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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-31 救援と感傷と

「貴殿は……礼子嬢!?」
 いきなり現れた礼子を見て、驚愕の表情を浮かべるランス。
「話は後です。あいつを止めればいいのですね?」
「あ、ああ。だが、出来るだけ傷付けないでくれるとありがたい」
「わかりました」
「何をごちゃごちゃ言っている! 貴様は誰だ!!」
 ロンダー=自動人形(オートマタ)は、いきなり現れた礼子に警戒をし、距離を取っていた。
 少女の姿をしているが、いきなり出現したことといい、ランスが対等に扱っていることといい、只者ではないと推測したのだろう。
「お初にお目に掛かります。わたくしの名は『礼子』。お見知りおきを」
 スカートの裾をちょいと摘み、略式のカーテシーで会釈をした礼子を、ロンダー=自動人形(オートマタ)は呆れたような顔で見つめていた。
 そして隣にいるランスも。
「……といいますか、元『統一党(ユニファイラー)』の幹部でしたら、わたくしのことをご存じないのですか?」
「何……?」
 そう言われたロンダー=自動人形(オートマタ)は、改めて礼子をまじまじと見つめ……。
「お、お前は!?」
 驚愕を顔に浮かべた。
「『漆黒の破壊姫』か!」
 やはり、統一党(ユニファイラー)と蓬莱島軍の一戦を見ていたのだろう。礼子のことを思い出したようだ。
「……面白い。この身体ならお前にも対抗できるはず……」
「あなたは、頭が悪いのですか?」
 皆まで言わせず、礼子が口を挟んだ。呆れた口調である。
「途中から見ていましたが、あなたは当時の『エレナ』よりも弱いですよ?」
「そ、そんなはずはない! この身体は、万能ゴーレム、戦闘用ゴーレムをベースに、更に改良したものなのだ!」
 だが礼子は首を横に振る。
「いえ、実際にエレナと対峙したわたくしにはわかります。エレナはあなたよりもずっと素晴らしい自動人形(オートマタ)でしたよ?」
「う、う、う、うるさい!」
「……少々情緒不安定ですね。ランスさん、どう思われますか?」
 いきなり礼子に話を振られたランスは驚きながらもその問いに答える。
「あ、ああ、礼子嬢の言うとおりだ。多分、元になる思考回路の設計が稚拙なのだろう」
 そのあたりは魔法工作士(マギクラフトマン)の腕が出るとランスは言う。
「洗練された『設計基(テンプレート)』は使われていないのですね」
「『設計基(テンプレート)』、か。なるほど、完成された思考回路ならそれは有効だろうが、奴の場合は自作だろうからな」
 落ち着き払って会話する2人を見て、ロンダー=自動人形(オートマタ)は更に激昂する。
「疑似感情を制御できていないのも不完全な証拠だな」
「うぬぬ、ふざけおって!」
 ついに我慢しきれなくなったか、ロンダー=自動人形(オートマタ)が飛び掛かってきた。右拳が礼子を襲う。
「なにっ!?」
 だが、礼子はそんなロンダー=自動人形(オートマタ)の右拳を、易々と受け止めたのである。
 そして、更に繰り出された左拳も受け止める。
「く、こ、このぉ!」
 更に更に、右脚の前蹴りを、礼子は左脚の蹴りで弾き返した。
「く、あ、は、放せぇ!」
 ロンダー=自動人形(オートマタ)の拳は、礼子に握り締められたまま、引き剥がそうにも剥がせないようだ。
 よく見ると、礼子の細い指が、ロンダー=自動人形(オートマタ)のごつい拳に食い込んでいる。
「ランスさん、壊すなと言いましたが、まるきり無傷は難しいです」
「あ、ああ。少々は仕方ない」
「そうですか」
 その言葉を聞き、礼子は手に『軽く』力を込めた。
「う、うわあああああ!」
 それだけでロンダー=自動人形(オートマタ)の両拳はひしゃげる。
 更に礼子は、両肩と両股関節に、目にも止まらぬ速さで貫手を繰り出した。
「がっ!」
 その攻撃により、両肩関節と両脚の股関節は脱臼。
 ロンダー=自動人形(オートマタ)は身動きの取れない状態になった。
「こ、これが、『漆黒の破壊姫』の実力か……読み切れなかった……無念」
 ゆっくりと床に倒れ込むロンダー=自動人形(オートマタ)

