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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-02 さらに深まる謎

「『蓬莱島新婚旅行艦隊』は我々が戻ってもそのまま南下を続けた。まずは『アルキオネ島』からさらに南へ。……老君!」
『はい、御主人様(マイロード)
 仁の声に応じ、壁の魔導投影窓(マジックスクリーン)が点灯した。
『『プレアデス諸島』の南には、さらに大きな群島があります』
「おお」
 誰かの声が響く。
『とりあえず、荒い画像ですが南方の全体図もお見せします』
「おお!」
「これは!」
 仁としても、前に見せたかどうか記憶が怪しかったし、知らない者もいるだろうと思ったので、とりあえず話の前提として全体図を表示させたわけだ。
『これは衛星『ウォッチャー』からの映像を元に作製した地図ですので、細部はまだ曖昧な部分があります』
 特に南半球は自由魔力素(エーテル)分布の関係で『スカイ隊』の詳細測量ができない地域もあると補足説明する仁。
『これを見ましても、南極にも大陸はないことがわかります』
『にも』と言ったのは、北極には大陸がないことがわかっているからだ。
「なるほどなあ。この世界はこうなっているのか」
 感慨深げにトアが呟いた。
『700672号さんの話によれば、他の大陸に原住民はいなかったそうですので、今も人の文明は存在しないはずです』
「確かにそうよね」
 ヴィヴィアンが同意する。
『生物は、大型のものは少ないようですね。自由魔力素(エーテル)濃度と相関がある可能性大です』
「うん、確かに、自由魔力素(エーテル)により細胞は強化されるからな」
 これまたグース。やはり未知の生物に関する関心は人一倍あるようだ。

