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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-19 スホント山

 午前6時、外は明るくなった。
 仁とエルザはランドル家で朝食を摂り、『コンロン3』に戻った。
「それじゃあ、行ってきます」
「ああ、行って来い」
「俺も行きたいが、そうもいかんしな」
「エルザ、気を付けてね。ジン様、お願いします」
「せっかくの里帰りがこんな終わり方になって申し訳ありませんでした」
「いやいや、『崑崙君』に援助してもらえて助かりましたよ」
「そう言っていただけると気が楽になります、義兄上」

 ランドル家の面々に見送られ、仁とエルザは北東を目指した。

「ほう、本当に飛んでいるな。この速さは大したものだ」
『ランス』は、飛んでいること自体には驚いていないようだ。が、その飛行速度には感銘を受けているように見える。
「速いな。だが、『転移』ならもっと速いぞ」
「!?」
「……やはりな」
「お父さま?」
「ジン兄!?」
『転移』という単語がランスから出てきたことに驚いたエルザであったが、仁は予測ができていたのか、やはり、と頷いただけ。
 その様子にはエルザだけでなく礼子も驚かされたようだ。
「いや、だって、魔導大戦頃には普通に使われていた技術だろう? エレナが知らないのは製作者が教えなかっただけなんだろうし……」
 仁の説明に、エルザも納得する。
「そういえば、そう」
 以前訪れたケウワン遺跡にも巨大な転移門(ワープゲート)が残っていたことを思い出すエルザ。
「ふむ、仁殿も転移の手段を持っているというのか」
 仁が頷くと、ランスも今度は感心したようだ。
「なるほど。外の世界は格差が激しいのだな。参考になる」
「貴方は、あまり外に出なかったのですか?」
「うむ。今回が初めてだ」
 相変わらず、礼子の質問にはすらすらと答えるランスである。
「私自身は作られてから10年しか経っていないからな」
「そうなのですか?」
「ただ、知識は受け継いでいるがな。それこそ、長い間の」
「そうでしょうね」

 ゴーレムや自動人形(オートマタ)の知識は『知識転写(トランスインフォ)』でコピーできる。
 代々受け継いでいけばその知識は膨大なものになるだろう。
 だが、無駄な知識や、重複する情報も多々あるはずで、そういったものを整理せずに追加していくと、結局は記憶容量を食うばかりで、効果はあまり上がらない、ということにもなりかねない。
 パソコンのハードディスクをクリーンアップするようなものである。

「そろそろ該当地域です」
 操縦士のエドガーから声が掛かった。
 床窓から下を見れば、雪を頂いた高山が。
「『スホント山』、と製作者は呼んでいた」
「スホント山、ですか。どこに着陸すればいいでしょう?」
「南西側に小さな平地がある。そこでいいだろう」
 それを聞いていたエドガーは、『コンロン3』を過たずその地点へと移動させ、危なげなく着陸させた。
「標高が高そうだな。上着を羽織った方がいいだろう」
 仁はそう言うと、エルザと自分の上着を備え付けのロッカーから取り出した。
 こういう時のために、何種類かの服が積んであるのだ。
「外は雪か氷だな。雪山用装備を履いていかないと危ないぞ」
「ん」

 氷の上でも滑らないように、特殊な靴を仁は用意していた。
 その中に、魔導士用の靴がある。
 これは、土や岩の道ではゴム底、雪や氷に覆われていたときはスパイクのピンが飛び出すようになっているのだ。
 因みに『変形(フォーミング)』を応用しているので魔導士用、というわけである。
 もちろん耐寒、耐水性である。

「……やっぱり寒い」
 仁よりは寒さに強いエルザであったが、この季節の高山は、日中でも摂氏0度くらいまでしか上がらない。
 吐く息も真っ白である。岩には岩氷がびっしりと付着している。
 エドガーを留守番に残し、一行は外に出た。
 ランスの背中には、動かなくなったゴーレム2体がコンパクトに荷作りされて背負われている。
「ここからどこへ行けばいいのですか?」
「こちらだ」
 重さを苦にすることなく、ランスは先に立って歩き出した。仁、エルザ、礼子の順に続く。
 遠目ではわからないが、しっかりとした小径が整備されていて、山道にしては歩きやすかった。
 10分ほど歩き、回り込むように行くと、畳2畳くらいの小さなテラス状の場所に出た。
「ここが入口なのですか?」
 すかさず尋ねた礼子に、ランスは素直に頷く。
「そうだ。待ってくれ、今開ける」
 岩壁に手を当てて何やらやると、手の平が入るくらいの小さな丸い穴が開いた。
 ランスはそこに手を突っ込み、更に何やらやっていたが、いきなりその横に人間1人が楽々通れるような出入り口が口を開けたのである。
「済まないが、私はこれから製作者の息子殿に報告してくる。許可が出たなら迎え入れるから待っていてもらえるか?」
 ランスは礼子の顔を見ながらそう言った。
「わかりました。できるだけ早くお願いします」
「もちろんだ」
 礼子に頷き掛けると、壊れたゴーレムを背負ったままランスは中へと入っていった。
 すぐに扉は閉まり、出入り口は見えなくなった。
「これも幻影系の結界かな?」
 仁は解析に余念がない。
「うーん、旧レナード王国の幻影結界よりは単純だな。触覚はない。単に見た目を誤魔化しているだけだ」
「ということは、『魔法無効器(マジックキャンセラー)』で消せるのでしょうか」
 礼子が尋ねると、仁は頷いた。
「そういうことになるな。でもやるなよ?」
「はい」
「ジン兄、開閉機構とロック機構はどうなっていると思う?」
 エルザも聞いてきた。
「見てみないと何とも言えないが、2重か3重になっているな。隠してある第一の鍵でメインの鍵へとアクセス、メインの鍵は個体認証と機械的ロック、じゃないかと思う」
「ああ、わかる。その組み合わせなら、かなりセキュリティは高そう」

 そんな話をしていたら、扉が再び開き、ランスが現れた。
「製作者の息子殿は許可を出された。その信頼を裏切らないよう願う」
「大丈夫ですよ。お父さま、エルザ様は好戦的な方ではありません。それより、そちらも罠に掛けようとはなさらないでくださいね?」
 礼子がそう言うと、ランスは真面目な顔で頷いた。
「礼子嬢の言葉を信じよう。こちらも、礼子嬢を裏切るようなことは絶対にしない。では、どうぞ」
 身を翻したランスの後に続く仁たち。扉の先はエアロックのような場所だった。
 その背後で扉が閉まると、軽い浮遊感が生じる。
「エレベーターか。地下へ潜るんだな?」
「そのとおり。我々の居住空間は地下にある」
 かなり深い場所まで行くらしく、エレベーターはおよそ1分ほど降下し続け、ようやく止まったのである。
「さあ、どうぞ」
 ランスが先んじて降り、仁たちを手招いたのである。
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