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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

33 予兆篇

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33-01 記念写真

「そう、笑って……OK」
 9月21日はヴィヴィアンの誕生日である。
 蓬莱島には、ミロウィーナやマーサを含む『仁ファミリー』全員が集まっていた。

 仁は、完成させたばかりの『写真機カメラ』で記念写真を撮っている。
 まずは全員での集合写真だ。シャッターはエドガーが押してくれている。

「チーズと言ってみて」
「チーズ」
「1+1は?」
「2!」
 そんな掛け合いをしながら、今度は一人一人のポートレイトを写し始めた仁。
 エドガーや礼子にもカメラを渡し、こちらは比較的自由なスナップ写真を撮らせている。

 700672号から譲り受けた『写実機(カメラ)』はインスタントカメラに近いので、取ってすぐに写真が出来上がる。そのかわりにネガがないので焼き増しは難しい。
 が、仁が開発した『写真機カメラ』は、透明な基材に『染め粉』を含浸させたいわゆる『リバーサルフィルム』(=スライド写真)となっており、それを使って焼き増しするように考えていた。
 ゆえに、焼き増しをすればすぐに人数分の写真が出来上がる。
 しかも、『光』ではなく『魔力』で行っているので、暗室がいらないという大きなメリットがあった。

「うわっ、これは素晴らしい!」
「本物そっくり!」
「絵じゃなくて……まさに『写真』!」
「こうやってみんなで一緒に記録に残せるのって素晴らしいね」
 皆一様に驚き、喜んでくれた。
「ジン、これっていろいろ応用利くよね?」
 マルシアが話しかけてきた。
「たとえば?」
「製作過程を記録しておけば、弟子に教えるときにも役立つだろうしさ」
「うむ、そうした技術的な使い方もあるな」
 マルシアの言葉に、ロドリゴも賛同した。
「うん、でも、子供の記録をとっておけるのはうれしいなあ」
 ラインハルトが親馬鹿の側面を見せた。
「そうさ。俺の元居た世界でも、親はそうやって子供の成長記録を残していた……らしい」
「……」
 らしい、と言った時に仁の顔がほんの少し寂しさを浮かべたのを敏感に感じ取ったエルザは、黙ってその手をそっと握った。

「ちゃんと個人用も開発するから、ちょっとだけ待っててくれ」
 が、仁はそんなそぶりを見せず、快活に説明した。
「それは楽しみだ。頼むよ、ジン」
「任せとけ」

 そして今度は数名の組合わせで写真を撮っていく。
「ハンナ、マーサさんの横に並んで」
「うん! そのあと、おにーちゃんと一緒に写りたい!」

「ルイス、ビーナの腰を抱いて……そうそう」
「ちょ、ちょっと恥ずかしいんですけど」

「ほらサキとグース、もっとひっついて」
「ひ、ひっついてって……」

「ベルチェ、ラインハルトに寄り添うように。……そうそう」
「ほらトアさん、照れていないで奥さんの肩に手を回して」
「こ、こうかい?」

「マルシア、もっとロドリゴさんに寄って」
「ええー……これ以上?」
「マ、マルシア!?」
「くすっ、冗談だよ、父さん」

*   *   *

 大騒ぎの末、ようやく満足した一同。
「ああ、楽しい誕生日になったわ。ジン君、ありがとう」
 ヴィヴィアンが言った。
「いや、なに」
 頭を掻きながら答えた仁は、小さな包みを差し出す。
「誕生日おめでとう、ヴィヴィアン」
「ありがとう、ジン君」
 包みを受け取ったヴィヴィアンは、その重さと形状から、また、これまでに出席した他のメンバーの誕生日の経験から、
「これ……時計ね? ありがとう!」
 中身を見事に言い当てていた。
「大事にするわね」
 包みを開け、懐中時計であることを確認したヴィヴィアンは満面の笑みで仁にそう言ったのである。

*   *   *

 誕生日祝いのうたげも一区切り付いた頃。
「ねえ、あの『謎の物質』について何かわかった?」
 と、ヴィヴィアンが尋ねてきた。
「ああ、少し。今日はちょうどみんな揃っているんで、あとで話をしようと思っていたんだけど」
「おお! それじゃあさっそく聞いてみたいな」
 勢い込んでトアが言うと、他のメンバーも賛成した。
「わかったよ。ええと、事情を知らない人もいるだろうから……」
 仁は、『アルキオネ島』の調査の際に、ランド隊が謎の物質を見つけたところから語り始めた。
「それは分子圧縮された方鉛鉱……鉛の鉱石だったんだ」

 そして仁は、元になる情報が無さ過ぎたため、老君でもそれ以上のことは推測できなかったこと、もしかしたらという思いで、結婚の報告も兼ねて700672号の所へ行ってきたことを説明する。
「惑星改造……?」
「そんなことができるのか……」
 皆さすがに驚いたようだ。
「もしかしてジンにもできる?」
「いや、まだ無理だなあ」
「『まだ』なんだ……」
 そしてそれぞれの感慨を抱き、聞いたことを反芻する。

「で、南に自由魔力素(エーテル)が少ない理由は?」
 グースが尋ねる。
「いや、それは聞かなかった。多分だけど、700672号も知らないと思う」
 500000番台以前の情報はない、と言っていたくらいだ。
「それは自分で調べるしかないと思う」
「それもそうか。そうしたら、あのまま艦隊は進んでいたんだよな? どうなったんだい?」
「ああ、それもこれから説明しようと思っていたのさ」

 一息入れて、仁は語り始めた。
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