挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

1220/1568

33-05 成功と失敗

「運用効率が高くても、量産できないと意味がないしな……」
 そこで仁は、手持ちの生体系素材で、魔力素(マナ)を多く蓄えられそうなものを選定することにした。
 助手は老君と礼子。
「そうですね、強力な魔物ほどその傾向はありますね」
『だとすると、『巨大百足(ギガントピーダー)』か『海竜(シードラゴン)』がよろしいのではないでしょうか』
「そうだな。その2種類を試してみよう」
 そこで礼子は資材倉庫からその2種の素材を運び出してきた。
「生きていないから、『ニュートラル』な魔力素(マナ)を蓄えてくれると思うんだが……」
『その可能性はありそうですね』
 とにかく、まずは検証実験である。
「重さより、大きさ優先かな」
 仁は、同じ体積で、どちらがより多くの魔力素(マナ)を蓄えるかを確認することにした。
「お父さま、今回は重さより体積優先ですね?」
「そうだ。どれだけコンパクトにまとめられるか、だな」
 仁は2種の素材を『分離(セパレーション)』で分離。
 およそ1センチ角のサイコロ状に切り出した。
 立方体にしたのは、充填率が上がるからである。
「うーむ、どうやって魔力素(マナ)を充填するか、だな」
 実際に運用する方法で行うのがいいだろうと仁は考え、標準型の『魔素変換器(エーテルコンバーター)』を手早く用意した。
「よし、これで一定時間動作させて、どうなるか、だ」
 十分過ぎる魔力素(マナ)を与えて、どちらがより多くのマナを蓄えるか、仁は調べようと思ったのである。

「お父さま、研究も結構ですが、そろそろお休み下さい」
「え? ああ、もうこんな時間か」
 気が付けばもう午後10時を回っていた。
「わかった。続きは、明日だ」
 仁は素直に礼子の忠告に従い、英気を養うため休むことにした。

*   *   *

 翌日、仁は朝食を済ませるとすぐに前日に考えていた検証を行った。
 結果を述べると、巨大百足(ギガントピーダー)素材の方が2割ほど多く蓄えることがわかった。
「重さはほとんど変わらない、か」
 どちらも比重は1前後であった。
「で、どのくらい蓄えられるんだろう」
 計測単位がないので、比較実験となるが、結論から言えば、以前規格化した単4型の魔力貯蔵庫(マナタンク)、そのおよそ2.5倍の魔力素(マナ)を蓄えてくれるようだ。
「これなら十分実用的だな」
 仁は、交換のしやすさを考えて、電池のように円筒形にすることとした。
「今度のイメージは単3電池だな」
 以前の単4型魔力貯蔵庫(マナタンク)と差別化するためである。
 この魔力貯蔵庫(マナタンク)を10本装備することで、蓬莱島のゴーレムたちは、平均で24時間稼働できることもわかった。
 もちろん、動作中に極端に激しい動きや、消耗の大きい魔法を使わない状態で、である。
「30本装備に加えて、非常用の2本、かな」
 非常用は『転送装置』に使い、例えば深海で事故が起こり、脱出不可能になった際、海面への転移に1本。そして蓬莱島への救難信号と現状維持のために1本、という具合だ。
『よろしいかと思います』
「あとは、補給用の艦を付近に待機させ、その艦には魔力貯蔵庫(マナタンク)を大量に積むと共に、チャージできるようにさせたいな」
 仁は考え込み、1つのアイデアを口にする。
「エネルギー転送、ができたらなあ」
 現代日本で読んだSF小説やマンガで得た知識だが、離れた場所へエネルギーを転送するというものがあった。
「それが実現できたら、とは思っているんだが」
 転移門(ワープゲート)の応用でできないかと思って、老君に幾つか実験をさせたことがあったのだが、うまくいかなかったのである。

 転移門(ワープゲート)は、2つの地点間を『トンネル』で結ぶ。その『トンネル』は、仮に『亜空間』と名付けた、現実空間ではない空間を通っているので、事実上のタイムロスなく2点間を移動できる。
 ここまでが転移門(ワープゲート)の働きとしてわかっていること。
 では、そのトンネルを利用して、物体以外のものをやり取りできるのか、が次の課題であった。
 例えば、水不足の地域へ水を送る。水害の地域から排水する。こういう使い方ができないか、ということである。
 結論としては、『不完全ながらできる』であった。
 転移門(ワープゲート)の出口では物体の速度は0になる。入口での速度が速かろうと遅かろうと、だ。
 それがなぜ起こるかは解明されていないが、そのため、仮に水をポンプで転移門(ワープゲート)に送り込んでも、出口からは水が単に溢れ出すだけで、送り込んだ勢いは維持されていない。

