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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-12 三者三様

 時間は少しだけ遡る。
 ランドル家次男、フリッツは、今現在、最も『金目』の物がある倉庫の番をしていた。
(普通なら穀物を狙うとは思わぬが、情報にもあったことだしな)
 そんな彼の耳に、微かな物音が聞こえてきた。
(来たか……!)
 確認できた人影は5つ。
 その前にフリッツは剣の柄に手を掛けたまま歩み出た。
「そこまでだ、盗賊団。おとなしく捕縛されろ」
 領主の館、その敷地内に不法侵入したということは十分な罪となる。
 まだ盗んでいないというような言い訳は通らないのだ。
「しゃらくさい」
 1人がフリッツ目掛け、ナイフを投擲してきた。余裕を持ってそれを躱すフリッツ。
 時間差で、フリッツも魔法を放つ。
「『(サンダー)』」
「ぎゃっ!」
 ナイフを投げた男がまともに喰らい、気絶した。武技だけでなく、雷属性魔法もフリッツは得意なのだ。
「小癪な!」
 今度は2人がナイフを手に跳びかかって来る。
「遅い」
 1人が突き出したナイフを、剣を抜かずに鞘のまま叩き落とし、剣の柄を鳩尾に叩き込めば相手は悶絶する。
 もう1人が首筋を狙って横に薙いだナイフは、身を低くすることで躱した。
 そして伸び上がる勢いで、顎に掌底をぶち当てれば、男は仰け反って昏倒。計3人が気絶。
「正攻法しか対応できないような軍人はショウロ皇国にはいないぞ?」
 残るは2人、とフリッツは再度間合いをとって対峙した。
「軍人とはな……しくじったか。『ソード』、時間を稼げ」
「了解」
 ソードと呼ばれた男は一歩踏み出し、フリッツに迫った。
 月明かりでよく見れば、それは人間ではなくゴーレム。銀黒色の外装が鈍く光を放っている。
「いくらショウロ皇国の軍人が優秀でも、ゴーレムには勝てまい!」
「それはどうかな!」
 フリッツは、こうした場合の定石、『命令者を倒す』ために、一旦横にステップしてから前方へ飛び出した。
 突き出された剣の鞘は、過たず残った男の喉を突くかに見えた。
 が。
 がいん、という音と共に、その攻撃は防がれた。ゴーレムが割って入ったのだ。
「自己判断が出来るか。上等なゴーレムのようだな!」
 フリッツは鞘を払って剣を抜き、ゴーレムと向かい合った。

 と、そこに、第3者の声が聞こえてきたのである。
「ここは譲っていただきましょう」
 現れたのは、盗賊団のゴーレム『ソード』と瓜二つのゴーレムであった。
 目の色が、『ソード』は赤、新たに加わったゴーレムは青、というのだけがその違いである。
「ゴーレムは私が探していたものの1つです」
「ふん」
 フリッツは、瞬時にその意味するところを知り、対象を残った男へと絞った。
「逃がさないぞ」
 が、その男は不敵に笑った。
「ふふ、『切り札』というものは最後まで取っておくものだ! ……『グラー』!」
 その声に応じて、どこからともなくもう1人、黒ずくめの男が現れた。
「何!?」
 黒ずくめの男は無言でフリッツ目掛け回し蹴りを繰り出した。
 辛うじて鞘に入った剣で受け止めたものの、その威力にフリッツは吹き飛ばされる。
 が、フリッツも倒れ込みながらも魔法を放った。
「くっ、『落雷(サンダーボルト)』!」
 追撃のため迫り来た黒ずくめに、その魔法は直撃する。
 が、その雷撃をものともせず、黒ずくめは倒れたフリッツを踏み砕こうと跳び上がった。
「うおっ!」
 一瞬、身体を捻って直撃を避けたフリッツであったが、右足首を踏まれてしまった。
「あぐっ!」
 フリッツの足首が砕ける。が、痛みを押して、フリッツは剣を振り抜いた。
 がきい、と音がする。鋼の剣は、黒ずくめの足を切ることができなかったのだ。
「何! まさか、貴様もゴーレムか!」
 黒ずくめは無言で蹴りを放つ。
「げふっ」
 腹部に受けたフリッツは2メートルほど吹き飛ばされ、更にごろごろと転がる。
「ぐ……うう……くそ、あばらをやられたか」
 呼吸が美味くできず、咳き込むフリッツに、黒ずくめのゴーレムらしき男が迫り来る。
「畜生! 『落雷(サンダーボルト)』!」
 だが、その魔法も男は意に介さない。
 が、着ていた服は焼け焦げ、千切れ飛んだ。
「やはり……ゴーレムか……」
 そのゴーレムは、動きの鈍ったフリッツ目指し、迫り来る。
「く、そっ」
 片足では満足な回避行動が取れず、一撃を喰らうことをフリッツが覚悟した、その時。

「兄さま!」
 エルザの声が響き、ゴーレム『グラー』が吹き飛んだ。
「大丈夫?」
 駆け寄ってくるエルザを見て、
「馬鹿、危ない! 来るんじゃない!」
 大声を上げるフリッツであるが、エルザは止まらない。
「私なら、大丈夫」
「そんなことを言っている場合じゃ……ん?」
『グラー』はこちらへ来ず、様子を窺っている。
「エドガーが、相手する」
「何い!?」
 エドガーは少年型の自動人形(オートマタ)だ。エルザと比べても、体格は似たり寄ったり。
 そんなエドガーが『グラー』に勝てるとは思えなかった。
「だから、大丈夫。……それよりまず、兄さまの怪我を治す。『快復(ハイルング)』」
 足首と肋骨の骨折が癒えていく。
「助かった。だが、ここは危ない。家に入っていろ」
 立ち上がったフリッツは、2、3回足踏みをして足首の様子を確認すると、逃げ掛かっていた男に向かって走り出した。
「待て! 逃がさんぞ」
「く、しつこい」
 男は足を止めると、フリッツに向けて魔法を放ってきた。
「『火の玉(ファイアボール)』」
「うおっ!」
 フリッツは間一髪それを避ける。
 火の玉(ファイアボール)は庭に落下。枯れ草がめらめらと燃え始めた。エルザが慌ててそれを消し止めているのを目の隅で確認したフリッツは反撃する。
「この野郎! 『落雷(サンダーボルト)』!」

 フリッツ対盗賊、エドガー対『グラー』、そして謎のゴーレム対『ソード』。
 三者三様の戦いが行われていた。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160713 修正
(旧)「ぐ……うう……くそ、肋をやられたか」
(新)「ぐ……うう……くそ、あばらをやられたか」
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