自由魔力素(エーテル)分布ですが、やはり緩やかな下降線を描きます。今のところ、南回帰線以南は、未対策の魔導具は動作不良を起こす可能性有りです』
「わかった。ありがとう」
 仁は頷き、メンバーを見渡す。
「最近気が付いたんだが、自由魔力素(エーテル)分布に関して大きな疑問が生じたんだ。聞いてくれるか?」
「もちろん」
「聞かせておくれよ」
「聞きたいね」
 異議を唱える者は誰もいない。
「よし。……まず、分布についておさらいすると、北ほど自由魔力素(エーテル)濃度が高く、南へ行くほど低い」
「だね」
「その変化度は、一定じゃない。人の住む北限と言っていい魔族領と、南限といえるポトロックではおおよそ3倍の開きがある」
「そうだったな。この前の旅行は赤道付近だったから、低下したといっても体感できる程じゃなかったわけだな」
 ラインハルトが納得したように言う。
「おおよそだが、自由魔力素(エーテル)の水平分布を図にするとこんな感じではないかと思われる」
 仁が合図すると、老君によって魔導投影窓(マジックスクリーン)にグラフが映し出された。
「横軸は緯度で、縦軸が自由魔力素(エーテル)濃度。南極が0、北極を10として……」
「ふむ、直線で変化するわけじゃないんだね」
 サキが感想を述べる。
 確かにそのグラフは、右上がりで下に凸な曲線を描いていた。
「これはまあ、わかってもらえると思う。次は垂直分布なんだが、宇宙空間まで出てしまえば、自由魔力素(エーテル)濃度の偏りはほとんどない、これはいいな?」
「確か、前に聞いたような気がするね」
 トアが頷き、皆も同意する。
「うん。じゃあ、南極を例に取ると、どのくらいの高度から自由魔力素(エーテル)濃度が低下するのか、となる。これが、大体成層圏から下なんだ」
「ふむ。今までの説明で特におかしな所はないようだが?」
「そうだな」
 トア、グース初め、メンバー全員が頷く。
「わかってる。ここからなんだ」
 仁は改めて全員の顔を見回した。
自由魔力素(エーテル)が粒子だとして、おそらくその大きさは水素原子より小さいと思う。ということは、かなりの速度で移動できるということだろう」
「質量が小さいからだね!」
 今まで黙っていたハンナが口を挟んだ。
「そう、ハンナの言うとおりだ。だからこそ、自由魔力素(エーテル)分布に偏りがあるのはおかしい」
「……あっ」
 仁の言葉の意味を察したエルザが声を上げた。
「エルザはわかったようだね」
「……もしかすると、今でも自由魔力素(エーテル)が消費されているかもしれない、という、こと?」
「え? ……あ、ああ!」
 エルザの発言を聞いて、サキも理解できたらしい。
「そういうことか!」
「確かにそう考えることもできる!」
 次々に納得した声が上がった。
「分かってきたようだな。俺が疑問に思うというのは、南半球の自由魔力素(エーテル)分布が少ないのは、今でも南極あたりで自由魔力素(エーテル)が減り続けているからじゃないのか? ということさ」
「ううん、否定できないな」
 難しい顔でラインハルトが同意した。
「つ、つまりこういうことよね、ジン? ……もし、過去に何かがあって南半球の自由魔力素(エーテル)が減ったのなら、もう現在の分布はならされていてもおかしくない」
「そう、ビーナの言うとおりさ」
「……だからジン君は、今でも南半球の自由魔力素(エーテル)が減少する要因が存在している、と言いたいのね?」
 ステアリーナも納得がいった顔で仁の思考をトレースした。
「そのとおり。それが、消費によるものか、自由魔力素(エーテル)を排除するような何かがあるのか……それはわからないが」
「ふうむ……」
「ううん……」
 皆、改めてその疑問に気付き、口を噤んでしまった。
「仮に過去に自由魔力素(エーテル)が減る何かがあっただけなら、とっくに戻っていなければならないんだ」
「あれ? ジン、『魔素暴走エーテル・スタンピード』はどうなるんだい?」
「ああ、そうだ。あれ以来、自由魔力素(エーテル)濃度が三分の一になったそうじゃないか」
 仁は頷いた。
「そう、それも疑問なんだ。……ここでもう一つ、観測した事実を言おう。今のカイナ村付近の自由魔力素(エーテル)濃度は、宇宙空間の自由魔力素(エーテル)濃度とほぼ同じだ」
「ええっ!?」
「ということは、その昔のアルスは、平均よりも自由魔力素(エーテル)濃度が高かった、ということかい?」
 驚いた顔のラインハルトは、仁が言わんとするところを言い当てていた。
「ラインハルトの言うとおりだと思う」
「うーん……ジンが疑問と言ったのがよくわかるな」
「だろう?」
 全体としてみてみると、アルスの自由魔力素(エーテル)分布は異常である。その原因がわからないというのが仁には気に入らなかった。
「700672号も知らないようだったしな」
「そうねえ。……『ジャック』もそんな話は知らないと思うわよ」
 ミロウィーナも補足した。
 そもそも彼女が今住んでいる『月=ユニー』は、元は小惑星で、かつて『始祖(オリジン)』によってアルスの衛星として設置されたのである。
 そんな『ユニー』にも、アルスの開発に関する記録は残されていないらしいのだ。
「で、老君と立てた仮説が幾つかあるんだけどな。そのうちの最も可能性が高いものを話そう。……老君、頼む」
 仁は老君に合図し、説明を任せることにした。

『はい、御主人様(マイロード)。700672号さんの例を見ますと、『始祖(オリジン)』と呼ばれる人々は、濃い自由魔力素(エーテル)濃度を必要としていたようです。そのため、アルスの自由魔力素(エーテル)濃度も何らかの手段で上げていたのではないでしょうか』
「これが一つ」
 仁が合いの手を入れた。
自由魔力素(エーテル)濃度を上げるため、住民のいないエリアは後回しにして、北半球を重点的に濃度アップの対象にした可能性ですね』
「これで二つ」
『南半球には、自由魔力素(エーテル)を消費するというよりも、北半球に回す『何か』があるのではないかと推測が立てられます』
「これで三つだな。どう思う、みんな?」
 仁は『仁ファミリー』全員の顔を見渡した。
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