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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-39 災害の予兆

「なるほどな……」
 蓬莱島の司令室で、仁は何度も頷いた。
「かなり自由魔力素(エーテル)分布の謎が解けたよ」
『ですね。有益な情報でした』
 老君も同意した。
「ところで、おそらくは魔導頭脳なんだろうが、その計算能力は凄そうだな」
『はい、御主人様(マイロード)。おそらく私の数倍はありそうです』
「さすがは『始祖(オリジン)』、といったところか」
『それにしてもあと半日、ですか。何が起きるのでしょう』
「そればかりは起きてみないとわからないな」

*   *   *

 待つ時間は長い。仁も、司令室でずっと座っていたわけではない。
 食事、入浴、エルザとの歓談。
 そして、ファミリーメンバー全員に連絡、招集した。

*   *   *

 蓬莱島時間で3458年10月3日、午後1時。
 ミロウィーナを含む、『仁ファミリー』全員が司令室に集まっていた。
 見つめるのはランド11の目と同期して送られてくる映像。
 聞き耳を立てるのは、同じくランド11が聞いた音声。
 司令室の魔導投影窓(マジックスクリーン)には、高速で近付く『長周期惑星』=『モデヌ』が大写しになっていた。
 ペンゴルタのガス雲は、モデヌに引き寄せられ、歪んでいる。

「凄い迫力だな」
「この映像が、居ながらにして見られるとはね」
「ジン君以上の技術力ということね。怖ろしいわ」
 宇宙空間に仮想の望遠鏡を組み上げ、それを用いて映像を送ってくる技術。『始祖(オリジン)』の技術には目を見張るものがある。

 午後1時半。
『モデヌ』と第5惑星『ペンゴルタ』の距離は急速に縮まっていく。
御主人様(マイロード)、モデヌの軌道、少しずれたようです』
「何だって!?」
『おそらくペンゴルタの重力のせいでしょう。予想以上にペンゴルタに接近すると思われます』
「ううん……」
 午後2時。
「うわっ!」
「こ、これは……!」
 モデヌがペンゴルタとの衝突軌道を取っていることは誰の目にも明らかになった。

*   *   *

 蓬莱島の正反対にある『オノゴロ島』の地下では、『ヘレンテ』とランド11が映像を見つめていた。
〈これはニアミスではないな。衝突だ〉
「こんなことがあり得るのか?」
〈宇宙という広大な空間で2つの天体が衝突するなど、0に近い確率でしかない。だが、完全な0ではなかった故、と言うしかないな〉
「……重力、という要因もあることだしな」
 ヘレンテは笑うような仕草をした。
〈そうだな。その意見は正しい。第5惑星はその巨大な重力故に、モデヌを引き寄せた。その結果がこれだ〉
 スクリーンの中では、今しもモデヌとペンゴルタが衝突せんとしている。
〈正対した衝突ではなく、掠めるような衝突であろうが、それでもこの結果の予想はまったくつかぬ〉
 ヘレンテでさえもそう言わざるを得ない状況。
 この衝突がどれほど有り得ない現象かがわかろうというもの。

 宇宙的規模で起きている、惑星同士の衝突。それは、人間の目にはスローモーションにしか見えないが、実際は秒速数百キロで起きているのだ。
〈ガス雲の中でもの凄い雷が発生しているようだな〉
 外からもはっきり分かる程の閃光がひらめいている。
 モデヌは、ペンゴルタのガス雲の中に潜り込み、見えなくなってしまった。
〈あの軌道であれば、核があったとして、掠めるような衝突になると思われる〉
 衝突の大半はペンゴルタのガス雲と、であるようだ。
 そして再びモデヌが現れる。
「おおっ!」
 ランド11も、思わず叫び声を上げるほど。
 モデヌの軌道は、斜め上……セラン太陽系の惑星公転軌道面から見て……に変わっていたのだ。
〈衝突によって軌道が変わったようだな〉
 そして、次の瞬間。
「あれは……破片か!?」
 大小様々な岩塊が、ガス雲から飛び出してきたのである。
 その細かいものはペンゴルタの重力に囚われたようだ。
〈ふむ、小さい破片は衛星になるやもしれぬな〉
「だが、大きい破片は?」
 遠ざかっていくモデヌを見れば、4分の1程が欠け、歪に見えている。
 一方、ペンゴルタの核がどれくらい欠けたのかは、厚いガス雲のために確認することはできない。
〈大きい破片の幾つかは……モデヌの固有速度をほとんど保ったまま、元のままに近い軌道を進んでいるようだな〉
「それは、結構まずい状況なのではないのか?」
〈そのとおりだ。あの破片の大きさだと、このアルスの重力に捉えられ、落下してくる可能性が大だ〉
「やはり」
 比較対象がないので大きさの見当が付かないが、ペンゴルタの重力を振り切って飛び去る破片の数は、大きいものがおよそ20個。中くらいのものが50個。小さいものは数え切れない。
〈小さいといっても、大半のものは差し渡し10メートルは下るまい。大きいものになると差し渡し10キロはあるだろうな〉
 それらの1割でもアルスに落ちてきたら大災害になりうる。
 宇宙を漂う宇宙塵ではなく、秒速数百キロという運動エネルギーを持っているのだから。
「どうすればいい?」
〈どのくらいの破片がアルスに到達するか、計算と確認には2日ほど掛かる〉
「で、到達予想は?」
〈激突時の運動量変化を考慮し、ざっと計算すると10月15日前後だ〉
「あと半月足らずか……因みに、どんな災害が起こりうる?」
〈小さい破片でも、この惑星上の生命が危険だ。数個落ちれば生命が滅ぶ〉

 ツァーリ・ボンバという名称の核爆弾がある。
 旧ソ連が開発した人類史上最大の水素爆弾で、そのエネルギーは広島型原子爆弾の3300倍という。
 差し渡し1メートル程度の破片でも、そのツァーリ・ボンバ以上の運動エネルギーを持っている計算になるのだ。

「どうすればいい?」
〈あの破片すべてをなんとかしなくてはならないだろう。それには途方もない困難がつきまとう〉
「その内容は?」
〈まず、ここから7億キロほども離れた宇宙空間へ行かねばならないこと〉
「それから?」
〈破片を捕捉する必要があること〉
「あとは?」
〈破片をどうにかする手段を持っていること。これらを10月15日になる前にすべて終わらせなければ……この星は終わりだ〉
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