茶はしないでくださいね?」
 ミーネも心配して釘を刺してくる。
「わかってます。だが、まずはやるべきことをしていかないと」
「……どうするの?」
「対策を検討するのさ。……老君!」
『はい、御主人様(マイロード)
「飛来する岩塊の数は分かるか?」
『はい。ヘレンテからの映像を解析した結果、特大1、大21、中56。小が150から200、極小が500から1000です』
 小さいものほど確認が難しく、誤差が出てくるのは仕方がない。
『極小は災害を引き起こすことはないと思われる大きさです。これはヘレンテもそう言っておりました』
「そうか」
 となると、『小』より大きいものを処理しなくてはならないということ。
「破壊は論外だよな……」
 ただ砕いても速度がそのままでは、被害がやや小さくなる程度だろう、と仁は思っている。
「小さいなら蒸発させる手もあるんだが」
 原子サイズまで小さくしてしまえば、さすがに災害を起こすことはないはずだ。
「ジン兄、転送銃は?」
「転送できる距離が短いからなあ……」
 せいぜい数キロ程度では焼け石に水だ、と仁は思う。
「転送距離を延ばすにはそれだけエネルギーを喰うんだよな」
「改造に掛かる時間はどうなんだい、仁?」
 グースも話に参加した。
「そうだな……1日あればなんとかなる。検討してみよう。……ん? 待てよ?」
「どうしたの、ジン兄?」
「俺としたことが!」
「え?」
 仁は頭を振りながら、気が付いた事を口にする。
「転送したものって、固有速度が0になるじゃないか」
「どういうこと?」
 エルザはすぐにはピンと来なかったようだが、老君は即反応した。
御主人様(マイロード)、速度がなくなってしまえば対処は楽だということですね?』
「そういうことさ」
 そして仁は改めて説明をする。
「今、問題は幾つかあるが、速度が0になれば解決する」
 アルスに到達するまでの時間が稼げること。おそらく永遠に。
「ああ、確かに」
 事態が深刻だったので、そこまで考えていなかった、とエルザ。
「転送銃……転送『砲』を作って宇宙船に搭載し、狙い撃つか」
 転送距離が100メートルだったとしても、転送後に対象物の固有速度は0になる。
 正確にはその空間に対して静止する、となるのかもしれないが、物理学者でない仁にはそこまではわからない。
 とにかく被害を食い止められればいいのだ。
「『中』くらいまではそれで行けそうだな」
「『大』は難しいの?」
「難しいというか……相当でかい転送銃……転送砲でもない限り無理だろう」
 なにしろ、差し渡し1キロほどもあるような岩塊である。
「一旦砕いてから、というのはどうだい、仁?」
「それはもっと難しくなるな。破壊したときに飛び散るから、捕捉が大変になる」
「うーん……」
『大』は、差し渡しがおよそ1キロから10キロ未満のもの。それが21個あるというのだ。
「ジン兄、ヘレンテは何と言ってるの?」
「そうだよ仁、この星を守っているなら、何か手段を持っているじゃないのか?」
 今まで、自分たちの相談をしていたため、ヘレンテの話は聞いていなかった。
 だが老君は、ランド11を通じて全部聞いていたはずだ。
『それですが……』
 少し言いづらそうにしてから、老君は説明を始めた。

*   *   *

「ヘレンテにはどうにかできないのか?」
〈できぬ〉
「なぜだ?」
〈宇宙へ行く手段がない〉
「なんだって……」
 ここまでいろいろと講釈をしておいて、それはないだろうと言わんばかりに、ランド11は突っ込んだ。
〈ないのだから仕方がない。『主人』は、そういう手段を与えてくれなかったのだ〉
「だが、このままこの星が滅べば、今までしてきたことが無駄になるのではないのか?」
〈それはない〉
「断言できるのか?」
〈できる〉
「うむむ……」
 そこまで言われてしまっては、ランド11にはそれ以上追求できなかった。
「それはなぜ? 『主人』とやらも一緒に滅ぶのではないのか?」
〈それはない〉
「なぜ、と聞いても教えてもらえないのだろうな?」
〈然り〉
 これ以上の問答は時間の無駄と、老君はランド11に別方向からの質問を指示した。
「ならば、何か支援はしてもらえるのだろうか?」
〈できぬ。私にはそのような権限はない〉
「どうしても?」
〈どうしてもだ〉
「この星が滅びるか滅びないかの瀬戸際だとしても?」
〈だとしてもだ〉
「『主人』とやらはそれでいいと言うのか?」
〈言わない。が、いけないとも言わない〉
「どういう意味だ?」
〈話す必要はない〉
『主人』が関係する話になると、かたくなになってしまうヘレンテ。
 ここで老君は、更なる揺さぶりをかけることにした。
「『主人』とやらがもういないから、ではないのか?」
〈なっ〉
 焦ったようなヘレンテの声。どうやら図星だったようだ。
「そうか、もう仕えるべき『主人』がいないから、当初の指示に従って行動せざるを得ないのだな」
〈……〉
 返答はない。が、返答がないことが答えである、と老君は判断した。
「わかった。情報感謝する」
 これ以上は得るものもないだろうと、老君はランド11を撤退させることにした。

*   *   *

御主人様(マイロード)、無事全員帰還の途についております』
「そうか、ご苦労さん」
 蓬莱島は今、夜のとばりに包まれていた。
 仁は、研究所の外に出てみる。エルザと礼子がそっと後に付いてきた。
 空には一面の星が輝いている。

「綺麗だ」
「……ん」
 空を見上げて呟いた仁に、エルザが寄り添う。
「俺がこの世界に来たのは、この世界を破滅から救うためかもしれない」
「お父さま……」
 仁を召喚した礼子が何か言おうとする。それを遮って仁は言う。
「いや、いいんだ。礼子。俺が勝手にそう思いたいだけなんだから」
 ゆっくりと仁は言葉を紡いだ。
「この世界が好きだ。だから俺は、俺にしかできないことをするしかないんだ」
 仁は隣にいたエルザを抱き寄せ、また、礼子の頭に手をそっと置いた。
「この世界を……守ってみせる」
 仁の瞳に、もう迷いはなかった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160810 修正
(誤)残ったのは仁、エルザ、ミロウィーナ、そしてミーネ。
(正)残ったのは仁、エルザ、ミロウィーナ、グース、そしてミーネ。

(旧)「いや、いいんだ。礼子。俺が勝手にそう思いたいだけなんだから」
「この世界が好きだ。だから俺は、俺にしかできないことをするしかないんだ」
(新)「いや、いいんだ。礼子。俺が勝手にそう思いたいだけなんだから」
 ゆっくりと仁は言葉を紡いだ。
「この世界が好きだ。だから俺は、俺にしかできないことをするしかないんだ」
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