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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-27 猶予期間

「災害時の備え、ね……」
 ショウロ皇国では、女皇帝が仁から届けられた書簡に目を通していた。
「ジン君が何の根拠もなしにこんなこと言ってこないでしょうしね。宰相、どう思います?」
 女皇帝は、執務机の向こう側に座る宰相に書簡を見せた。
「……これは……確かに、内容は理解できます。ですが、緊急性があるのですかな?」
「ある、んでしょうね。こんな魔導具も一緒に送ってくるということは」
「ですなあ。『崑崙君』が意味のないことをするとは思えませんし」
「宰相、任せていいですか?」
「は、陛下。3日いただきたい。その間に方針を決定いたします」
「ええ、お願いね」

 セルロア王国、フランツ王国、クライン王国、エゲレア王国、エリアス王国でも同じような反応が見られた。
 これまでの仁の実績がものを言い、魔導具も同梱されていたということで、各国共差はあるにせよ、災害対策について真剣に考慮を開始したのである。

「災害……」
「『魔法工学師マギクラフト・マイスター』からの連絡だ、すぐに手を打とう」
 ミツホでもすぐに対策が立てられた。
 同時にフソーにも連絡は行き、それなりの対策は取られることになったようである。

 そして魔族領。
 こちらには、『福音の氏族』経由で700672号からもそれとなく連絡が入っていたようで、すぐに対策が講じられる。

 その報を聞いた仁は、ひとまず胸を撫で下ろしたのである。

*   *   *

 そして仁は、700672号と対談していた。
「ふむ、明日にはペンゴルタとニアミス、ということか」
「ええ。その結果が予想できないんです」
「さもあらん」
 自分にもわからない、と打ち明ける700672号。
「そもそも、吾には宇宙関係の知識は乏しいのだ」
 そういった作業は200000番以前の従者が専門だった、と言う。
「いずれにしても、観測は続けた方がいいな」
「ええ、それはもちろんです」

 それから仁は、『南極観測艦隊』の成果も説明した。
「ふむ。よくやっておられる」
 700672号は仁を讃えた。
「一見、『長周期惑星』とは無関係のようにも見えるが、吾はその調査に意味があると思う。ジン殿はそのまま続けるがいい」
「ありがとうございます」
「このアルスへの脅威を取り除こうと思うのなら、そのアルスのことを少しでも知らなければならない。ジン殿のやっているのはそういうことだ」
 700672号は、仁の方針を認め、褒めたのである。
「しかし、特異点が自由魔力素(エーテル)の通りやすい地層、ということか。なるほどな」
 これについても、700672号は仁の推測を認めたのである。
「ほぼそれは間違っていないだろう。だがそうなると……」
 そこで言葉を一旦区切ったあと、少しトーンを落として再度口を開く700672号。
「南に何かがあるとすれば、『守護神(ガーディアン)』も置かれているはずだ。気を付けられよ」
「『守護神(ガーディアン)』、ですか」
 仁は文字どおりの『守り神』として、専用のゴーレムなどを『守護神(ガーディアン)』と呼ぶことは知っていた。
「左様。守護神(ガーディアン)は、施設を守ることのみを目的としている。そこに例外はない」
「説得はできない、ということですね」
「然り」
始祖(オリジン)』の技術がいかほどのものかはわからないが、気を付けよう、と仁は思った。

 それからも幾つか細かい注意を受けた後、仁は700672号の下を辞した。
「ありがとうございました。また報告に来ます」
「うむ、しっかりな」

*   *   *

「老君、『南極観測艦隊』の方はどうだ?」
『はい、御主人様(マイロード)。南緯60度を過ぎたところですが、海が荒れており。進行速度が半減しております』
 地球では、南極に向かう際の表現として、『吠える40度』『狂う50度』『叫ぶ60度』などと言われていた。

 これは、そのあたりが暴風圏になっており、海が荒れているということである。
 このアルスは、比較的穏やかであるが、やはり暴風圏は存在するようだ。

「無理はしないようにな。で、『オノゴロ島』の方はどうだ?」
『はい、グースさんにも相談し、調査計画を立ててみました。明日から別働隊が調査開始予定です』
「それならいいか……あれ、グースだけか?」
『いえ、トアさんも参加して下さるそうです』
「ならいい」
 探検の計画にグースだけが参加、と聞くと少々不安になった仁であったが、トアも、ということなら安心だ、と思い返した。

 いよいよ『長周期惑星』が接近してきて、仁は何をすべきかいろいろと考える。
 守るべきものは多く、自分の手は小さい。
「それでも、ベストを尽くすしかないしな」
「そうですよ、お父さま。わたくしがお手伝い致します」
 礼子が物想いに沈む仁を元気づけた。
「ありがとうな、礼子」
「はい、わたくしはお父さまの影です。いつも一緒です」
 そんな礼子の頭を撫でながら、仁は気になっていたことを老君に確認する。
「老君、『ランス』たちはどうしたろう?」
 すぐに答が返ってくる。
『はい、御主人様(マイロード)。デガウズ魔法技術相は、ランスと毎日やり取りをし、その技術の一端を習っているようです』
「へえ? ギムナスのことはまだなのか」
『そのようです。ランスは焦っていないようですね。むしろ、ショウロ皇国の居心地といいますか、誠実さを確かめているようにも見受けられます』
 ランスにとって、ギムナスはただ1人残った『主人』である。慎重にならざるを得ないのだろう。
「わかった。で、盗賊の方はどんな手が打ってあるんだ?」
『はい。ショウロ皇国からセルロア王国に『魔素通話器(マナフォン)』で連絡が行っております。セルロア王国でも動いているようですが、『懐古党(ノスタルギア)』がいち早く察して動き出したようです』
「なるほどな。やっぱり『統一党(ユニファイラー)』の残党だったのかな」
『エレナによると、そうらしいですね』
 統一党(ユニファイラー)には、洗脳されずに所属していた者も多数いる。
 また、洗脳すると、どうしても意志の力が弱くなり、創造性が落ちる傾向にあるのだ。既存の技術を使わせるにはよいが、新しいものを研究させるには不都合である。
『ですので、そういった研究所のトップたちには、洗脳されていないものが就いていたのでしょう』
「なるほどな。洗脳された者がお目付に付いていればいいしな」
『そういうことですね』
 ということなら、懐古党(ノスタルギア)に任せておけばいいだろう、と仁は思った。
「エルザはどうしてる?」
『はい、非常時に備えて、回復薬を沢山お作りになっていらっしゃいます』
「ああ、そうか。さすがだな」
 仁は、無理をしないように言いに行こう、と席を立つ。
 礼子もそれに続いたのであった。
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