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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-10 圧倒される警備隊

『増援を送ります』
 わずかな協議の後、老君はそう結論を出した。
 ほどなく、ランド783、784、785が送られてくる。
「あの廃屋を監視しましょう」
「了解」
 そういうことになった。

 そして迎える夜。
 町が寝静まった午後11時、動きがあった。
(誰か出てきました)
 人影が1つ、廃屋から出てきた。
(盗賊団……なのでしょうか? 1人ですが)
 その歩き方から、先程のランスである、とジュミは結論した。
 そのままランスを追い、ジュミたち6人は町の中心部に向かった。
(『隠身(ハイド)』の魔法を纏っているようですね)
隠身(ハイド)』は、隠身系の初級魔法である。気配を消すことができるが、声を出したり攻撃を受けたりすると効果がなくなる。
 だが、人通りの途絶えた夜の町を行く場合にはかなり有効な魔法である。
 一方、ジュミたちが使っているのは隠身系の上級魔法『不可視化(インビジブル)』である。赤外・可視光・紫外領域までの隠蔽と、遮音効果が付与されているので、物理的な接触をしない限り気付かれることはまずない。

 そして、ランスを追っている者はジュミたちだけではなかった。
 4人ほどの人影がランスを追っている。
 その4人は、ランスに比べ、無駄の多い……多すぎるとも言える動作をしていた。
(テオデリック家の警備員だろうか?)
(おそらくそうでしょうね)
(私たちの邪魔をしないでくれればいいんですが)
(それは難しいでしょうね)
 実際、そのものたちは隠身系の魔法を使うこともせず、ただこっそりと後を付けているだけである。
 いつかは気付かれてしまうだろう、とジュミは思っていた。
 そして、その時は意外と早くやってきた。
 5人の歩みが止まったのである。
 場所は、奇しくも……あるいは予定通りなのか、昼間彼等がランスに手玉にとられた空き地である。
 500坪ほどもある空き地。枯れかけた草に覆われており、身を隠すところはない。
「付けてきている方々、ばれているぞ」
 立ち止まり、振り向いたランスから、そうした言葉が告げられる。
「くっ、気付かれたか」
「いや、気付くもなにも、それだけあからさまな気配を撒き散らしていれば……」
 心なしかランスの声にも呆れが混じっているようだ。
「やかましい! 貴様はいったい何者だ!」
 ランスは溜め息を吐く仕草をし、
「やれやれ、ここの人間にも低級な者がいるということか」
 と更に呆れたように言った。
「何か勘違いしているようだが、私は盗賊ではないぞ」
「それを証明できるのか?」
 するとランスは首を左右に振る。
「『ある』ことの証明は実例を1つ挙げれば済むが、『ない』ことの証明は事実上不可能だ」
「なにを訳のわからないことを!」
 いきり立つ警備隊副隊長。

(いや、貴方の理解力が足りないんでしょう)
 はたで見ているジュミも、心の中で突っ込みを入れた。
(しかし、ランス本人が言うように、盗賊ではなさそうですね。では、いったい彼の目的は……?)

「もういい! おとなしく同道してもらおうか」
 業を煮やした副隊長が言い放つが、ランスはそれを拒否した。
「いや、そうはいかない。私にも私の目的があるからな」
「だからそれを話してもらおうと言っているのだ!」
「いや、貴殿は今初めてそれを口にしたぞ」
「そんなことはない!」

(いや、そのとおりだけど……)
 ジュミのツッコミは誰にも聞こえていない。

「仕方ない、力ずくでも連行させてもらうぞ」
「ふむ、そういう物分かりの悪い人間もいるのだな。勉強になる」
「なにを馬鹿なことを! 行け!」
 副隊長が指示を出したのはお伴の3人。
 よくよく見れば……とはいえ、ジュミたちには既に正体はわかっていたが……、戦闘用ゴーレムである。
 それぞれ、殺傷力の低い棒を持ち、ランスに向かって殴りかかっていった。
「ふむ、低級なゴーレムだな」
 ランスは、3体を同時に相手取り、一歩も引かない。
 どころか、余裕を持って対処している。

(問題になりませんね……しかし、あのランスという自動人形(オートマタ)……でしょうか、ちょっと不思議ですね)
(同感だ。系統が読めないからな)
 ジュミとランドたちは内蔵魔素通信機(マナカム)で会話をしている。
(先代様の系統とはちょっと違うようですし、かといって今の主流でもない。かつてのエレナとも違う)
(やはりまったく別系統の技術、ということかもな)
 そんな会話は1秒も掛かっていない。
 が、ゴーレム対ランスの戦いは、かなり局面が進んでいた。

「なっ! ……」
 ゴーレムが振るった棒は、ランスの身体には一撃も加えることができずに全てひしゃげへし折れていた。
「こんなものか。……今のゴーレムというものは」
「な、何だと!?」
「つまらん。時の流れは技術を退化させたのか?」
「何……?」
「私には目的があると言ったろう? だが、今夜は貴様たちのせいでそれも無理なようだ。また出直すとしよう」
 そう告げたランスは、背後にある廃屋の屋根へと飛び上がった。
「何……だと!?」
 その身軽さに驚く副隊長。
「いいか、これだけは言っておく。私の邪魔はするな。私の目的は貴様たちの不利益とはならないはずだ」
 それだけ言うと、ランスは廃屋の屋根から消え去ったのである。

(向こう側へ飛び降りたようね)
(我々も行くとしよう)
(しかし、奴の目的とはいったい……?)
(直接聞くしかなさそうだな)
 ジュミたちは音を立てないよう『力場発生器フォースジェネレーター』を使い、廃屋を一気に飛び越す。
(どっちに行った……?)
 が、そこには既にランスの姿はない。
(二手に分かれるか)
(仕方ないですね)
 そしてジュミたちは二手に分かれ、ランスを追ったのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160712 修正
(旧)しかし、あのランスという自動人形(オートマタ)、不思議ですね)
(新)しかし、あのランスという自動人形(オートマタ)……でしょうか、ちょっと不思議ですね)
 オートマタと断定できるほどの情報は集まっていないので。
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