「目には見えていないが、自由魔力素(エーテル)も同じだろうな」
 航空機のように、自ら推進力を持つ物体ならば、即座に出口側の転移門(ワープゲート)から発進できるのだが。
 また、出口を下に向ければ、おそらく水ならば垂れ流しにできるだろうと思われた。
「だけど、自由魔力素(エーテル)は、なあ」
『難しい問題ですね。送風機で風を送り込む実験をしましたが、出口側の自由魔力素(エーテル)濃度は変わりませんでしたし』
「そうらしいな。理由は今のところ不明、か」
『申しわけございません』
「いや、実験期間も短かったんだから仕方がないさ」
 仁は老君に気にしないよう指示を出すと、改めて考え込んだ。

「当面は、『魔力貯蔵庫(マナタンク)』や『魔素貯蔵庫(エーテルタンク)』といった形でやり取りするしかないか……」
 こうした形で送り込み、それをしかるべき物と交換する、という方法は、非常に手間のかかることであり、スマートでないため、仁としてはどうにも気に入らなかったのである。
「でもお父さま、仕方ないですね」
「そうなんだがなあ……あと何か1つ閃けば何とかなりそうな気もするんだがなあ……」
『ですが御主人様(マイロード)、優先順位というものがあります。今はまず、マーメイド部隊をはじめとする、蓬莱島の各部隊に補助用の魔力貯蔵庫(マナタンク)を作りませんと』
「そうだな、優先順位があるよな。……ん? ゆうせん? ゆうせん……有線、か……」
御主人様(マイロード)?』
「老君、転移門(ワープゲート)間を有線で結べないか、実験しておいてくれ。俺は『魔力貯蔵器(マナボンベ)』を製作する」
『わかりました』

 老君は、仁の短い指示だけで何をするべきかを悟り、『老子』と職人(スミス)1を使い、実験を開始した。
『要は、トンネルならば、その間に導線を通すことができるのではないか? ということですよね』
 まずはワンペア、つまり2基の転移門(ワープゲート)を。それに普通の鉄製のワイヤーを用意した。
 転移門(ワープゲート)を起動し、入口側から出口側へ通じていることを確認。
 そして、ワイヤーを入口側から差し入れてみた。
 仁の予想どおりなら、出口側からワイヤーが出てくるはずである。
 そして、それは見事に成功した。
『さすが御主人様(マイロード)ですね』
 鉄製のワイヤーが通るならば次はミスリルの導線である。
『これも問題はないようですね』
 ミスリルであっても同じように入口側から出口側へと『通す』ことができた。
『残るは、この導線を通して魔力が送れるか、ですね』
 老君はミスリル線の出口側に『魔素貯蔵庫(エーテルタンク)』を接続。
『送るなら魔力素(マナ)ではなく自由魔力素(エーテル)でしょうからね』
 そして実験が開始される。

 老君は成功をほぼ確信していた。
『!!』
 だが、予想に反して、自由魔力素(エーテル)は流れていかなかったのである。
『では、魔力素(マナ)なら?』
魔素貯蔵庫(エーテルタンク)』を『魔力貯蔵庫(マナタンク)』に交換し、入口側から属性を付与する前の魔力素(マナ)を流してみる老君。
『これも駄目……ですか』
 何が悪いのか分からず、老君は途方に暮れた。

 そこへ、試作『魔力貯蔵器(マナボンベ)』を作り終えた仁がやって来た。
「どうだ、老君?」
『はい、御主人様(マイロード)。実は……』
 老君は実験結果を仁に説明した。
「うーん、なぜだろうな?」
 仁も頭を捻る。
「老君、どうして自由魔力素(エーテル)魔力素(マナ)が送れないのかの検討はひとまず置いておいて、もう一つ実験してほしい」
『何でしょう?』
「ワイヤーの代わりにパイプを通して、そのパイプ内に水なり空気なりが通せないかどうか、の実験だ」
『わかりました』
 老君は早速実験を開始した。
 遅れました……
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160706 修正
(誤)仁は素直に礼子忠告に従い
(正)仁は素直に礼子の忠告に従い

(旧)「そうですね、傾向として、強力な魔物ほどその傾向はありますね」
(新)「そうですね、強力な魔物ほどその傾向はありますね」

(旧)結論から言えば、エレナに使われていた形式の魔力貯蔵庫(マナタンク)のおよそ2.5倍の
(新)結論から言えば、以前規格化した単4型の魔力貯蔵庫(マナタンク)、そのおよそ2.5倍の
(旧)「イメージは単3電池だな」
(新)「今度のイメージは単3電池だな」
(旧)直径1センチ、長さ4センチとする。これはむしろ単4電池に近いが、仁は同一にする気はないのでこれでよしとした。
(新)以前の単4型魔力貯蔵庫(マナタンク)と差別化するためである。
 22-13で単4型の魔力貯蔵庫(マナタンク)を作っていました。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