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マギクラフト・マイスター 作者:秋ぎつね

32 新婚旅行篇

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32-12 9月12日旅行四日目 新たな対策

 まだ時刻は午後4時、外は明るいが、遊び疲れた仁たちは船に戻り、海水でべたついた身体をきれいにするべく、風呂に入っていた。
「あいたたたたた」
『江戸』の風呂に入った仁は、日焼けした肌の痛みに思わず呻く。
「あー……日焼け止め塗っていても、長い時間泳いでいれば落ちちゃうよなあ……」

「……痛い」
「ちょっとひりひりします……」
「あたしは平気だけどね」
 女性陣も、泳いだメンバーは日に焼けてしまっていた。
 平気な顔をしていたのは普段から日に焼いているマルシアくらいである。
「あたしも平気ー」
 屋外で遊ぶことの多いハンナも平気なようだった。
(……ジン兄に、相談してみよう……)
 ひりひりする首筋に治癒魔法を掛けつつ、そう決心するエルザであった。

*   *   *

「……という、わけ」
「うん、わかる。俺も日に焼けて痛い」
 と、仁は礼子をかえりみて、
「礼子、治癒魔法を頼む」
 と頼む。
「はい、お父さま。『癒し(フェルハイレ)』」
 内科・外科両用の初級治癒魔法だ。軽い擦り傷、火傷、悪心等を治すことができる。
 その治癒魔法を掛けた仁の肌から赤みが引いていく。
「楽になった、ありがとう」
 初級の治癒魔法なら自分でできるのだが、礼子にやってもらうことに意味がある、と考えた仁なのだ。
「いいえ、お役に立てて嬉しいです」
 満面の笑みをたたえる礼子であった。

「……で、だ。日焼け、というのは紫外線による火傷なわけだから……」
「紫外線を防ぐ結界?」
「そういうことになるな」
 仁はエルザと共に検討を始めた。
 他のメンバーは夕食の仕度を手伝ったり、まだ風呂から出て来なかったりしている。
「光を防ぐ結界か」
 宇宙船に、危険な電磁波をカットする結界を使用しているので、それを応用すればいい。
「ついでに赤外線もカットすれば、かなり暑さ対策になるだろう」
「……簡単だった」
「だな」
 あとはそのための『魔導回路(マギサーキット)』を『仲間の腕輪』に書き込めばいい。
「ああ、常時展開するなら、紫外線帯域だけでいいのか」
 その方が魔力素(マナ)の消費が少ないことに気がつく仁。
「宇宙に出たときは可視光のみ通す障壁(バリア)、地上では有害な紫外線に限定、でいいか」
 切り替えられるようにする。
 この結界は可視光に影響を与えないので、視界を妨げることはない。
 また、固体・液体・気体に影響を与えないので、行動を阻害することもない。
「これでならいいな。明日、実際に試してみればいい」
「ん」

「ただいまー」
「帰ったよ」
 そこへ、鉱物を探しに行っていたサキとグースも戻って来た。
「お帰り。一風呂浴びてくるといい」
「ああ、そうするよ」
 グースは頷きながら、仁の顔を見た。
「結構珍しい鉱物があった。風呂から上がったら報告するよ」
「ああ、楽しみにしてる」
「くふ、汗と潮風でべたべただ。早く洗い流したいよ」
 サキとグースは風呂場へと向かったのである。

*   *   *

 全員風呂から上がり、集合したのが午後6時。まだ空は明るいが、動き回って空腹なのでまずは夕食だ。
 今夜は和食中心の献立。
 白米のご飯またはお粥、豆腐と油揚げの味噌汁、焼き魚、おひたし、お新香、そして肉トポポ(肉じゃが)。
「うん、この肉トポポはおいしいよね!」
「サキ、他のおかずも食べなきゃ駄目だぞ」
「あ、ジンさん、このおひたし美味しいです」
「今夜のご飯は万人向けで少し軟らかめだな」
「冷めないうちに食べないと焼き魚は硬くなるよ」
 賑やかな夕餉である。食事は楽しく、が仁のモットーだからだ。
 羽目を外して騒ぐのはもっての他であるが、和やかな会話は歓迎である。
 貴族の子女としての教育を受けて育ったエルザも、最初のうちこそ戸惑っていたが、慣れた今では、笑顔で話しながら食事をすることができるようになっていた。
 もちろん、公式の場でのマナーも身に付いており、時と場合に応じて使い分けられる。

「……で、何を見つけたって?」
 難しい話、複雑な話は食後のティータイムに行うのが恒例だ。
 仁は、珍しい鉱物を見つけたというサキとグースに話を振った。
「よくぞ聞いてくれました」
 一言前置きし、グースが話し始めた。

「あまり大陸では見かけない鉱物が多かったな」
 グースは、護衛兼助手として付いてきてくれたランド401に、採集品を持って来てくれるよう頼んだ。
 それはすぐに運ばれてきて、テーブルの上に並べられる。
「まずはこれだ」
 ころんとした形状。両側が尖った六角柱結晶。
「鉱物としては石英、つまり水晶だけど、透明度、平滑度が高いし、両端が尖っているのは珍しい」
「へえ、こういう水晶もあるんだな」
 仁も知らなかったようだ。

 実際にそうした水晶は、地球では『ハーキマーダイヤモンド』と呼ばれ、アメリカのニューヨーク州ハーキマーで産出する。
 ダイヤモンドではないのだが、他の地で採れる水晶より透明感が高く、両端が尖っている形がなんとなくダイヤモンドの結晶である八面体に似ているがゆえの命名である。

「次はこれだ」
 それはピンク色の結晶だった。
「分析してもらったら、アルミニウムとリチウム、それに珪素と酸素からできていた」
「ん? リチウム? ピンク色?」
 仁には心当たりがあった。
「……クンツァイトか?」
「え? 仁は知っているのか?」
「ああ。俺の記憶が間違っていなければ」

 なぜ仁が知っているかというと、施設に置いてあった少女マンガの敵役に宝石名が付いた者がおり、それが切っ掛けで数種類の宝石について調べたことがあったからである。

「ふうん。クンツァイト、ね」
「正確にはリシア輝石、って言ったはずだ」
「え、リシア、ですか?」
 黙って聞いていたリシアが声を上げた。
「ああ。リチウムを含むから、だな。多分リシアの名前とはスペルが違うんじゃないかと思うけど」
「それでも、面白いです」
 リシアはピンク色をしたクンツァイトをじっと見つめていた。
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