挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

1239/1679

33-24 トアの誕生日

「誕生日、おめでとうございます」
 9月28日はサキの父、トアの誕生日である。
 蓬莱島には仁ファミリーが勢揃いし、祝っていた。
「ありがとう!」
 トア・エッシェンバッハ、45歳の誕生日である。
「この歳になって、これほど嬉しい誕生日が来るとは思っていなかったよ」
 そう語るトアの隣にはステアリーナが寄り添っている。
「父さん、ボクと2人だけの誕生日は嬉しくなかったのかい?」
 顔を覗き込むようにしてサキが言うと、トアは顔を赤らめた。
「い、いや、そんなことはないぞ。お前と2人で、という誕生日も十分有りがたかった」
「くふ、お世辞はいいよ。その顔を見ればよくわかるからね」
「……」

「まあ、ユリアーナちゃん、ごきげんね。人見知りもしないのねえ」
 ベルチェの腕の中にはラインハルトとの子供、ユリアーナがいて、賑やかな雰囲気にはしゃいでいる。
「ええ、近頃は夜泣きもしなくなりましたし、随分と重くなりましたわ」
「マルシアの小さい頃を思い出しますなあ」
 ヴィヴィアンやロドリゴがユリアーナの顔を覗き込み、相好を崩している。

 一方、ラインハルトはワインを片手に仁と話していた。
「ジン、みんなが集まっているんだから、何か知らせることもあるんだろう?」
「ああ、もちろんさ。幾つか新事実もわかったしな。宴会が一段落したら話そうと思ってる」
「楽しみだな」

 それからも和気藹々と宴は進んでいく。
 今回の目玉料理は『ウナギの蒲焼き』だ。
「なんだかいい匂いがするねえ」
 鼻のいいサキが嗅ぎつける。
「お待たせしました」
 その直後、ゴーレムメイドたちが蒲焼きを運んできた。
「おお、お、これは!?」
「魚……かな?」
「醤油系のソースだね」
「凄く香ばしい匂い……」
 驚き、興味を寄せる面々に、仁が説明を始める。
「ええと、これは『蒲焼き』という料理だ。細長い魚を割いて、一旦白焼きして余分な油を抜き、タレを付けてもう一度焼いたんだよ」
「細長い魚か……何だろう?」
 グースが首を捻っている。
「さ、魚だよね、蛇じゃないよね?」
 サキは何を想像したのか、仁に改めて念を押した。
「魚だよ」
 仁は安心させるように頷き、更に言葉を続ける。
「この魚は『ウナギ』だ。竜頭ウナギじゃないぞ? 南半球の海で、マーメイド隊が見つけ、送って寄越したんだ」
「へえ、南半球の……」
 グースは詳しい話を聞きたそうにしている。
「まあ、まずは食べてみてほしい。好みによって、この山椒の粉を振りかけるとより美味しいぞ」
「あ、それって、この前フソーで手に入れたハーブだね?」
 同行していたサキも、思い出したようだ。
「そのとおり。これは実を挽いて粉にしたものさ」
「あ、いい香りがするわね」
 ビーナも鼻をひくつかせている。
「これって栄養もあるから、妊婦さんにもいいと思うよ」
「え、そうなの?」
 ちゃんと『分析(アナライズ)』で調べた結果だ。
 見た目がウナギっぽくても、毒を持っていたらまずいので事前に調べたのである。
「では、いただきます」
 まずはトアが箸を付ける。練習の結果、和食系は箸で食べられるようになったのだ。
 トアが箸を付けたのを見て、他の面々も食べ始めた。
「うん、美味い!」
「美味しいわね。脂が乗っていて、でもしつこすぎないわ」
「この『さんしょ』? の粉を振りかけると香りがいいわね」
「さんしょ、でもいいけど、正しくは『サンショウ』だよ」
「ほんとだ! おばあちゃん、美味しいよ!」
「ほんとにねえ」
「このタレ、だっけ? 甘さとしょっぱさ、それに旨味が感じられて、絶妙だね」
 蒲焼きが好評だったので、仁もほっとしていた。
「この『うなぎ』、こっちの大陸では見ないよな……」
 蒲焼きをお代わりしたグースが呟いている。
 仁はそろそろ話す頃合いかと、説明を開始することにした。
 食べながらなので、深刻でない話題から始める。主に、『南極調査艦隊』から報告のあった生物相のことについてだ。

