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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-21 技術交流

 その後、仁たちは簡単な技術交流を行った。
 ギムナスらが伝えていた技術は、主流ではないとはいえ、1つの到達点であった。
「なるほど、ゴーレムや自動人形(オートマタ)の知識と経験を累積しているんだな」
「仁殿は理解が速いのだな」
 担当は『ランス』。
 聞くところによると、彼はこの施設におけるゴーレム・自動人形(オートマタ)たちの長に当たるらしい。
 そのボディは10年ほど前に更新されたが、知識と経験は400年分、ということだ。
 だが、それらは単に追加されていくだけなので、効率が悪い。
 仁がそれを指摘すると、
「それはなんとなく感じていた。だが、これは製作主(クリエイター)が決めたことだ。今更変えたくない」
 と言う返答が返ってきたのである。
 それは別に仁がどうこういう問題ではないのでそれで終わりとし、一番気になった『転移門(ワープゲート)』について確認することにした。
「そちらの転移門(ワープゲート)はどんな形式なのか教えてもらえるかな」
「仁殿たちも転移門(ワープゲート)は所有していると言っていたな。比較という形はどうだろう?」
 仁に否やはなかった。
「それでは……」
 まずはギムナスらが使用している転移門(ワープゲート)を見せてもらうことになった。
「これがその1つだ。これは、地下の鉱山とここを繋いでいる」
「なるほど」
 仁の見たところ、基本構成は同じであった。
「おおよそは同じだな」
「それは予想できる。この種の技術は、ほぼ行き着くところまで行っているから、改良の余地がほとんどないのだろう」
「そうだな。強いて言えばエネルギーの効率くらいか」
 仁の場合、そうした細かい改良をいとわないので、エネルギー効率だけで言えば、ここにあるものより30パーセントは効率がいいはずである。
「だとすると、わざわざそちらのものを教えてもらうには及ばぬな」
 ランスがそう言い切った。それならそれで、仁としても気が楽である。

 この他にもいろいろな魔導具や魔導機(マギマシン)を比較していったが、大きな違いはないようだった。
 一番大きな違いは昨日確認した『非晶質(アモルファス)』素材だろうと思われた。
 もちろん、仁しか持っていない技術は比較出来ないので今回の技術比較からは外している。

「ところで、この場所は、周囲より自由魔力素(エーテル)が濃いということでしたが」
 仁たちは一通りの技術交流を終え、再びギムナスと向き合っていた。
「そう聞いています」
「それについて、何か調査はしましたか?」
「ええ。自由魔力素(エーテル)は地下へ行くと少しずつ濃くなっています。故に地下から発生してくると思います」
 これも、仁たちが特異点について立てた仮説と矛盾はしない。
「ミスリルを多く含んだ鉱脈に沿って自由魔力素(エーテル)が湧いてくるのではないかと仮説を立てています」
「なるほど」
 これは新しい説だ。
 蓬莱島も、ミスリル銀をはじめ、軽魔銀(ライトミスリル)魔結晶(マギクリスタル)魔石(マギストーン)、それに魔力同位元素(マギアイソトープ)が豊富である。
 また、地下には地底蜘蛛(グランドスパイダー)地底芋虫(グランドキャタピラー)が養殖されており、これも地下の自由魔力素(エーテル)濃度が高いため、その素材は他とは一線を画す性能となっている。
「そうすると、『特異点』にはそうした鉱脈が存在するということかも……」
「『とくいてん』、ですか?」
「ええ。俺たちはこうした自由魔力素(エーテル)濃度が他より高い地点をそう呼んでいます」
「『特異点』、確かに。適切な呼び方ですね」
「南へ行くほど自由魔力素(エーテル)濃度が下がることは観測していますが、原因は未だに掴めていない状況です」
「そうなんですか」
 仁としては彼等が何か知らないかと期待していたのだが、この点については期待外れに終わった。

*   *   *

 そして、中休みに、昼食をご馳走になる仁たち。
「これは……」
「変わった味。でも、悪くない」
 400年前からこの地下で栽培されている麦の一種から作られたパン。色は少し黒っぽい。
「ライ麦……ともちょっと違う。美味しい」
 ライ麦は、元々は小麦畑の雑草だったという説がある。それが、小麦に似た姿のものが除草を免れ……という人為的淘汰を繰り返した結果、比較的優秀なものが残り、栽培されるようになったともいう。
 小麦よりも劣悪な環境に耐えるので、この地下での栽培に採用されたのであろう。
 地球のライ麦はグルテンというタンパク質をほとんど含まないのでパンにしてもあまり膨らまないのだが、ここのライ麦? は違った。
「そこそこ、美味しい」
 旅……ラインハルトと共にエリアス王国まで出向いた旅の途中で何度か口にしたライ麦パンに比べると遙かに美味しい、というエルザ。
「そういう品種なのかなあ」
「だと、思う」
 麦の味については、仁は詳しくないので、エルザの説明を黙って聞いていた。
「外の世界には、もっといろいろ美味しいものがあるらしいですね」
 ギムナスが言う。
「そうですね、やはり多様性という意味では」
「……僕も、外へ行くべきでしょうか」
 最後の1人となった今、留まるべきか、外に出るべきか、迷っているという。
「外に出るにしても、どの国へ行くか、もありますね」
 スホント山の山頂は、ショウロ皇国・フランツ王国・セルロア王国三国の国境となっており、この施設はおそらく山頂の真下。
「入口は南西側だからショウロ皇国。ショウロ皇国でいいんじゃ?」
 エルザが意見を述べた。
「そうだな……」
 仁も同意する。贔屓ひいきをするわけではないが、確かに、ショウロ皇国なら仁も援助しやすい。
「それに、別にここを捨てる必要もないでしょう。外に家を持ち、そこに転移門(ワープゲート)を設置すればここと行き来は簡単にできるんだから」
「あ、そうですね」
 こういう生活の『先輩』である仁は、ギムナスにいろいろと助言を行った。

「ありがとうございました」
 夕方、仁たちは地下施設を辞することにした。
 その際、ランスが仁たちに付いてくることになった。
転移門(ワープゲート)の部品を持ち、適当な場所に設置する必要があるのでな。協力を頼む。それに、盗み出された部品類もまだ見つかっていない」
 言外に、製作主(クリエイター)を殺害した犯人も見つかっていないと言っている。
「わかった。ショウロ皇国に住むというのなら、できるだけ協力しよう」
「感謝する」
 そして仁たちは地下施設を後にした。
 夕暮れの空をバックに飛ぶ『コンロン3』。
 とりあえず、ロイザートへ向かう。翌日、女皇帝に謁見して報告する予定だ。
 彼等のゴーレム技術と転移門(ワープゲート)は、この先、世界に利益をもたらすだろう。
 転移門(ワープゲート)の方はセルロア王国でも見つかっており、再現まであと2〜3歩、くらいのところまできているというから、それを少し加速することだろう。
 ゴーレム技術もまたしかり。
 考え方によっては、タイムカプセルに入っていた過去の技術が発掘された、と言えなくもない。
 こういう流れにおける技術革新であれば、元々この世界にあった技術の再発見なので、仁としても気が楽である。
「お父さま、見えてきました」
 眼下にロイザートが見えてきた。
「よし、屋敷に着陸だ」
 薄暮の中、『コンロン3』はゆっくりと降下していったのである。
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