「これでいいでしょうか?」
「あ、ああ。助かった。しかし、礼子嬢はお強いのだな」
「お父さまがそうあれ、と作って下さいましたから」
「そうなのか……」
 ランスは少し考え込む様子を見せた。
「製作者と自動人形(オートマタ)の関係は……自動人形(オートマタ)の構造とは関係ないのだな……」
「は?」
「いや、独り言だ。……とはいえ、礼子嬢になら話してもいいだろう」
 そう前置いて、ランスは語り始めようとした。
「あの、こっちは放置していていいのですか?」
 そんなランスを見て、礼子が言う。
「それもそうだな。……しかし、どうやって停止させるか」
「くう……! 『漆黒の破壊姫』に逆らったのが運の尽きか……」
 床に倒れ、藻掻くだけのロンダー=自動人形(オートマタ)
「少々強引だが、この手しかないな」
「ま、待て! 何を……………………」
 ランスは、ロンダー=自動人形(オートマタ)の首を掴むと、180度捻った。
 ぐきり、と音がして、ロンダー=自動人形(オートマタ)は動きを止めたのである。
 頭部にある制御核(コントロールコア)と身体との接続が切れたらしい。
 当然、魔力素(マナ)の供給も途絶えるから、停止することになる。

「あとは盗まれた部材だが……」
 大半はロンダー=自動人形(オートマタ)のボディを組むために使われたらしい。
「今さっきまで弄っていたらしい転移門(ワープゲート)の部品くらいか……」
「え、ですが、これは……」
 礼子は転移門(ワープゲート)設置のエキスパートなので、その転移門(ワープゲート)がおかしいことに気が付いたのだ。
「礼子嬢もわかるか。この転移門(ワープゲート)には制御盤がない。その部品は持ち出されていなかったし、作れなかったのだろう」
 高々10年やそこらで、全ての技術を会得できるわけがないのだ、とランスは薄く笑った。

「他に持ち帰るものはないのですか?」
 礼子の質問にランスは頷く。
「うむ。警邏けいらゴーレムがいたが、あれは無視してもいいだろうしな」
 だが、礼子はそれに反論。
「それは駄目でしょう。ちゃんと停止させてあげないと」
 そう言って、部屋の外へ。
 そして2分ほどで戻ってくる。
「2体いましたが、ちゃんと停止させ、空き部屋に寝かせてきました」
「……礼子嬢、どうして低級なゴーレムにそこまで?」
「低級も高級もありません。ただ不憫だと思ったからです」
「不憫……か……そんな感情を持つのだな……貴女は……」
「え?」
「いや、なんでもない」
「ああ、あと、盗賊の仲間が3人いましたので気絶させて縛っておきました」
「手間が省けて助かる。では、荷作りをするとしよう」
 ランスは動かなくなったロンダー=自動人形(オートマタ)転移門(ワープゲート)の主要部品を荷作りする。
 といっても、転移門(ワープゲート)の部品はわずかである。
「では、私は帰る。……そうそう、礼子嬢、先程言いかけたのは、礼子嬢がまぶしかったからだ」
「はい?」
「もちろん比喩で、だが。……礼子嬢と、礼子嬢を作った……いや、父上である仁殿とが固い親子の絆で結ばれているのを感じたのでな」
「はい、わたくしはお父さまが大好きですし、お父さまもわたくしを大事にしてくださいます」
 それを聞いたランスは、少し寂しそうな笑みを漏らした。
「少し、羨ましいな……いや、ただの感傷だ、聞き捨ててくれ」
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160801 修正
(誤)そんなランスを来て、礼子が言う。
(正)そんなランスを見て、礼子が言う。

(旧)いや、ただの感傷だ、聞き捨てにしてくれ」
(新)いや、ただの感傷だ、聞き捨ててくれ」

(旧)ちゃんと停止させてやらないと」
(新)ちゃんと停止させてあげないと」
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