*   *   *

「……ということなんだ」
 ゆっくりと説明した仁は、お茶を一口飲んで喉を潤した。
「ふうん、その『箱船』というものがなんだかよくわからないが、島を生物の種の保存に使ったという意見は賛成だな」
 グースも老君の推測に賛成した。
「老君もグースといろいろ話し合いたいと言ってるから、あとで行ってくれ」
「わかった。楽しみだ」
「ジン君、私も同席していいかしら?」
 案の定、ヴィヴィアンも立候補してきた。
「もちろんさ。思いついたことがあったらどんどん意見を言ってくれ」

「南には自由魔力素(エーテル)がないんですよね。だからこの『うなぎ』も魔物にならずに済んだのでしょうか」
 リシアが質問してきたのには理由がある。
 クライン王国の東部にあるシャマ大湿原、そこから流れ出した川が流れ込むマヌーゼ湖。
 そこに棲息する『竜頭ウナギ』は草食だが全長3メートルにもなる魔物である。弱い魔力を帯びるため、その皮は魔導具の素材に使われるのだ。
 リシアはクライン王国出身のため、『竜頭ウナギ』のことをよく知っているのだ。
「もしかしたら、普通のウナギが魔物化したのが竜頭ウナギ、という可能性もあるな」
 グースが1つの可能性を口にした。
「なるほどな」

「で、大陸の方までは手が回らないので未調査だが、スカイ隊も増やすから、この後情報が入ってくると思う。興味があったら、何日かしたら老君に聞いてみてくれ」
 南極調査艦隊の話はそれで終わり。
「それから、つい最近の話なんだが……」
 続いて仁は『盗賊団』と『ランス』の話をした。エルザも随時補足をする。

「ふうん……。確かにそんな話は聞いたよ。解決していたんだな」
 ラインハルトが大きく頷いた。
「だが、気になるのはそのランスという自動人形(オートマタ)と、隠れ住んでいた研究者たちだな」
「そうなんだ。今回は陛下にお任せ……というか、デガウズさんが担当しているけどな」
転移門(ワープゲート)の技術を持っているんだろう? 実用化されたら流通と交通に革命が起きるぞ」
 ラインハルトの意見に、仁は半ば賛同、半ば疑念を表明する。
「なかなかそうはいきそうもないんだ。黙っていたけど、彼等の転移門(ワープゲート)は、高自由魔力素(エーテル)濃度に対応しているから、今の世界では満足に使えないんだよ」
「そうなのか?」
「ああ。だから、要衝にのみ配置、使用は許可制にするなどの制限を掛ける、ということになるだろう」
 仁の持つ転移門(ワープゲート)よりは劣るということ。それでも、魔導大戦で途切れた技術が復活することは望ましいことなのだろう。
「普及にも時間が掛かるだろうな。キーパーツである闇属性の魔結晶(マギクリスタル)は、普通じゃ滅多に採れないから」
 闇属性は空間に関する影響力が大きいのだが、そうした多大な効果があるからか、ほとんど採れないのである。
 蓬莱島の地下からはごろごろ採れているのだが。
 おそらくそれも自由魔力素(エーテル)の特異点と関係しているのだろう、と仁は考えている。

 こうして、情報交換も順調に進んでいった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160726 修正
(旧)「まあ、ユリアーナちゃん、おとなしいわね」
(新)「まあ、ユリアーナちゃん、ごきげんね。人見知りもしないのねえ」
  そのあとの『はしゃいでいる』と整合性を取りました。
(旧)「ええ、夜泣きもしなくなりましたし、随分と重くなりましたわ」
(新)「ええ、近頃は夜泣きもしなくなりましたし、随分と重くなりましたわ」
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