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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-32 終幕と開幕

 礼子とランスは砦の外へ出た。空には『コンロン3』がシルエットになって浮かんでいる。
 礼子は気絶させ、縛り上げた盗賊3名を頭上に掲げるようにして運んでいる。なかなかシュールな光景だ。一方ランスは大荷物を背負っている。
「どうします? スホント山まで送りましょうか?」
 大荷物を背負ったランスに、礼子が申し出るが、ランスは首を振った。
「いや、そこまでしていただく必要はない。私はこのまま歩いて戻る」
「そうですか。では、ここでお別れですね」
「ああ。世話になった」
「いえ。それでは」
 礼子は盗賊3名を持ち上げたまま、高度を落とした『コンロン3』目掛けてジャンプ。開いていた出入り口に見事飛び込んだ。
 もちろん、『力場発生器フォースジェネレーター』でサポートしているのだが、ランスにはわからない。
 そして、ランスが見ているうちに『コンロン3』は高度を上げ、やがて夜空に溶け込んでいったのである。

「……礼子嬢、か」
 独りごちたランスは、大荷物を背負って、拠点であるスホント山を目指して歩き出した。

*   *   *

「お父さま、ただいま帰りました」
『コンロン3』に乗り込んだ礼子であったが、一足早く備え付けの転移門(ワープゲート)で蓬莱島に帰島している。
 盗賊のほうは、エドガーがこっそりとショウロ皇国に運び、『デウス・エクス・マキナ』の名で警備に引き渡す手筈となっている。

「ごくろうさん、礼子」
 仁が礼子を迎え、ねぎらった。
「ランスを修理した時に、魔力パターンを記録しておいたからな。転送機で送り出すのはまったく問題なかったよ」
 そこに、老君からの報告が入る。
御主人様(マイロード)、砦跡の調査が終わりました』
「お、そうか」
 更に仁は、『不可視化(インビジブル)』で姿を消した第5列(クインタ)ミラ5と6、通称『リエ』と『ルシル』をスホント山で見張らせていたのである。
 故に、ランスを追跡し、砦跡でのことも把握できたのだ。

『ランスが回収してしまいましたので、めぼしいものは残っていませんが、一般資材が少しと、設計資料が幾つか手に入りました』
「内訳は?」
『はい、資材は鉄120キロ、青銅45キロです。設計資料は『統一党(ユニファイラー)』時代に研究されていたゴーレムのものですね』
「資材は朽ちさせるのももったいないから回収して、懐古党(ノスタルギア)に引き渡してくれ。資料は何かの参考になるだろうから、そっちも回収だ」
『わかりました』

 こうして、一連の騒動に幕が引かれたのであった。
 ショウロ皇国では、盗賊団逮捕に動き出す前に解決したということになる。

*   *   *

『南極調査艦隊』が極点に到達したのは9月最後の日、30日のことである。
『老君了解。調査を開始して下さい』
『了解』
 マーメイド隊は、すぐに海中の調査を開始した。念のため、スカイ隊が上空を飛行、マリン隊が海上を遊弋ゆうよくして、万が一に備えて警戒している。

 ほぼ同時に、『オノゴロ島』の調査も開始された。
 仁は、この機会に世界地図の名無し部分に命名することにした。
 ちょうどグースが来ているので、相談しながらだ。
 因みに、調査計画立案に協力してくれたトアは、家に戻ってしまっていた。

「そうだな、この前の、生物相が保存されている群島は『ラーモン群島』というのはどうだろう? 100年くらい前の博物学者の名前なんだ」
「うん、いいな」
「こっちの大陸はどうしようか……」
 人類が棲む、ローレン大陸の西、南半球にどっしりと構える大陸。
「冒険家の名前を付けたらどうかと思うんだが」
 仁の言葉を受け、グースが考え込む。
「なら、『ラシール大陸』はどうだ? こっちは500年くらい前の冒険家で、ハリハリ沙漠を単独で横断したと言われている」
「悪くないな」
 残るは北にある大陸だ。他の大陸に比べてやや小さく、東には大きい群島を連ねている。
「『パンドール大陸』、というのは?」
 そこへやって来たエルザの進言である。
「昔聞いた、お伽噺に出てくる魔法使いの名前。北の地からやって来たと言われてるから」
「そのお伽噺って有名なのか?」
 仁は聞いたことがないので尋ねてみる。
「ん、かなり有名だと思う」
 そこへ老君も報告を入れる。
御主人様(マイロード)、今ヴィヴィアンさんに連絡して聞いてみましたところ、セルロア王国でも同じようなお伽噺はあるそうです。同様に、エゲレア王国・クライン王国・フランツ王国・エリアス王国にも似たような話があり、名前も『パンドア』とか『パンドル』程度の違いしかないのだとか』
「おお、そうか。ならいいかもな」
 こうして、無名だった大陸にも名前が付いたのであった。

「で、いよいよ『オノゴロ島』調査開始なんだろう?」
 命名というイレギュラーな話し合いのあと、グースは興味津々といった顔をした。
「そうなるな。グースもトアさんや老君といろいろ相談したんだろう?」
「うん、まずは地形を上空から把握すること。それから探検ルートを決める、という流れだな」
『地形はこうなっております』
「おお、なるほど」
 中心にある島本体を囲むようにして三日月型に岩が取り囲んでいる。開口部は東に向いており、島本体とは西側で繋がっている。
 開口部には幾つかの岩、あるいは小島があるようだ。
 中央の島本体は差し渡し15キロくらい、周囲を囲む岩は最大径50キロくらいであろう。
「位置的になんとなく不自然だな」
「仁もそう思うか? 俺もそう思う。根拠は、といわれると苦しいんだが」
「まあ、な」
 だが、大陸……『ラシール大陸』に近すぎるうえ、他の島との関連性もなく、形も少し不自然に見える。
 それを言ったら、蓬莱島もそうなのであるが。
「もし、人工島だったら……」
「え?」
 黙っていたエルザがぽつりと呟く。
「ううん、ただの想像。……自由魔力素(エーテル)を自由にできるような存在なら、島だって作れると思った、だけ」
「確かにな」
「否定はできない」
 仁とグースは考え込んだ。
「島の調査は慎重に進めてくれ」
 老君にそう告げた仁の胸中には、700672号から聞いた『守護神(ガーディアン)』の存在があった。
「敵対せず、調査できないなら、保留してもいいな」
『わかりました』
 静かな声で老君が言った。

「それなら、地形の再確認をしよう。岩の質を調べてみれば、人工島かどうかの判断材料にもなるんじゃないかな?」
 グースの意見に仁も賛成する。
「ああ、そのとおりだな。まず外周の岩から調べてみてくれ」
『早速行います』
 こうしたことにはマーメイド隊が適任である。
 老君は、慎重に作業を行い、報告を密に行うよう指示を出した。

 いよいよ、アルスの謎、そのベールの1つが剥がされようとしている。
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