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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

32 新婚旅行篇

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32-22 バッタ

虫注意、です
『コンロン3』は時速1000キロを出していた。亜音速といってもいい速度である。
 乗っているのが『仁ファミリー』のメンバーだけなので、遠慮しなくていいこと、それに一刻も早く素材を手に入れたいこと、そして時差があるからだ。
 最後に、空が苦手なグースのために飛んでいる時間を短くする意味もあるのだが、それは黙っている仁であった。

 蓬莱島とフソーとの時差は7時間くらい。蓬莱島を午前11時頃に出た時、フソーは午前4時。
 距離にして2300キロほどあるので、フソーに着けば現地時間で午前6時半くらいになるだろう。

「も、もうそろそろ着くのか?」
「雲があっという間に後ろへ飛んでいくよ!」
 まだ慣れないグースと対照的にサキは興奮気味だ。
 そして何ごともなく……というより起こりようもなく、『コンロン3』はフソー上空に差し掛かった。
 速度は時速100キロ程度まで落としている。高度も50メートル程度まで下げた。
 そのくらいになるとグースもようやく慣れてきたようだ。
「どこに降りるのがいいかな?」
 仁の質問にグースは、少し考えてから答える。
「うーん……やっぱり一番信頼の置ける場所がいいだろう。つまり、『ナデ』の町だな」
「確か、町長はファドンさんだっけ」
 グースに懐いているナリーという子がいた、ということも仁は思い出した。
「そうだ。しばらく帰っていないから、挨拶するのも悪くないな」
「あれは4月……だっけ。賢者の手掛かりを探して訪れたんだよねえ。その時にグースに出会ったんだ」
「ああ。腹が減って動けなくなっていたっけな」
「うっ……もう勘弁してくれよ」
 ばつの悪そうな顔をしたグースに、仁とサキは笑った。
「ジン兄、様子がおかしい!」
 そんな時、窓の外を見ていたエルザが、珍しく大きな声を上げた。
「どうし……!?」
 仁も顔を上げ、窓を見て絶句する。
「な、なんだ、これは!?」
『コンロン3』の窓という窓に、おびただしい虫がへばりついていたのである。
「……バッタ?」
 バッタによく似た、10センチほどの虫である。それが、前が見えないほどびっしりと取り付いている。
『コンロン3』に振動が走った。
「どうした?」
 操縦担当のエドガーに仁が尋ねると、
「推進器が詰まりました。『力場発生器フォースジェネレーター』に切り替えます」
 との答えが返ってくる。
「固体は弾く結界があるはずなのに噴射式推進器(ジェットスラスター)が詰まったのか?」
 仁は驚いた。つまりは、結界を突破するだけの『力』がある、もしくは結界を無効化するほどの『魔力』を帯びているということだ。
「グース、この虫は何だ!?」
「暴食バッタだ……」
 青ざめた顔でグースが答えた。
「作物をみんな食ってしまう害虫……いや、災害虫だ!」

 仁は、現代地球で言う『蝗害こうがい』のようなものかと思った。
 トビバッタ、ワタリバッタなどと言われ、稲などを害する記録が残っている。

「礼子、数匹を捕まえて蓬莱島に送れないか?」
「やってみます」
 ほんの少し窓を開け、手づかみにする礼子。
 暴食バッタは礼子の手を齧ろうとその鋭い歯を立てるが、生物界の頂点に立つ『古代(エンシェント)(ドラゴン)』の革を食い破ることはかなわない。
「『衝撃(ショック)』」
 気絶させて動きを止める礼子。
 何度か繰り返して、10匹ほどの暴食バッタが手に入った。
「よし、それを蓬莱島で急ぎ調査しよう」
 仁は暴食バッタを掴んだ礼子と共に、『コンロン3』備え付けの転移門(ワープゲート)で研究所へ移動しようとした。
「ジン兄、私も行く」
「ボクも」
「俺もだ」
 エルザ、サキ、グースも行くと言う。
 そこでエドガーに言って『コンロン3』を上空1万メートルまで上昇、待機させることにした。
 その高度まではさしもの『暴食バッタ』も付いて来られない、
 地上の様子は『ウォッチャー』で観察させる。
「よし、行こう」
 指示を出し終えた仁たちは蓬莱島へと転移した。

*   *   *

「……この暴食バッタはやはり魔力を帯びているな」
 研究所で調査を開始した仁たち。
「ふうむ。異常な繁殖力はそのせいか?」
「それはわからないが、この顎の強さはとんでもないぞ。ギガアント並だ」
「小さくても魔物か……」
 仁の背中に冷たいものが流れた。

「老君、暴食バッタはどうしている?」
『はい、御主人様(マイロード)。『ウォッチャー』からの観察によりますと、群れは1つではないようです。この群れと同じくらい大きな群れがあと3つ。小さな群れが2つ。計6つが、フソーの北西から南東へと移動しております』
 普通の魔物は自由魔力素(エーテル)かてにしているが、この暴食バッタは雑食らしい。
 それこそ、目にしたものを手当たり次第に食べていくようだ。
 また、バッタの常として『不完全変態』をする。
 つまり、卵からかえったばかりの幼虫も、小さいだけで親と同じような姿をしており、あらゆるものを食べ尽くす習性があるのだ。
「おそらく、食べた量に応じて成熟し、繁殖するんだろう」
 グースが暗い顔で言った。
「発生の切っ掛けも気になるが、今は対策だな」
 フソー北部では既に作物の取り入れがほとんど終わっていたので、そちらの被害は少なかったようだが、南東へ向かうにつれ、収穫はこれからの地域になるだろう。
「できるだけ早く食い止めないと、ミツホやショウロ皇国に到達するぞ」
 昨年はカビ騒動、今年は暴食バッタの食害。
 どうにかして食い止めないと、餓死者が出てもおかしくない事態になりかねない。
「だが、どうすれば……」
 1匹1匹は大したことはない。問題は数である。
 数百万、あるいは数千万匹になるかもしれないというその数が厄介なのだ。
 いかに礼子とはいえ、同時に数箇所に存在するわけにはいかない。
 また、9割以上を殲滅しない限り、被害を食い止めることができない。

『今のところ、致命的な被害を被った地域はないようですが、それも時間の問題です』
 超高空から観察している『ウォッチャー』からの情報により、老君は秋の収穫前の畑がある地域に暴食バッタが到達するまであと1日、という結論を出した。
「1日、か……」
 時差を考慮しての猶予期間。
「その間に有効な対策を考えないといけないな」
 仁、エルザ、サキ、グースは、知恵を出し合い、考えるのであった。
 いつもお読みいただきありがとうございます。

 20160620 修正
(旧)この群れと同じくらい大きな群れが3つ。小さな群れが2つ。計6つが
(新)この群れと同じくらい大きな群れがあと3つ。小さな群れが2つ。計6つが

 20160621 修正
(誤)9割以上を殲滅しない限り、被害を食い止めるわけにはいかない。
(正)9割以上を殲滅しない限り、被害を食い止めることができない。
+注意+
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